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あなたがすき、だったから……。  作者: 友坂 悠


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記憶。

 心の奥底に、潜る、かぁ。

 セリア様の手のひらの温かさを感じながら、あたしは目をつむって自分の心と向き合ってみた。


 まず感じたのは体の表面に流れるマナ。

 さっき頑張って水晶に集めたマナは、いま体の表面をぐるぐるぐるぐる巡っている。

 あ、もしかしてこれって。

 ドッジボールの時の同級生たちはみんな自分の皮膚の表面にマナの皮みたいなのを纏っていた。

 魔法で自分が怪我しちゃわないように。自分で出した炎やヤイバが自分を傷つけちゃわないように、そんなマナのレイヤーで自身で守るんだって、そう言ってた。


 それって、いまのこのマナで、できる?


 試しに、あの時見えたマナの皮みたいなのをイメージしてみる。

 うん。

 自分の表皮のほんの少しだけ外に、マナでバリアみたいなのを作る事ができた。


 ああ、そっか。

 こういう事、かぁ。


 なんだか少しだけ嬉しくなって。

 みんなと同じことができるようになったってことが、すごく嬉しくて。


 つむっていた目を少しだけ開くと、目の前にセリア様のお顔がドアップで見えた。


「セリアさま!!」


 びっくりして思わずそう叫ぶと、セリア様ったらコロコロと笑って。


「もうマオったら、様はやめてって言ったでしょ? ふふふ、でも、今マオ自分の身体の表面にマナのレイヤーを貼ったわよね。それってどういうイメージだった?」


「ええと。目を瞑ってマナを感じてみたんです。そしたらさっきの体から出たマナが、まだあたしの体の表面をぐるぐる巡っているのがわかって。そのまま、以前の実技の授業でクラスメイトたちがこんなマナの皮を被っていたのを思い出して……。もしかしていまならあたしにもできるかもって……」


「そうよね。っていうかマオは他人のマナもちゃんと見えるものね」


「え?」


「残念ながら普通の子には見えないのよ。マナが顕現したとき以外はね」


 ああ。そうだった。

 ギアが見えるとか見えないとかそういう話だけじゃなくって、普通はその辺にあるマナでさえ、ちゃんと見える人っていないんだった。


 思い出した。

 幼い頃も、あたしは周りと違っていた。

 周りの子には見えないものがあたしには見えるからって、気味悪がられた事もあった。


 あ。


 おもい、だした……。


 公園の砂場で遊んでいる時、だった。

 あたし、無意識に砂場のおもちゃを取ろうとして、セリア様みたいな心の手を伸ばしてしまった事が、あった。

 ふっ、っとおもちゃを掴んで持ち上げたあたし。

 そんなことができてしまって。

 超能力だ。あたし、超能力使える。そう思ってなんだか誇らしくて。


 超能力、だなんて言葉、どこで知ったんだったのかさえ、もう覚えてない。

 でも、きっとおばあちゃんに読み聞かせてもらった絵本にあった、ような。


 え?


 何、この、記憶。


 わかんない。


 おばあちゃん。

 思い出すと、なんだかすごく懐かしくて。

 でも。

 あたし、おばあちゃんと暮らした事なんか、なかった筈なのに……。


「どうしたの? マオ」


 ハッと気がつくと、心配そうにこちらを見るセリア様のお顔……。


「あ、あたし……。なんだか、変なこと、思い出して……。あ、だからだ。あたし、普通になりたかった。気味悪がられたりするの、いや、で。だから、自分の心、閉ざした、の……」


 言葉にした瞬間、ずきんと頭が痛くなって。

 耳鳴りがして、地面が揺れる。


 あ、違う。

 あたしが揺れてるんだ。

 そう思ったところで頭の芯にさぁっと熱いものが流れていく感じがして。


「マオ!」


 セリア様がそう叫んで手を伸ばしてくれたところまで、は、かろうじてわかった。





 あたしの意識はそこで途切れた。


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