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最下層階級の絶望騎士  作者: ぶい


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45/312

Object-254 『静寂の歌』

国際連合異常物質研究所

 そこに収容されているものは危険度及び収容難度を

 紫→青→緑→赤→黒→白の順に表記します。

 同様にして、職員も色によって階級(クリアランス)を設定される。その階級によって、開示される情報、実験指揮、様々なobjectへの接触許可命令などの権限を与えられます。

 危険度“紫”は異常性の失われたobjectを指します。

 階級紫の職員は重罪を犯した犯罪者です。階級黒、白の職員は博士と呼ばれます。



Object-254 『静寂の歌』

危険度“赤” 収容難度“赤”

旧収容概要


 Object-254は鉄製の5メートル×5メートル×5メートルの床、壁、天井の特別性の人型物質収容房に収容します。監視カメラの設置は禁止されています。室内には木材を使用していない机、椅子、ベッドを設置してください。

 週に一度、ベッドのシーツ取り替え及び室内の清掃のため、二人の紫職員を特別防護服を着用させ、入室させてください。防護服の安全性に確証はありません。入室の際はObject-254を視界に入れてはいけません。

 身体接触は防護服によって完全に遮断されております。室内では絶対に防護服を脱いではいけません。

 入室前後で殺菌消毒を全身に行ってください。

 Object-254は管理栄養士に承認された適切な栄養を持った一般的な人間の食事と同じものを配当することになってます。

 Object-254に植物及び土を与えるのは禁止されています。


説明

 Object-254はルーマニア人の名称不明の男性です。捕獲当初の本体は戸籍上15歳で、外観は人間の年相応のように見られましたが、Object-254の異常性が判明して以降姿の確認はなく、現在のObject-254の姿は不明です。

 Object-254は自然を愛好しており、これは人類に対して敵対的です。

 Object.254の能力は依然として不明です。しかしその階級は黒に相当するだろうと予測されています。

 Object-254は自然保護活動家の両親を持って生まれました。両親ともに現在行方不明です。Object-254の発見時はObject-254の家で発見されました。二本の小さな木が家屋内に生えていました。

 エージェント◼︎◼︎◼︎によって保護されました。その後エージェント◼︎◼︎◼︎は精神鑑定の後に終了処分されました。



Object-254

変更 危険度“赤→白” 収容難度“赤→白”


現収容概要

 5メートル×5メートル×5メートルの金によってコーティングされた収容房に収容してください。

 現在入室は禁止されております。

 Object-254を使った実験は永久に禁止されます。


説明

 Object-254はルーマニア人の男性です。Object-254の姿は現在確認されておらず、目視、写真、映像でObject-254を見た者は、速やかに終了してください。

 Object-254は能力検査後、危険度が大幅に変更されました。能力は依然不明のままですが、その階級は白を優に超えています。

 国連決定により、第5位に位置付けられました。

 Object-254は従来の収容方法では脱出が可能だと判断されました。収容難度が赤から白に引き上げられます。

 Object-254の破壊許可が下りました。結果、失敗に終わりました。Object-254はいかなる攻撃をもものともせず、機材を破壊し尽くしました。現在破壊の試みは中止されております。

 Object-254の住んでいた家を中心に、街から人々が消えていく不可解な現象が発生しました(Object-254-A参照)。Object の異常性が残留していたことが確認されましたが、殺菌処理を施すことで、その波は収まりました。

 別々の博士による二度のインタビュー記録があります。Object-254-a、Object-254-b参照


Object-254-a

記録開始

◼︎◼︎博士「君の名前を聞かせてくれるかな?」

Object-254「お前たちは分かっているはずなのだ。分かっていてObject-254と呼んでいるのだろう?」

◼︎◼︎博士「……よろしい。それでは、君の両親の行方について聞かせてもらおう。知っていればで構わない」

Object-254「彼らは自然を愛していたのだよ。俺も愛しているのだ。だから彼らの行方は一つ。母なる自然、父なる大地、それ以外に何があると言うのだ?」

◼︎◼︎博士「そうですか。それでは次の質問です。君の目的は何ですか?」

Object-254「俺の目的?そんなものは決まっているのだよ。世界の初期化。ただそれだけ」

◼︎◼︎博士「初期化とは?」

Object-254「世界を自然に帰すのだよ」

これ以降質問には回答されませんでした。

記録終了


Object-254-b

記録開始

ライトマン博士「Object-254-Aについて、いくつか確認させてもらうが構いませんか?」

Object-254「以前の博士とは違う人なのだな」

ライトマン博士「そうですね。私はライトマン。彼は今別のObjectに当たっているのです。さて、これは確認ですが、あなたの故郷で起こっていることは、あなたの能力、ということで間違いありませんか?」

Object-254「あれが能力だと分かるものなのだな」

ライトマン博士「なぜあなたは街の人を消したのですか?」

Object-254「消したのではない。彼らの望む形に変えたのだよ。お前たちも調べがついているはずなのだ。彼らが何を望んでいたのかを」

ライトマン博士「Object-254-Aには不可解な点がいくつもあります。なぜ今になって、その事象が引き起こされたのですか?」

Object-254「簡単なことなのだよ。ただ能力の発動を遅らせていたに過ぎないのだよ」

ライトマン博士「Object-254-Aについて確認したいことはできました。そしてもう一つ、これは質問です。以前博士が質問し忘れたことを訊ねます。あなたはどこから来ましたか?」

Object-254「人はどこから来て、何処へ消えて行くのか。その答えは初めから決まっているのだよ」

ライトマン博士「と言いますと?」

Object-254「静寂より生じ、また静寂の中へと消えて行くのだ。俺もその例からは漏れないのだよ」

ライトマン博士「静寂とはなんですか?」

Object-254「この世界は騒がしい。複数の雑音が鳴り響いているのだよ。静寂はそれらのない世界。そこで鳴り響くは爽やかな歌」

ライトマン博士「この世界以外の世界があるのですか?」

Object-254「それはすでに失われた世界。世界の初期化でそれは取り戻される」

記録終了


 ライトマン博士はObject-254-bの後、精神鑑定を行い、アメリカ支部へと移動になりました。


Object-254-A

研究所「映像も音声も送られてきている。そのまま探索を続けてくれ」

紫職員「分かったよ」

 しばらく紫職員の歩く音と人のいない風景が続く。

紫職員「人を見つけた。映ってるか?」

研究所「映っている。監視を続けてくれ」

紫職員「……あの建物の中に集まっているようだな。乗り込むか?」

研究所「近づいて観察してくれ」

紫職員「分かった」

 映像はゆっくりと建物へと近づく。

紫職員「どうする」

研究所「様子見だ。そこで監視を続けてくれ」

紫職員「……お、おいあれってッ⁉︎」

研究所「どうした?カメラを向けろ」

 紫職員から映像が送られる。建物に入ろうとしていた人が階段から転がり落ちて、それが地面に根を張り、木へと変わる映像だった。

紫職員「き、聞いてねぇよ!こんなことが起こるなんてよお!」

研究所「落ち着きたまえ。まだ君がそうなるとは決まったわけではない。君は映像と音声を送ってくれ」

紫職員「わ、分かったよ」

 その映像は再び建物内へと向けられる。

紫職員「なんか様子が変じゃないか?」

研究所「何が変なのか教えてくれ」

紫職員「さっきの衝撃的な映像は、建物の入り口近くでも見えたはずだ。いや、間違いなく見えた。それなのにあいつら、どこか嬉しそうにさえ見えるぞ」

研究所「彼らは自然信仰団体だ。人が木になることは、彼らにとって本望なのだろう」

紫職員「俺はごめんだね。そんな死に方」

 しばらく団体の歓喜に沸く声が聞こえる。

紫職員「なあ、もう帰っていいか?」

研究所「いいや、まだ監視してくれ」

紫職員「はあ〜……了解」

 しばらくして紫職員の息を飲むような音が聞こえる。

研究所「どうかしたのか?」

紫職員「今度は建物内で起こりやがった!」

 建物内の映像が送られてくる。内部は騒然としており、人間の木化に巻き込まれた人が何人か肉を剥がれてぼとりと地面に落ちる。どくどくと溢れ出る血を見て、人々は慌てたように外へと飛び出して行く。

紫職員「お、俺はどうしたらいい?」

研究所「影からカメラに映してくれ。対策班を向かわせた」

紫職員「分かった」

 しばらく人々の悲鳴が聞こえる。

紫職員「……なんなんだよ、コレは……」

 全ての人が木となってしまう。

研究所「支給されたガスマスクをつけろ」

紫職員「もう遅いと思うがな」

 対策班到着まで閑散とした街が映される。

紫職員「あのジェットが対策班か?」

研究所「これより殺菌処理に移る。君は何かの建物の屋上に出てくれ。ヘリを向かわせた」

 殺菌処理が施され、職員を回収する。

記録終了



ブルガリア支部による報告書

 Object-254脱走。これをObject-254-Bとする。


Object-254-Bに関する報告書

 Object-254-BはObject-254によって引き起こされた事件です。

 Object-254はあらゆる記録を残さず脱走しました。

 施設内には複数の木や戦争に巻き込まれたかのような焼け跡が確認されました。

 Object-254は身長体重容姿不明のルーマニア人男性です。破壊するのが望ましいですが破壊は不可能です。再収容も不可能であると結論づけられました。

 Object-254-Bにより、複数の人型Objectが脱走しました。そちらの回収を最優先してください。

 Object-254への対処は不可能です。各街にエージェントを一人配置させ、Object-254-Aのような事象が発生した場合、直ちに報告させるようにしてください。

 Object-254-Bについては現在分析中です。記録が消去されていることから、能力を『侵略』と呼称し、階級を新たなる可能性(ネクスト・ステージ)へと引き上げます。

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