招待状。
王宮からの晩餐会の招待状が届いたと聞かされたのは、夕食の席だった。
「クリストファ殿下が帰国なさったそうなんだ」
「外国へ行ってらっしゃったのよね」
「ああ。帰国の報告だという話だけれど、高位貴族だけでなく、その子女にも招待が届いているようでね。うちにも、アンソニーはもちろん、マオ宛にも来ているよ」
「マオにも、ですか?」
「ああ、フローラ。先日国にもマオを正式に公爵家の娘として届けたからね。そのせいだろうけれど」
「そうですか。それでは準備をしなくては、ですね。マオにとっての社交界デビューになりますから」
「そうだね。通常は貴族院卒業パーティがデビューとなるものだけど、今回はどうも例外でね」
「例外、ですか?」
「クリストファ殿下との年齢の近い、貴族院在学中の者を招待しているようだね。これは殿下の将来を見越しての関係づくりもあるんだろう。殿下は今年貴族院を卒業したばかりだから、そんな殿下のための晩餐会なのかな」
「でしたら、アンソニーにもぜひ出席してもらいたいわね……。彼の様子はどうなので、すか?」
「ふむ。どうなんだろうね……。マオ、君も何も知らないのかい?」
兄様……。
ほんと、どうしちゃったっんだろう……。
「ええ、お父様……。あたしも心配で心配で……」
あたしのその言葉に、お父様はうむと頷き。
「わたしも彼の部屋を訪ね声をかけてはみたんだがね……。『今は何も話したくありません』と、拒否されてしまったよ……」
寂しそうなお顔でそうおっしゃった。
もともと、お父様は兄様に遠慮がちだった。
どうして? そうも思ってたけど、お父様とお父様のお兄様のお話を聞いて、納得はしたのだ。
もともと、お父様にとって、あたしはいらない子だった。
ああ、もちろん今は違うっていうのはわかってるし、お父様が兄様のためにご自分の子供を求めなかったっていうのにも納得はしてる。
あたしができちゃったのだって、本当に偶然たまたま。望んでできたわけじゃないっていうのも頭では納得してる。
望まれて生まれてきたのではなかった。
そう考えてしまうと落ち込むけど、その分、今の母さんもお父様もちゃんとあたしを愛してくれていることがわかるから。
だから、あたしは幸せなんだなぁって、そう思えるの。
だけど。
その分、兄様のことを思うと悲しくなる。
あたしにとって兄様は、完璧で、優しくて、時にはあたしのことからかったりもするけれど、その言葉のどれにもあたしのことを思ってくれているって感じられて。
ずーっと、大好きな兄様、だったから。
兄様がお父様のお子じゃないって、そんなの最初は微塵も疑ってなかった分、そうとわかった今は……。
兄様は、ずっと知ってたんだよね。自分がお父様の子供じゃないって。
兄様は本当のお父様のことも、ちゃんと知ってたんだよね……。
それって、どういう気持ちだったんだろう……。
いきなりあたしが現れて、兄様、本当はどう思っていらっしゃったんだろう……。
母さんのこと、兄様は知ってた?
まだ幼い頃とはいえ、全く知らなかったってことはなかっただろう。
だって、母さんはずっと書類上兄様にとっても義理の母だったんだもの。
同じお屋敷に本当のお母様がいらっしゃるとはいえ、それでも。
兄様……。




