表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたがすき、だったから……。  作者: 友坂 悠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/54

転移。

 そこは。

 大きな木々が聳え立つ、斜面の底、だった。


 からだ、痛い。


 あたしが出現した場所が、たぶんこの坂の上だったんだろう。

 そこから転げ落ちたのだ。


 あの時。

 もう。いいかな。

 もう、あたし、居なくなっちゃっても、いいかな……。


 心の中がぐちゃぐちゃで、悲しくて、嫌で、ダメ、で……。


 きっと全てが間違ってたんだ。

 あたしが生まれてきたことが。

 きっと、あたしさえ居なければ、お父様も、母さんも、兄様も、みんな幸せでいられたんだ。


 そんな気持ちが頭の中でぐるぐると回って、そして。


 心にぽっかりと穴が空いた。


 ああ、これが、ゲート。

 大聖女様がおっしゃってた、心の奥底のゲートなんだって、そう理解して。


 手を伸ばしてみた。ゲートの奥底に向けて心の手を伸ばして。

 そして、どこか懐かしさが残るそこ。どこだかわからなかったけど、懐かしい記憶の場所。

 そんな空間をぎゅっと握り締めたのだ。




 ぐるん。

 空間がひっくりかえる。

 あたしが、あたし自身の周囲の空間と、あたしがぎゅっと掴んだその場所が、ぐるんとひっくり返った。


「空間転移」


 これが大聖女様の空間転移だと、そう理解した時にはあたしは坂の上に投げ出されていた。


 月もない林の中。


 投げ出されたあたしは地面にぶつかりそのまま坂を転げ落ちた。


 “(バチ)”が当たったんだ。


 兄様を好きになったから。


 “(バチ)”が当たったんだ。


 あたしなんかが幸せになろうとしたから。


 “(バチ)”が当たったんだ。


 兄様から、侯爵家嫡子の地位を奪ってしまうところだった、から……。









 草の匂いに、血の匂いが混じっている。

 ほおに冷たいものが流れて。


 あたし、このまま死ぬのかな……。

 うっすら開けていた目を、そっと閉じる。



 このまま。

 儚くなってしまってもしょうがない。

 そう全てを諦めて意識を手放そうとした、時。



 ――ダメよ、マオ。




 ――寝ちゃ、ダメ、マオ。



 最初はうっすら。

 でも、だんだんとはっきり。


 声が、聞こえてきた。


 ……キュア?

 いつも寄り添ってくれていた、精霊キュア?


 ――起きて、マオ。願って、生きるって。私たち、マオが願わなきゃ、力を使えない。


 ――好きよ、マオ。だから、お願いだから、頼って。私たちを呼んで。マオ!!


 だって、あたし、ゲートだってないのに。


 ――開いてるわ。ゲート。ちゃんと開いてる。

 ――呼んで、キュアって、いつもみたいに。


 うっすらと目を開けると、そこにはたくさんのキュアが集まって。

 ふわふわと金色に光るキュア。

 みんな、優しく瞬いている。


「いいのかな、あたし、生きていても、いいのかな……」


 ――大好きよ。マオ。

 ――願って、マオ。


「ありがとう、キュア。あたし、生きたい。このまま死ぬのはやっぱり、いや。お願いキュア――」


 回復の、魔法。

 キュアの権能が発動したのが、わかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ