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あなたがすき、だったから……。  作者: 友坂 悠


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28/30

魔法の実技。

 午前中が座学。

 午後からは実技の時間だった。


 小等部の時は実技っていうと運動の時間だったんだけど、高等部はやっぱり魔法実技になるらしい。

 今日は体操着に着替えてグランドでの実技。体操着だなんて、運動の時間と勘違いしちゃいそうだけど、実際魔法を使うって行為はかなり危険も伴うので、動きやすい服装で、ってことなのかな?

 まず準備運動をしっかりしてからデルボア先生の号令の元、皆が集まって。


「さあ、みなさん前回までに基礎はできていると思いますから、今日は魔法を使ったゲームをしましょう」


「えー、ゲーム?」

「もっとちゃんとしたのがいいな」

「どうせ魔法を使うなら攻撃魔法の的当てとか~」


 そんな声が飛び交う。


「まずはいかに魔法を行使するといった行為に体を慣らすか、が重要なのですよ。ゲームはボールアタックです。ただし、ボールは素手ではなく魔力で支え、飛ばしてくださいね。キャッチするのも各々の加護の魔法で行うように。さあ。マオさん以外はいつものようにコートに分かれて」


 皆は慣れた感じでコートに分かれる。

 いつもやってる競技なの?

 そんな雰囲気で。


「今日はマオさんはそこで見学ね。放課後少しだけ時間を頂戴。あなたの加護を調べましょ?」


 そう言ってデルボア先生が真っ白のボールを取り出した。そこに何か魔法をまとわり付かせる?

 ふわんと光るボール。

 先生がコートの中央にそのボールを投げ込むと、そのままゲームが始まった。


 んん?

 これって、ドッジボール?

 幼い頃近所の子に混ぜてもらって遊んだような、そんな記憶をふんわりと思い出す……。


 魔法の加護ってほんと色々あるっぽい。

 アークの加護、は、炎の加護。

 バアルの加護、は、水の加護。

 アウラの加護、は、風の加護。

 オプスの加護、は、土の加護。

 他にももっと色々加護はあるけど、代表的なのはこの四つらしい。

 っていうか、世界にいっぱい溢れている精霊、ギアたちの中でも、アークバアルアウラオプスは多分一番多いから。

 彼らの様々な権能を操るのが魔法、マギアを行使する近道になるって、兄様にも聞いたっけ。


 両手に風を纏っている子が鋭くボールを飛ばす。

 土の加護の子は、自分の前に土の壁を作り、ボールに当たるのを防ぐ。

 炎の加護の子は、ちょっと危険。自分も燃えちゃったら怖いよね。人の体は弱いからなぁって思ってたら、このゲームをやってる同級生たちの体の表面に、マナの皮みたいなものが見えた。


 ああ、あれで怪我を防いでるのかなぁ。


 みんな、体の表面ぴったりにかぶるように、マナをバリアみたいに纏っている。


 炎の球が放たれて、それを弾いた土の壁に当たって……。

 ブン! と、その球が見学してたあたしに向かって飛んできて。


 危ない!

 って思った時、だった。


 目の前に水の滝が現れてて、ボールはその滝に刺さって止まった。


「あなた。そんなところでぼさっと見てると危ないわよ!」


 こちらに魔法を纏った手を伸ばす、エーデルローゼ嬢。


 その輝きは、バアルのもので……。



 一瞬こちらを見たけど、つん! って顔をそらす彼女。


 はわわ。彼女、あたしを助けてくれた?

 水の滝は一瞬で消え失せていたけど、その魔力の残滓は間違いなくエーデルローゼから放たれたものだった。




「ありがとう」


 コートの中の彼女に、お礼を言って。


「わたくしは別に貴女を助けようとしたわけじゃありませんわ。ノブレス・オブリージュ。わたくしたち高貴な貴族の血を引くものは、弱々しい平民をまもる義務があるのよ! だから魔法を使ってみせただけよ!」


 そんなふうに吐き捨てるように口にするエーデルローゼ。

 うん。そうね。そういうことにしておこう。

 ふふっと顔が緩む。

 強がってみせている彼女のことが、なんだかかわいくて。憎めない。



 ◇◇◇



 放課後。

 デルボア先生について歩いていく。


「マナさんは少し入学が遅くなってしまいましたからね。ほかの皆に追いつくためにも、早めに加護を調べておいた方が良さそうですものね」


 そうおっしゃるデルボア先生。

 その優しい声音からは、他意はないのだって気持ちが伝わってくる。

 あたしの考えすぎだったのかなぁ。

 なんだか色々調べ回されるんじゃないかって、ちょっと警戒してたけど。



 講堂の奥。

 美しいステンドグラスが壁を覆っている、そんなお部屋にたどり着いた。

 正面には女神像。

 手に、水晶を持って佇んでいるその姿は、慈愛に満ちたオーラさえ感じた。

 そんな聖なる姿、で。


 しばらくそんな女神像に魅入っていると、背後から「マオ」って声がした。


「兄様?」


 どうしてここに?


「入学セレモニーであれば父兄同席のもと加護を調べるんだけど、マオは一人で調べられることになるだろう? それではせっかくの感動の場面に立ち会えないと思って、学院にお願いしておいたんだよ。ぜひ僕も同席させて欲しいって」


 そう言い、ふんわりと微笑んでくれる兄様。


「そうですよね。せっかくの儀式ですもの、お兄様にも同席していただけて良かったわね。マオさん」


 デルボア先生も笑顔でそうおっしゃって。


 ふふ。

 なんだか一人で警戒して緊張してたのがバカみたい。


 そうよね。

 せっかくの儀式なんだもの。楽しまなきゃね。


 なんだか肩の力が抜けた感じ。


 うん。

 もうどんな結果でも、かまわないわ。


 どんな加護だったって、あたしはあたしだもの。



「では。マオさん、女神像の前までお願いしますね」


 そう言って背中を押すデルボア先生。


 女神のオーラはかなり強烈で、空気までもがねっとりと重く感じる。

 意を決してそばまで行くと、あたしの背の倍以上はある女神像が、こちらみた? ような気がした。





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