祈り。
カチャン。
祭壇の部屋の扉が開いた音が聞こえた。
「大聖女、さま!」
デルボア先生? え? 大聖女様って……。
女神像のオーラにあてられ、振り向いて背後を見ることもできなかったあたし。
でも、背中からの声で、大聖女様がこの部屋に現れたのは、分かった、けど。
「ふふ。ちょっとその子、マオさんに興味がありましてね。同席させてもらえないかと思って」
「大聖女、セリア・カッサンドラ、様でいらっしゃいますか?」
兄様の声。驚愕に声が震えてる?
「ええ。貴方はアンソニー・フリーデンさんですね。優秀な研究者でいらっしゃるって、伺っていますわ」
「恐縮、です。しかし大聖女様、どうしてこちらに?」
そう。今日は兄様が来ているだけでもびっくりなのに、どうして大聖女様まで?
「そうですわ。大聖女様、本日はこちらに来られる予定ではありませんでしたのに」
「うーん。本日の予定はもう終わったもの。だからこちらに伺っただけですのに。わたくしが来ては何か差し支えがありますでしょうか?」
「いえ、そういうわけでは……」
「ではいいではないですか。わたくし本当にその子に興味があるだけなのですもの。いいでしょう? マオさん?」
えええー?
もう、それでなくても女神像にあてられ精神的にかなり押しつぶされそうなのに、大聖女様までって、何かの間違い? じゃ、ないわよね……。
「わたしからは何も。そもそも今日これからどうすればいいのかさえ、分かっていませんのに」
とりあえずそう答える。
もういい。大聖女様が見てようがどうだろうが、かまわないもの。
「じゃぁ。マオさん、その水晶を触れる?」
「いえ、なんだかすごくプレッシャーがかかっていて、腕を伸ばすこともできなくて……」
これは、本当。
多分水晶に触れれば何かが起きるんだろうけど、そうしようと思っても、そうできないでいるのがものすごくもどかしい。
「そうね。そうだと思ったわ」
「大聖女、さま?」
「デルボア。あなた、儀式の正式な手順を存じてます? あれはただ触ればいいというものではないのですよ?」
「ああ、申し訳ございません……」
え? どういうこと?
「神はわがままですからね。儀式をするのであれば、まずは神への祈りを捧げマナを奉納するところから、でしょうか」
ああ。
この女神、いきなりやってきて水晶に触ろうとしたあたしに怒ってる、の?
もう、しょうがないなぁ。
だったら。
前に伸ばすことはできなかったけど、両手を合わせることはできた。
そしてそのまま神に祈る。
あの、病院で毎日母さんを治して欲しいて祈っていた時のように。
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