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吸血鬼の始祖は主席として学生を演じる  作者: 小鳥遊の園
第一章
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第十二話


 俺達は五人なので、二人と三人に分けて朝から夕方、夜から朝方までの調査に分かれることになった。


「ライル、分け方はどうしたら良いと思う?」

「そうだなぁ、俺とランフィアで二人、エミリア、ドラグ、ウルガで三人かな」

「ライルとドラグじゃないのね」

「男手は分かれた方が何かと良いかなって、重い荷物とか、高い所の調査とかあるだろうし」

「確かにそうね。皆も異論無いかしら?」

「ライル君が決めた事なら!」

「そうだな。俺も問題ない」

「…了解…」


 コイツらの俺に対する信頼がちょっと厚すぎる気もするが、悪くない。

 朝か夜かは、確実に夜の方が俺は動けるから夜に回った。もうすぐ夕方だから、取り急ぎの調査は三人に任せて俺達は夕食作りだな。


「夜営ってどんな料理が良いのかしら。ある程度なら自由に作れるくらいの食材はあるけど」

「夜営料理はシンプルが一番だよ。片手で食べられるとか、スープみたいに早く食べられるとか。どうしても安全は保証できない場所だからね、いつでも動ける事を想定した料理にしないと」

「そうなのね。じゃあライル、今回はお手本として任せて良いかしら?私は皆の寝る場所を作っておくから」

「分かった」


 さて、何を作ろうかな。パンは朝に食べるだろうし、米にしようか。古代の、俺が生まれる更に昔にあった和国の米とは違ってパラパラしたご飯だからな、古代伝統料理の「おにぎり」には出来ない。


 器に盛って上から味付けする感じで良いか。塩を振りかけて香辛料もいくつか。

 もう一品はあっさりとした魚の出汁で作るスープだ。具材は野菜が中心で、白身魚を粗く切り分けたものを入れる。

 炭水化物と野菜、魚は摂取出来たな。あとのビタミンとかは果物からとるか。

 柑橘系のレーンの実を細かく砕いた後、牛乳、砂糖を加えて少し火にかける。この時熱が加わると凝固する成分の粉を入れて溶かし、魔法で冷ます。これで牛乳ゼリーの完成だ。


「ライル、こっちは終わったけど料理終わり…そう?」

「こっちも丁度終わったよ。お疲れ様」

「あ、うん…これ、普通に料理じゃない?夜営感が無い気がするんだけど」

「食べれば分かるよ。そろそろ三人が戻ってくる頃だから」


 洞窟の外から、匂いに釣られた食いしん坊狼が走ってくる気配がするからな。


「ただいま!凄く良い匂いがする!」

「おかえり皆、丁度出来たところだから、手を洗って」

「おぉ、誰かの手作り料理は久しぶりだな。楽しみだ」

「…【ウォーター】…」


 エミリアの出した水で全員が手を洗った後、俺はそれぞれに器とスプーンを二つ渡す。


「スープとゼリーのスプーンは分かるけど、このお米の分は?」

「先ずはスープで体を温めながら胃を慣らして、少し残しておいたスープをご飯に掛けてごらん」

「え⁉︎こ、これにスープを掛けるの?」


 古代人達はよくやっていたらしいが、現代ではそんな食文化は中々見ないからな、躊躇いもあるだろう。ここは俺が率先して食べるか。

 スープは味付けが出汁だけだから口当たりが凄く柔らかい。野菜と魚本来の味が分かるくらいだ。

 そしてスープの汁と、好みで残しておいた魚や野菜をまとめてご飯に掛ける。こうする事でご飯に振りかけておいた塩や香辛料が溶けて味に変化がおきる。

 塩気の中に少しピリッとした香辛料。そして味に変化が起きた事でさっきとはまた違う野菜や魚。

 ご飯も元がパラパラだからベチャっとせずサラサラと喉を通り過ぎる。これは自分で作っておいてなんだが、うまーー


「美味しい!」


 ん?


「なんだ、もう食べてたんだ」

「食べ方に驚いただけで、ライルの作る料理が美味しいのは知ってるからよ」

「それはどうも。満足かい?」

「勿論!程よい味付けと変化のある面白さが堪らないわ」

「うん!これは本当に美味しいよ!」

「す、凄いな…同じ男として、何だか情けない」

「…女は…尚更…」

「皆褒めすぎだよ」


 ご飯を食べ終えたらデザートだ。レーンの実は柑橘系の中でも酸っぱい方だが、牛乳のまろやかさとゼリーの食感で良いアクセントになっている。


「まさか夜営でこんなデザートまで食べられるなんて」

「三日間全部ライル君に作って欲しいくらいだよ!」

「俺とランフィアは明日から昼は寝るんだから、皆も頑張って作らないと駄目だよ」

「…頑張る…」


 食後、夜になるには少し時間があったので、ランフィアには仮眠を取らせた。

 初日は朝から起きていたからな。これから朝まで起き続けるのは辛いだろう。


「ライルは寝なくて平気なのか?」

「俺は夜には強いからね」

「でも、朝からずっと起きてるのに、明日の朝まで起きてられるの?」

「大丈夫だよ。二、三日寝ないなんて事もあったから」


 そんな話をしていれば、外は暗くなってくる。そろそろランフィアを起こして出るとするか。


「ランフィア、起きな。交代の時間だよ」

「んぅ…ライル、起こして」

「今は訓練中じゃないんだけど、仕方ない」


 寝惚けて甘えん坊モードになってやがる。

 目が覚めた時に本人が恥ずかしいだろうが、元主席として近寄り難い雰囲気を持たれていただろうから、これくらい抜けてる所を見られるのも良いか。

 まぁ、このメンバーには不要だったがな。

 お姫様抱っこして覚醒するまで待っていると、当然ながら視線を感じる。


「二人は、やはりそういう仲なのか?」

「いや、別にそんなんじゃ無いよ。というか、やはりって?」

「いや、学校では常に一緒にいるし、部屋も隣だろう?学年では結構話題になってるぞ」

「そうなんだ。まぁ確かに俺が仲良いのってこのメンバーだけだからね。そんな噂も広がって当然か」

「ライル君はあまり他の人と関わろうとしないよね。こんなに人当たり良さそうな感じなのに」

「色々経験してくると、外見や地位だけに寄ってくる人が分かるからさ。そういう人の相手は無意味って思っちゃって」


 お、ランフィアがモゾモゾ動きだしたな。

 俺と目が合ってキョトンとした後、自分の格好を見て固まり、目線だけドラグ達に向けて真っ赤になる。


「な、な…何してんのよ!」

「その言い方は心外だな。ランフィアが起こしてって言ったんじゃないか」

「もしそうだったとしても、お姫様抱っこで起きるわけないじゃない!」


 まぁ、半分以上は面白そうだからやったんだがな。

 この様子じゃ俺達の会話は聞いてないか。聞いてたら変に意識しそうな奴だから良かった。


「じゃあ俺達は調査に行ってくるよ。幻影で隠してあるけど、一応警戒はしておいて。あと、カンテラを常に使うようにね」

「うん!何か近付いたら僕が気付くから大丈夫だよ!」


 ウルガなら100m前後の匂いで気付ける。洞窟の外まで余裕で索敵範囲だ。寝ていても外敵の接近で起きられる狼ならば安心だな。


 ランフィアと洞窟の外に出るが、やはり昼間とは雰囲気が違う。昼は開いていなかった花が開花し、夜行性の動物が木の上にいる。


「夜は実質二日しか調査出来ないし、半分ずつやらないといけないわね」

「まずは洞窟のある王都側半分をやろうか。ランフィアは魔力感知も出来る様になって来たし、思ってる以上に楽なはずだよ」

「魔草や動物の魔力も感知出来るの?」

「この世界は全ての生き物が微量でも魔力を持ってるから、感知訓練と思ってやってみて」


 微細な魔力も感じ取れるようになれば、あまり意識しなくても魔法くらいなら感知出来るようになる。

 俺がさっきやった魔法の中を動き回るのもそれが必須条件だから覚えて損はない。


「あ、なんか少しだけ感じ取れるかも」

「じゃあこの近くはランフィアに任せるよ。俺はもう少し奥を調査してくる。何かあったら洞窟に逃げ込んで」

「分かったわ」


 さて、生態マップと見比べながら調べるとするか。

 …ここらの魔草、夜行性動物は数が少し減ってるみたいだ。


 レッドウルフは夜にも行動するが、どちらかといえば昼の方が活発だ。だから影響が大きいとしたら昼の生態かもしれないな。

 かと言って夜だって全く影響が無いわけではない。魔草の数が減っていたり、動物の行動が少し怯えがちだったりしている。

 レッドウルフの存在は夜にも感じられていただろうからだな。


「ライル、そっちはどう?」

「やっぱり少し数が減ってるね。でも種類が変わる程の変化は無いみたいだ。大方、レッドウルフに怯えて遠く離れた場所に巣を作り直したって所かな」

「こっちもそんな感じだったわ。あとは入り口近くも戻って調査しないと」

「…ランフィア、ちょっと着いてきて」

「え?どこに行くの?」


 敢えて答えずに歩いていく。さっきの戦闘中、魔力感知の範囲を広げていたから気付いたんだが、確かこの方向に…

 5分程歩いた先には淡い水色の綺麗な花が現れた。


「…綺麗」

「魔鏡花の群生地だね」

「こんなのよく見つけたわね」

「さっきの戦闘中に魔力感知に引っ掛かったんだ」

「こんな方まで感知範囲とか、相変わらず規格外ね…それで、魔鏡花ってなんなの?」

「じゃあ真ん中まで行ってみようか」


 魔鏡花の群生地の真ん中まで進み、魔力を練る。

 この花は近くにある魔力を感じ取ると、同じ質、色の魔力を発する特徴があり、辺りは小さな魔力光が蛍のように舞う幻想的な風景になるんだ。

 流石に【オリジンブラッド】の色は映えないから、通常の光属性…いや、水も混ぜるか。

 水と光の魔力を混ぜ合わせ、魔鏡花全てが感知出来るように霧散させた。

 すると、全ての花が水色に光り小さな魔力の光をフワッと空中に漂わせる。


「………」

「幻想的でしょ」

「…うん…言葉を失うわ」


 本当にな。

 水色の光に囲まれて佇むランフィアの姿は、まるで昔に戻ったかのような錯覚を起こさせる。

 アイツも、こういう景色が好きだったな。


「ねぇ、ライル。何でこれを見せてくれたの?」

「ランフィアは前に、こういうロマンチックなのが好きって言ってたから」

「…血染めの月光花ね。でもこの景色は、もっと素敵」

「悲しい話も無いから、素直に楽しめるからかな」

「ありがとうライル。貴方はいつも私に素敵なものをくれるわ」

「そんなことないよ。俺だっていつも色んなものを貰ってる」


 過去を思い出させてくれたり、昔の俺達を肯定してくれたりな。


「…あのねライル、私…まだ自分の気持ちが分からないの…貴方の事は本当に尊敬してるし、素敵だなって思ってる。でも、自分の中でそれがどういう気持ちなのか整理出来なくて…貴方の本当の姿を、本当のライルを知ったら、分かる気がするから、サバイバル演習で絶対に生き残ってみせるわ」


「…それでも今そう伝えてくれたのは、ランフィアなりの誠意なのかな。だったら俺も応えなくちゃね…本当の俺を今全部見せる事は出来ないけど、姿形は変わらないよ。ただ雰囲気も、言葉遣いも、感じさせる圧力も、今とは大分違うんだ。それを見た上で、またランフィアの気持ちを聞かせてよ」


「うん、約束する。だから私が本当の貴方を見られるように、半年間鍛えてね」

「その返しは予想外だったな。でも良いよ。他の皆も上位に入れるように、俺が徹底的に鍛えてあげる」

「頼りにしてるわ」


 話が終わるのを見計らっていたかのように、魔鏡花の光が消えていく。

 丁度これから深夜の生態に変わる頃だな。


「調査を再開しないとね」

「それじゃあまた二手に分かれようか」


 ランフィアと再び別行動を取り、森の入り口付近を調査していく。入り口はレッドウルフの活動範囲外だったからか、全く変化は無かった。

 恐らくレッドウルフが入り込んだのは森の奥からだな。明日の調査ではより顕著に生態の変化が出てくるだろう。


 ランフィアと合流して洞窟に戻り、三人の為に朝食を作り置きしておく。今度はランフィアがメインで作った為、食べ歩きできるようにパンと簡単なおかずを紙に包んだものだ。

 寝る準備をしていると、朝組の三人が起きて諸々の報告をした後、三人が朝食を片手に洞窟を出て行く。


「俺達も寝ようか」

「うん。ねぇライル、隣で寝ても良い?」

「訓練中じゃないのに随分甘えん坊が出るね」

「ち、茶化さないで…これだって、貴方が訓練用に受けた依頼じゃない」

「そうだったね。良いよ、おいで」

「ありがとう。じゃあライル、おやすみなさい」

「おやすみランフィア」


 …もしかして、ドラグとの会話を聞いていたのか?

 洞窟を出てからのランフィアはいつもと違うというか、何かに背中を後押しされたかのように積極的だったが。

 いや、会話中のランフィアの気配は間違いなく寝惚けていたはずだ。

 あの幻想的な風景がそういう雰囲気にさせたのかもな。いずれにせよ、俺も自分と向き合って真剣に考えなきゃならねぇな。

 ランフィアの事、アイツの事、それを混ぜるのは双方に失礼だ。

 ランフィアはランフィアとして、俺に伝えてくれたんだから。俺がそれをアイツと重ねて答えを出すのは最低だからな。


 まぁ、まずは依頼を達成して、半年後に向けてこいつらのレベルを上げる訓練を考えることが先決か。






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