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あなたがすき、だったから……。  作者: 友坂 悠


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33/54

並木道。

 貴族院までの並木道を馬車が進んでいく。

 小等部に通ってる時は、ここを歩いて通ってたっけ。

 お父様は当時も馬車を使うようおっしゃってくれたけど、流石に申し訳なくて断っていた。

 兄様も、自分も通っているんだから一緒に馬車に乗ればいいよって言ってくださったけど、だってその頃のあたしが兄様と馬車に乗って学院に通ったりしてたら、周りから何を言われるかもわかんないからって思って。兄様には「あたし、歩いて通いたいんです」なんて言って誤魔化していた。

 幸いお屋敷のある貴族街から学院までの距離はそんなに遠くない。

 1kmあるかないか? くらい?

 ゆっくり歩いても15分もあれば着く。

 まあお貴族様は歩いたり走ったりあんまりしないから、同級生の子達もみんな馬車で送り迎えしてもらっているようだったけど。

 それに。

 歩いて通っていれば、学院からの帰りに母さんのいる病院に顔を出すのも簡単だった。

 遠回りにはなるけど、それでも毎日兄様までも母さんのところに連れて行くわけにもいかなかったし。

 あたしのわがままのために、馬車を寄り道させるのも申し訳なかったからね。


 並木道の両橋に植っているのは桜の樹だ。今は緑の葉が生い茂っているけど、春には桜が満開になって、ピンクの花吹雪のトンネルの中を歩くのはとても幻想的で好きだった。


「ねえ、マオ。少しは元気になったみたいだね。よかった」


「兄様。心配かけてごめんなさい。もう大丈夫です」


 馬車の中で隣に座った兄様が、あたしを見つめてそう言ってくれて。

 ああ。やっぱり兄様は優しいな……。

 さりげなくて、それでもってあたしのことを考えてくれて。

 やっぱり好きだな……。

 そう思うと、ぎゅっと兄様に抱きついてしまいたくなるけど、がまんした。

 あまりにも子供っぽいって思われそうで、臆病になる。


 兄様と別れて教室に向かう時も、「マオ、がんばれ」そう言って笑顔で手を振ってくれる。

 あたしも、「兄様、ありがとうございます」と笑みを見せて。

 少しだけ寂しさを感じながら自分の教室に向かった。



「おはようございます!」

 なるべく元気に挨拶して教室に入る。

 こちらをみる目はなんとなく冷ややかで、歓迎されていないのは感じる。

 この教室にいるクラスメイトは皆貴族の子女ばかりで平民はいないし、プライドの高い人が多いのかな?

 あたしはみんなと仲良くなりたいんだけどな。

 もしかして、結構難しい?


 でもほら、ここにいる子達に、悪意があるような悪い子はいないって感じられる。

 彼らのマナからは、嫌な感じはしないもの。


 だから。



 あたしが壁を作ったら、きっと向こうも壁を強化しちゃうから。

 うん。頑張って笑顔で過ごそう。そう決意した。


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