幸せって。
「マオ、おきてる?」
兄様と入れ替わりでお部屋に入ってきた母さん。
「うん。母さん」
「ん、大丈夫そうね」
「ごめんね、心配かけたよね……」
母さん、ベッドに座ってるあたしのそばまできて隣に腰掛けて。
あたしの顔を両手で包み込む。
「熱も、ないわね。ほんと、だいじょぶそう」
「ありがとう母さん、ほんと、大丈夫よあたし」
「まあでも、明日はちゃんとお医者さん行きましょうね。ほら、わたしが入院してた病院」
「うん、看護師さんたちにも会えるし、あそこなら嬉しい」
そう。もう10年も毎日通っていたのだ。通わなくなってほんの数日だけれど、それでもなんだか懐かしい……。
「そうね。病院終わったらおばあちゃんのところに行きましょうか?」
「え!?」
「わたしの母さん。マオのおばあちゃんね。聞いたわよ。わたしが入院中に仲良くしてくれてたんだって?」
「だって、おばあさま、あんまりにも母さんそっくりなんだもの。親子だってすぐにわかったわ」
「ふふふ。おばあちゃんもね、マオがわたしにそっくりだって言ってたわよ。わたしの小さい頃そっくり、って」
おばさまに、会える。
そう思ったら、なんだかとても嬉しくて顔がほころぶ。
「もう、マオったら。じゃぁ今日はもう寝ましょうか。せっかくおばあちゃんに会いに行くのに、眠たくなっちゃったら嫌でしょう?」
「うん。でも、あたし、もう15歳なんだから。少しくらい夜更かししても大丈夫だけど」
「ふふ。生意気ね。でもわたしのほうがもう眠くてしょうがないわ。マオ、一緒に寝てくれる?」
「うん! 母さん!!」
ガウンを脱いでお布団に入ってきた母さん。
あたしをぎゅって抱きしめてくれる。
その温もりが、なんだかとても心地よくて……。
あたしはいつの間にか眠ってしまっていた。
母さんの匂い。母さんの温もり。
母さんのマナは、あたしのマナに溶ける。
きっとあたしと母さんって、根っこの部分で繋がってるんじゃないかなって、そんな風に感じたところで意識が途絶えたのだった。
その夜は、母さんとおばあちゃんと三人でお食事をしている夢を見た。
とても楽しそうにしているおばあちゃん。
おばあちゃんのことを優しい瞳で見つめる母さん。
あたしも。そんな二人と楽しく会話しながら、目の前のお皿をつつく。
幸せ。
幸せってこういう感じなのかな。
うん。きっとそう。
あたしはすごく、幸せだ。
ゆったりとした空気はバターの香りがして。
ほんの少しだけ、この幸せな時間が崩れてしまいそうになるのが、怖かった。




