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吸血鬼の始祖は主席として学生を演じる  作者: 小鳥遊の園
第一章
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第十話


 今日から二日は学校も休み。

 五日間学校で二日休みの繰り返しだ。

 だが嬉しい誤算で、メンバー全員が長く訓練出来る休日にもお願いしたいと言ってきた。


「皆やる気があるおかげで予定より四日も長く訓練出来るようになったし、今日は合同訓練をしていくよ」

「合同訓練って、全員で何かするのよね?やってる内容が違いすぎないかしら?」

「そうだね。だから今からやるのは、『自分がやってる訓練内容を意識しながら、パーティとしての動きを掴む』ことだ」

「そっか。皆での動きに慣れないと意味ないもんね」

「ならば実戦を想定した役割分担などもすべきだな」

「……決めた?…」

「うん、もうパーティ内でのポジションは決めてあるよ」


 それぞれの成長と方向性からそこしか選択肢が無いとも言えるがな。


「まず前衛が俺とウルガ、中衛がランフィア、後衛がエミリアとドラグだ」

「ライルも前衛なの?魔法が得意なイメージだけど」

「俺は正直何処でも良いから、バランス見て前衛かなって」

「ライル君と前衛!一緒に頑張ろうね!」

「俺が後衛でランフィアが中衛で良いのか?」

「竜人は確かに物理攻撃も出来るけど、今回の訓練内容を考えるとこれで良いんだよ」

「……実践…」

「そうだね。まずはとにかくやってみよう」


 それぞれが自分のポジションの位置に立ったところで、俺が四人と向き合うように少し離れて立つ。


「何か嫌な予感がするんだけど、ライルは何でそっちにいるの?」

「勿論、皆の練習相手になる為だよ」

「え!ライル君一緒に戦ってくれないの⁉︎」

「俺は皆の動きを見てそれに合わせられるから、今は俺抜きでも大丈夫」

「サラッと言ってくれるわね」


 殺気を出すとランフィア以外は動かなくなるから、軽く威圧する。


「さあ、何処からでもかかっておいで」

「…【水竜の槍】…」

「え⁉︎エミリアが速攻⁉︎」


 流石は躊躇いを無くし続けたエミリア。前衛が突っ走るより後衛が先手を打つ方が動きが取りやすいからな。

 魔法をギリギリで躱して、その隙に接近していたウルガの拳を受け止める。


「うん、相手の避ける方向を予測した良い動きだね」

「【エアカッター】」

「【メテオフレイム】!」


 ドラグは翼に魔法を構築して時間差を作るつもりか。

 先に飛んできた上級魔法を、代表戦と同じように水の盾で防いで霧を発生させる。

 さて、この悪条件の中でどう動くかな。


「皆慌てないで、ライルの魔力反応は動いて無いわ。ドラグ、【エアカッター】を飛ばして」

「心得た!」


 自分の魔力をコントロールする事で、相手の体内魔力で位置を特定出来るようになったか。

 ドラグが5秒維持してた魔法で霧も吹き飛ばしながら攻撃、上出来だな。


「皆自分の特訓の成果が出てきてるね。じゃあ、格上との戦いも体験しておこうか」


 ビビるけど動きは鈍らせない程度の僅かな殺気を浴びせて、自分の翼も出す。


「何あれ⁉︎ライルって亜人種だったの⁉︎」

「いや、あれは魔法で作った翼だと前に言っていた。恐らく魔物との実戦に似せたのだろう」

「そういう事。さあ、ここからは俺も攻撃するから耐えてみせてね」


【オリジンブラッド】:模倣・闇属性・初級魔法


「【ダークレイ】」


 両翼に魔法を溜めてウルガに接近する。

 俺の拳を避けようとしたウルガを体勢を変えて蹴り飛ばし、同時にエミリアとドラグに向けて【ダークレイ】を発射。

 間に割り込んだランフィアが防御魔法を展開する。


【オリジンブラッド】:模倣・光属性・中級魔法


「【光学迷彩】」


 透明になり俺を見失っている内に後衛の後ろに回り込む。このまま気付かないと呆気なく終わるぞ?


「エミリアちゃん!ドラグ君!後ろ!」

「…⁉︎…」

「なに⁉︎」

「良いよウルガ。よく俺の位置が分かったね」

「えへへ、ライル君の匂いはすぐ分かるよ!」


 流石、強い奴ほど楽しそうな匂いで嗅ぎ分ける犬系獣人だな。

 素早く前衛後衛入れ替わって元の位置関係に。


「さて、じゃあ小細工無しに正面から潰しに来られたらどうする?」


【オリジンブラッド】:模倣・複合属性・上級魔法


「【ブラストメテオ】」

 

 メテオフレイムに風が合わさり、より広範囲にダメージを与える複合魔法へと変化する。


「エミリア!ドラグ!水の防御魔法!」


 素早く後衛に指示を出し、自分は土属性の壁を作り出す。

 水によって威力の低下した魔法は、土の壁によって完全に止められた。

 うまく防いだが、そこから攻撃に転化出来ればより良かったな。


「……っ…」

「ん?おっと」


 僅かな気配を感じた方を見れば、ウルガが俺の死角から攻撃してきていた。

 あの壁で俺から見えなくなった瞬間に動いていたか、パーティの動きが分かってきたじゃないか。


「防いだとは言え、俺に攻撃を当てたことは上出来だね」

「皆ライルのおかげで強くなってるって事ね。それにしても、ウルガの動きが速くて見えなかったわ」

「毎日ライル君と鬼ごっこしてるから!」

「…私の訓練と違って楽しそうね」


 そう拗ねるな。最近は目で追うのがやっとの俺から割りと強めに殴られる、実は一番ダメージ受ける訓練してるんだから。


「ライル君、今のはどのくらいの強さだったの?」

「そうだねぇ、中級魔物ってところかな」

「え」

「えぇ⁉︎」

「…え…」

「…なるほど」


「どうしたの?もっとレベル低いと思ってた?」

「逆よ!上級魔物くらいかと思ったわ」

「ハハハ、上級魔物が攻撃の合間や背後を取った時に態々待ってくれるわけないじゃないか」

「…そう言われれば、確かにそうね」


 それに、上級魔物なら開戦一発目でまず上級魔法か、一撃で死ぬような攻撃をしてくる。

 あんな小手調べのような戦い方はしない。


「特訓始めてまだ6日目だから、あと半分以上残ってるしまだまだ強くなるよ」

「じゃあ、学校のある日は個人練で、休みは合同にしない?」

「そうだね、それが良いと思う」


 全員真面目なおかげで、こちらとしても教え甲斐がある。

 生徒の成長を見ているこの感覚、たった40年前まで味わっていたのに懐かしく感じるな。


 夕方までパーティとしての動きを特訓し、次の日も同じ事をしていくが、徐々に難易度を上げていく。

 中級や上級魔物と言っても、細かく分ければ中級下位とか中級上位とかのクラスに分けられてるからな。

 最初は中級下位のレベルで戦っていたが、今では中級中位が互角、調子が良いと中級上位で何とかいけるレベルまで上がってきた。


 今回は体験だが、今後も冒険者をやっていくなら冒険者ランクは魔物のクラスと紐付けされてるから、依頼を受ける時の目安になる。

 ランクは基本上からABCDEときて、魔物との比較は、上級上位・中位がA、上級下位・中級上位がBと二つずつ下がっていき、下級下位のみEランクとなっている。


 つまり中級中位と互角なら、コイツらの冒険者ランクはC相当だと言える。

 経験は積まれてきているがまだ油断ならない実力ってところだな。

 因みに、魔物の最上位は上級上位ではなく、何十年何百年に一度現れる災害級と呼ばれる奴等だ。

 そして冒険者にも、唯一そいつらに対抗出来る力を持つSランクが存在している。

 勇者とか賢者、剣聖なんて呼ばれるような奴だ。

 

 俺か?俺は災害級Sランクなんて呼ばれてるよ。元は人間の敵って認識されてたから災害級と呼ばれ、一緒に戦うようになってSランク認定された。


 まぁ俺の話はどうでもいいか。

 今は少しでもこいつらの実力を上げねぇとな。


 ・

 ・

 ・


 一週間後。

 今日から冒険者業の体験を五日間やっていくわけだが、その説明の為にグラウンドへ学年全員集合している。

 既にパーティで固まって集まり、お互いのコンディションも確認済みだ。

 暫くすると校長が現れて拡声魔法のマイクを手に取る。


《おはよう。本日より一週間、冒険者業の体験をしてもらうが、二つ注意してもらう事がある。

 一つ目、絶対に無理をしないこと。皆はまだ冒険者では無いから、本業の人達のように『命を賭して』なんてことは絶対にあってはならない。

 二つ目、一つ目と似ているが、自分に合った依頼を受けること。今回は冒険者ギルドの協力により、皆に合った依頼を用意してもらっているが、それでも難易度は違う。依頼失敗は本来ならば死、もしくは財産を失う事を意味する。そして仲間や他の人に危険を及ぼす。自分の実力を正しく見極めること。

 以上を守り、今回の冒険者体験を有意義なものにしてほしい》


 流石に闘技大会と違って真面目だな。俺を気にして辿々しくなることもない。

 

《さて、何か質問のある生徒はいるかな?》


 よし、嫌がらせと他の生徒達への配慮を兼ねて俺が質問してやろう。


「校長先生、一つ良いですか?」


《っ⁉︎ラ、ライル君か。主席の君が何を聞きたいのかな?》


「依頼というのは全て日帰りで出来るものですか?生徒の人数を考えると夜営を挟む依頼も無ければ足りないかと思いますが」


《そ、その通りだ。この後ギルドで依頼を受けてもらうが、数日掛けて行う依頼を選んだパーティには、ギルドから夜営の仕方を教えてもらう予定になっている》


「そうでしたか、ありがとうございます」


《ヒッ…い、いや、依頼の内容にまで視点を向けた良い質問だ。他にはいないかね?…よし、ではこれより冒険者体験を開始する。リーダーの名前を呼ばれたパーティからギルドへと向かうように》


 聞いてる感じリーダーの学年順位が低い方から呼ばれているな。上位程色んな依頼に対応出来ると考えての配慮だろう。


「で、いつの間にか私の名前でリーダー登録されてたわけだけど、何故かしらね」

「ランフィアは合同訓練中も指示を出す事が多かったし、その方が良い練習になるからね」

「…分かったわ。その代わり、私の指示が間違ってて危なかったらすぐに言ってよ?」

「了解。そこで『指示には従いなさいよ』って言わないあたり、流石ランフィアだね」

「私よりライルの方がずっと向いてる事くらい分かってるからよ。そこで張り合うほど自惚れちゃいないわ」


 ほんと、俺のパーティは全員素直で真面目で、非常に育て甲斐があるなぁ。

 この授業が終わって仮にパーティを組む授業がもう無くても、今後も本人が望めば訓練していこう。

 

 そして行く行くは俺が認めるまでの実力者に育てて、俺の家で働いてもらうのも有りか。

 磨けば磨くだけ輝く原石ってのは、何歳になっても昂らせてくれるなぁ。



「「「「っ⁉︎」」」」


「ん?どうしたの皆、一斉にこっち見て」

「い、今一瞬だけ、ライルから強い気配を感じたんだけど」

「俺もだ。まるで皿に盛られて舌舐めずりされる食材になった気分だった」

「…悦楽…」

「う、うん。なんか…掌の上で楽しそうに値踏みされてる感じ」


 …やっちまった。

 ついこいつらの将来が楽しみで気配が漏れちまった。

 一瞬だったから始祖だって事はバレなかったかもしれねぇが、怪しまれるだろうな。


「ねぇ、ライル。サフィラ先輩との戦いの後、貴方の事は聞かないって言ったけど…いつかは、教えてくれる?」

「…まぁ、これだけの気配漏らして『ただの学生です』は無理があるよね。じゃあ二年生の年間スケジュールによると、半年後に個人でのサバイバル演習があるから、そこで皆が上位五人に入れたら教えてあげるよ」

「サバイバル演習か。確か生き残り式で、戦闘不能になると教師に連れていかれて脱落していくんだったな」

「…全員で…上位五人」

「ライル君のおかげで今実力はかなりついてきたと思うけど、サバイバルは力だけじゃ無いから、ちょっと大変かも」


 展開によっては()()()残っているかすら怪しいがな。

 ()()()大規模な魔法でも使えば一気に減る可能性だってある。その中で上位五人だ。中々に難しいだろう。

 意地悪をするつもりは無いが、これくらいクリアしてくれねぇと教えられねぇな。


「さぁ、そろそろ俺達も呼ばれるよ。どんな依頼が残っているか分からないけど、やる事は同じだから緊張せずにね」


 ランフィアの名前が呼ばれ、最後にグラウンドを出た。

 ギルドへ向かう途中で既に依頼を受けた何組かとすれ違う。

 装備がそのまま、荷物も少ないとなると日帰り組か。夜営組は今頃道具屋かな。

 俺達もどうせ残ってるのは夜営を挟む依頼だろうから、穴場の道具屋を知っているのは良いアドバンテージだな。






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