そして敵は知る
手伝いの途中で抜けた俺とティエラ。
どこに行くのかと訊かれ、昨日の悩める誰かさんのところだと言ったら、ティエラがついてきた。
今日もあの橋の下にいる確証はないが、何故だかあそこにいる気がした。
ティエラはシスター服で手伝いをしていたため、シスター服で出てくる。
ティエラがティエラの格好の時にシスターさんの何人かに見られたらしいが、それでも変わらず接してくれていたな。
あの後着替えて出てきたティエラに残念そうな表情をしていた。
ティエラにはもう心配いらないな。
二人並んで歩いていると、教会で知り合った様々な人たちが挨拶をしてくる。
俺たちもそれに挨拶を返すが、挨拶をした人たちはみんながみんな振り返り、ティエラを目で追っているのを感じる。
ティエラの心境の変化が表情にも現れ、それが多くの人たちを魅了しているのだろう。
仕方ないな。
今のティエラは眩しすぎる。
こんなティエラを合わせるのは逆影響かもな。
「やっぱりここにいたんだな」
橋の下で座り込み、足を伸ばして憂鬱そうにする男。
「またお前たちか」
ティエラの変化に気付いてか、少し目を細めて鬱陶しそうだ。
「俺に関わるな」
「悩める人がいるなら寄り添うのがシスターですわ」
ティエラはそう言って優しく微笑む。
昨日のことが嘘のようだな。
俺のことを気にするように見た男は、橋を見上げてどこに視点を合わせるでもなく、ぼーっと生気の抜けた表情を浮かべる。
「人に話すことで楽になることもありますわよ?」
ティエラは自分がそうされたように、誰かにもそうしたいと思っているのだろう。
残念だが、そいつはお前には話し辛いだろう。
「独り言でも大分マシになる。俺たちはいないものだと思ってくれて構わない」
やはり俺を気にするように見つめる男。
それに応えるように視線を返すと、男は頭を掻きむしって大きな溜め息を吐く。
「……やりたくない仕事が回ってきたんだ」
「やりたくない仕事?」
そう聞き返されるのは分かっていたようで、用意されていた答えを告げる。
「とても褒められた仕事ではなく、ひどく残酷で、しかし絶対的必要性のある仕事だ」
そんな仕事が存在するとは思えないが。
「シスターは人の罪を聞くものだろ?だから聞いてくれよ。俺の罪を、その独白を」
それは俺に向けられた言葉であると、瞬時に理解した。
そしてその男が望む道も。
しかしその道を諦めていることも、同時に理解した。
だからこうして悩んでいたのだと理解した。
「俺は人を殺したんだ。何度も、何度も何度も何度も!それがいけないことだと知っていながら……」
どういう意図で言っているのか、それが分かってしまう。
こいつは……
「俺は、そうだな……どこから話したものか……」
そう言ってそいつは過去を語る。
それは俺へのヒントであり、警告でもあった。
俺は生まれた時から体の一つの機能が死んでいた。
体のリミッターがぶっ壊れていたんだ。
そんな俺には、当然ながら普通の生活なんて待っていなかった。
俺は貧しい家に生まれた。
俺が知る限りでは最悪の両親だが、昔は仲が良かったらしい。
押入れの中から見つかった写真には、まだ幼い俺を抱いて笑う二人が写っていた。
しかしそれも長くは続かなかったようだ。
俺が物心ついた頃には、その間柄はひどく荒んでいた。
子どもの俺に力で勝てず、親の威厳がどちらからもなく、俺を厄介者のように扱っていた。
そうしてしばらくすると、二人は喧嘩を始めた。
共働きで、しかし貧しい両親は、親の威厳を失って、仕事も家庭も苦痛となったんだろう、それを俺にはどうすることもできなかった。
しかし学校には通った。
あまりいいものではなかったが、家にいるよりはマシだった。
中学に上がった。
それから俺はいじめられ始めた。
ほとんど服を与えられていない俺は、汚い身なりで学校に行き、文房具もなく授業を受けていた。
成績は悪くなく、運動は人並みをはるかに超えてできていた。
だからいじめられるのも仕方がなかったとは思う。
そんな反吐が出るような環境に、俺はずっと耐えてきた。
三年に上がった時には、父は家ではずっと呑み続け、母は父以外の男を連れ歩いてばかりいた。
そんな家が嫌いで嫌いで……
ある時父が俺に怒鳴ってきた。
なんだ、いつものことだ。
酔ってただ声を荒げているだけだ。
俺はそう思って聞き流していた。
そんな時に母が帰って来た。
俺は狙いが母に移ったので移動しようとした時、服を掴まれ酒瓶で殴られた。
頭から鮮血が飛び散り、それが視界の端に映ると、その後に熱い液体が目に染みて、俺はくらりと視線が移動したのを感じた。
ああ、死ぬんだ。
こんなクソみたいな死に方か、なんて、バカらしい死に方なんだ。
俺が床に倒れると、今度は母の叫び声が聞こえてきて、ああ、もうそんなこと、どうでもいいや。
…………………………
……………………
どうでもよくなんかない!
俺は目を開ける。
こんな死に方認められるか!
なぜ俺がこんな死に方をしなきゃいけない!
「死ぬべきなのは俺を苦しめてきたクソどもの方だろうがよお!」
思わずそう叫んだ俺に、二人が反応して振り向く。
「殺してやる……殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して……………………」
―――――――――殺してやる!―――――――――
そう叫ぶと、少し気分が良くなった。
こんな生活が普通だった俺は、こんな生活を誰よりも壊したかった。
こんな生活を強いる全てを、
「ぶっ壊してやるよぉ?」
一番最初に壊れた俺は、全てを壊すべく、まずは自分の傷を壊した。
傷ついた自分が、そんな生活の中では当然であり、その生活の象徴でもあったからだ。
目を開けて視界が広がった俺に飛び込んできた光景は、取っ組み合う大嫌いなものたちだった。
「あーん?お前なんか文句あンのかぁ?」
近づいてくる酔っ払い。
「文句がありすぎてぶっ壊せるくらいにはなあ!」
俺は死を壊す。
生物なら当たり前に訪れる死を。
そしてぶっ壊れた俺の力で、その柔らかい頭を握り潰す。
脳が潰されれば体は動かない。
それが『普通』だよなぁ?
生まれた時から『普通』じゃない俺は、『普通』であったはずの周りも『異常』にしてきてしまった。
「なあ?当たり前が壊れて、どんな気分だよ?父さん?あはっあははッアははハ?」
その体は救いを求める。
頭を失って救われるはずなんてないのに。
それは母の元へと縋り付く。
「い、嫌ああああああああああ!!!」
恐怖に泣き叫び汚く小便を漏らす母に、助けを求めるようにその服に縋り付く父。
憎んでいたクソどもの、初めから醜かったクズどもの無様にもがく姿、それが俺の中を満たしていく。
乾ききっていた俺を潤す。
もっと、もっとだ!
こんなので足りるかよお!
ドチャッと、何かが床に落ちる音がした。
赤い液体を溢れさせる柔らかな触感の何か。
硬い何かが飛び出しているが、なんだかよく分からないな。
いつの間にか耳障りな音が消えているが……ああ、消えているのなら都合がいいのか。
床に落ちたそれを拾い上げてよく見てみると、それは何かの肉であることが分かる。
肉なんて高級食材、俺は食べたことがない。
だがこの肉は食べる気が湧かないな。
近所の人にでも食わせてやるか。
夜中に騒いでしまったしな。
登りたての朝日が穴だらけのカーテンから差し込んでくるのを見て、俺のことを見て見ぬ振りをしていたクソどもにプレゼントをしてやることにした。
肉にはなんと、初めからから布のような物がついていた。
それはひどくぼろぼろになっていたが、何人かいる同じアパートの人たちに配るには、丁度よく肉を包めて、丁度よく全員に配れるほどの数がある。
肉を小分けにして、血まみれの姿では驚かせてしまうと、それを普通と仮定して、それを壊して血痕の一切ない服に戻す。
ただでさえぼろぼろの服だから大切にしているんだ。
「起きているかー?」
お隣さんにノックをすると、起きたばかりなのか寝ぐせの残ったボサボサの髪で、鬱陶しそうな表情で扉を開ける。
「肉が手に入ったからおすそ分けに来た」
俺の抱える布袋を見て、俺に視線を戻す。
「いらん」
短い返事でドアを閉めてしまうその人に、せっかくの善意を踏みにじられた俺は苛立ちを覚える。
扉はそこにある。
閉まっているというその概念を破壊。
扉がゆっくりと開いていく。
「あ?」
ギィィという音を立てて開いた建て付けの悪い扉に、振り向く隣人の口を無理矢理開かせ、俺はそこに肉をぶちこむ。
「昨日は父が騒いだからなぁ?その迷惑料として受け取れよ!」
俺は音が響くということを破壊していたので、あまり周りに騒音被害は出ていなかったと分かっている。
それでも父が騒いでいたので、それを悪いと思い来てやったんだ。
「せっかく俺がくれてやるって言ってんだよ!おら!うまいだろ?感動して泣いてるんだろ?うまいって言えよお!!!」
俺は喉から腕を抜き取り、握っていた首を放す。
そいつは息をしていない。
「そうまでして答えたくなかったのかよ?チッ!」
次だ。
足りない。
もっとだ!
もっと殺すんだ!
俺を笑っていたやつら全て、俺を苦しめたやつら全て、俺を助けなかったやつら全て!
壊して殺して壊して殺して壊して殺して壊して殺して壊して殺して壊して殺して壊して殺して壊して殺して壊して殺して壊して殺して!
「あは、アハハ、アハハハハハハハッ!!!」
そうだ、学校行かないと。
俺は学生なんだった。
「アハ、アハハ?」
何かが崩れ去る音が後方でしたが、俺は無視して学校へ。
ああ、こんな時間じゃ遅刻だよ。
でも関係ないよなぁ?
どうせ全部壊れるんだからさぁ?
「アハッ!アハハハハハハハッ!」
教室の扉は手を触れずに開く。
「遅刻かね?さっさと席に座りなさい」
中年の一部頭がハゲている教師。
ざわつく教室、その大半が俺への陰口。
「アハハッ!幸せの血溜まりを作ってやるヨぉ?」
「君は何を言っている…の……」
「アハハッ!呼吸が速くなった!不思議だなぁ?酸素を吸えてないのかなぁ?あっハハッ!それを普通だと思っているからだヨぉ?」
能力を解くと、その喉を押さえて苦しそうに酸素を求めて激しく呼吸する。
「テメェ、ふざけたこと言ってんじゃ……」
そう叫びだした一人の男子だが途中で声が出なくて戸惑い始める。
正義感が強いのか俺に向かって歩いてきたそいつは、途中で体が硬直したかのように不自然な態勢で止まる。
「どうしてこんなことをするの⁈」
そう叫ぶ一人の少女。
人気の高いそいつの言葉が俺をイラつかせる。
「どうして?……ぷっ、アハハハハハハッ!ハハッ……!なに自分は分かりませんオーラ出してんだよクソがッ!」
床に壁に天井に机に椅子に黒板に、俺を中心にヒビがはいる。
「クソどもガァッ!テメェらクソどもが俺をぶっ壊したんだろ?なのに無関係面してんじゃねェぞ!」
ビリビリと声が響く。
音は外へは漏らしていないが、ヒビに気付いた他クラスの教師生徒が集まってきた。
「いいこと思いついたァ。テメェはクラス内外問わず人気だ。だから他のやつの理性がぶっ壊れたら、テメェはどうなっちまうンだろうなァ?」
集まった人たちが俺を止めようと教室に入ろうとするが、そんなことができるはずがねェよなァ?
「オラァッ!」
少女の服を引き裂き、クソどもの理性を破壊する。
俺はクソどもの中にクソを投げ入れ体の拘束を解くと、クソどもはハイエナの如く群がり襲う。
「アハッ!アハッ!アハハハハハハハッ!」
止めようとする教師たち、理性の無いやつらを止められるわけねェだろ!
だいたいなァ!
「俺の時は見向きもしなかったクセにそいつの時だけ助けようとしてんじゃねエエエエェェッ!!!」
教師に振るった拳がその頭を吹き飛ばし、次から次へと壊していく。
真っ赤に染まった教室。
静まり返った教室。
誰もいない、何もない。
俺は学校を出る。
今の血みどろの俺が普通、そんな俺を破壊。
服に残っていた血痕は消滅し、それと同時に学校も壊れていく。
学校なんてなかったんだ。
壊れていた俺は自分の修復に入る。
小さな公園でベンチに腰掛け、修復に入る。
「アハッ!アハハッ!アハッ……」
雨が降り始める。
霧のような雨。
それは次第に水滴となり、だんだんと大粒になっていく。
「あはは……」
溢れ出す涙。
俺は何てことをしてしまったんだ。
今になって思う。
俺はとんでもないことをしてしまったのだと。
「ああ、ここは地獄だ」
沈黙するティエラ。
予想だにしていなかった過去、それを語られて、小さな愚痴、ちょっとした仕事の失敗、そんなことだと思っていたティエラには、何も答えられない。
ティエラにはこいつが何を思っているのか、分からない。
だから俺が答える。
「愚かだな」
「ヒロトッ!」
そう言った俺に、ティエラが驚いたように言葉を投げる。
「ああ、愚かだ。いっときの感情に身を任せ、より深い闇の中へと身を投じるなんてな」
「後には罪と肉の感触が残るのみ」
「分かるか?」
「分かるよ」
困惑するティエラだが、話についてくる方が難しいよな。
殺人鬼と化した者同士の会話だ。
理解できなくていい。
「そいつを守ろうと思うのなら、そいつを連れて国に帰るんだな」
これだけ能力について話しても、俺に逃げの選択肢を選ばせようとしている。
「それは無理だが、安心しろ。お前にはもう、誰も殺させないから」
「……そうか。残念だ」
俺の意図を読み取り去ろうとする男に無理を承知で呼びかける。
「なあ、もうやめにしないか?」
「すまない。俺は主に従うのみ。お前の提案は受け入れられない」
そう言って去っていく男を、俺は見送ることしかできない。
あいつは俺のように、救われて、いるのだろうか?
俺でいう八田月のような存在に、あいつは出会っているのだろうか?
俺とあいつは違う。
俺には止めてくれた人がいて、帰るべき場所があった。
あいつは全部壊して、いや、始めから壊れていたんだ。
そんな俺には、あいつがした後悔は分かっても、今のあいつの心理までは分からない。
俺はやはり、弱い……
バカな男だ。
騎士でも気取っているのか?
俺は脅しのつもりで過去を語った。
あいつも俺の過去に共感できる何かの経験があったようだが、それでもあんな話を聞いて、まだ戦おうなんて思えるとはな。
俺の仕事は第3王女ティエラの殺害。
俺が唯一殺したくないと思える人物。
話の続きになるが、雨に打たれ続けていた俺は、ただ静かに、自分のしたことを思い返していた……
全て殺して、ああ、虚しい。
拭えない感触に吐き気を催す。
公園のトイレに吐き出すと、再びひりつくような感覚が込み上げてくる。
「帰ろう……」
呟き歩き出して、自分の家があった場所の前までくる。
「ああ、こんな場所でも、俺の家だったんだ……」
自分で壊しておいて泣き出すなんて、情緒が安定しなさすぎるな、俺。
「クソッ!」
苦しい、腹が減った。
喉も渇いてもう耐えられない。
俺には、何もない。
虚しい…………
…………
「大丈夫ですの?」
行くあてもなく地面に膝をついていた俺に、その少女は話しかけてきた。
銀色の髪の、小学生くらいの少女。
その少女は黒服の男の制止を振り切って、俺へと駆け寄ってきた。
いかにもいい暮らしをしてそうなやつだ。
気品のある服装で、所作からも気品が溢れ出ている。
俺とは住む世界の違う人。
俺がこんなに苦しんでいるのに、生まれた場所が違うだけでこうまで人は変わるのか。
「傘も差さずにどうしましたの?」
傘を買う金なんてない。
うちにあったのは穴だらけの骨組みの歪んだ傘だけだ。
それも今はもうない。
「わたくしの傘を差し上げますわ」
その少女は、自分が濡れることも厭わず、そう言って傘を差し出した。
他人の施しなんて受けない。
俺はキッと睨み返し、傘を押し返そうとする。
俺の苦しみを知らない奴から、裕福な家庭で生まれ育っているお前から、施しを受けたら俺はもっと惨めになる!
憎い、憎い憎い憎い、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イィィィィィィィ!!!
「はぁ……」
俺はすでに虚しさを知ってしまった。
そんなことをしても、なんの意味もない。
「失せろ。俺のようなやつに、関わるべきじゃない」
傘を押し返し俺は力なく立ち上がる。
「きっと……」
離れていこうとする俺を走って追いかけ回り込む。
「きっといいことがありますわ!」
あの感触の消えないその手に無理矢理傘を握らされ、そいつは雨に濡れながら綺麗事を並べる。
「辛いことばかりが人生じゃありませんわ!わたくしたちはきっと、この世界なら生まれてきてもいいと思えたから、だからこの世界にいる!今辛くても、いつかは必ず楽しいと思える日が来ますわ!」
震えるその腕は、弱々しく、そして強く見えた。
まだ幼い少女がこんなことを言う、それははたから見れば異常なことだ。
そう考えられるほどに成熟しているのか、それともそう思いたいのか。
黒服が傘を差すが、もうすでにそいつはびしょ濡れだ。
「ガキがッ…うっせえンだよ……」
傘を差しているのになぜだ、地面にポツリ、ポツリと雫が落ちる。
こんなに小さな少女は、その小さな体でどれだけのものを背負っているのか、この時俺は知らなかった。
それでも、その言葉の重みは、理解できた。
主は俺に殺させようとはしないだろう。
その罪は自分で背負おうとする。
だがな、その時になれば俺が殺す。
あいつに殺させるわけにはいかないんだ。
正直に言えば、あの男(ヒロトと言ったか?)、あいつがあれを連れて逃亡してくれるのが一番ありがたい。
俺も殺したくはない。
だがそれは無理だろう。
あいつは言ったもう殺させない、と。
ずるい言い方だ。
戦う意思があるのは分かったが、俺を甘く見ているようだな。
残念だよ。
同じ殺人鬼同士分かり合えると思っていたのにな。
少女だったティエラを変えたヒロトと呼ばれた人物。
あいつは少女だったティエラを救った。
あれはようやく救われたんだ。
あれはようやく幸せになれるんだ。
なのになぜだ、なぜさらに苦しい道を進ませようとするんだ!
もう抗うな!
逃げてくれ!
お前では俺を倒せない……!
俺は過去を語った、なのになぜ引こうとしないッ!
俺は従うだけの破壊者だ!
この世のルールに干渉するほどの能力者だ!
頼むから逃げてくれよ……
なあ……『ヒロト』?
爽やかな風が吹く。
脅しか、それとも負けたいのか。
話したところでほとんどのやつは勝てないから、多分脅しの意図で言っていたんだろう。
だが、俺は戦う。
敵は…………見えた!




