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俺が勇者だ …何もしてないけどな

お待たせしました最終話です

はい、着きました魔王城。

万全の状態で挑むためにってことで移動に2日と休憩で1日の合計3日かけてゆっくり来たんだが、自称魔王の手先には出会わなかった。魔王城の近くの方が警備が薄いのって大丈夫なのか? 俺としてはどうせ見てるだけだしどっちでもいいけどさ。

まぁそんな感じで何事もなく魔王城に着いた。

しっかし、あれだな〜……


「ここ本当に魔王城なんだよな?」

「はい、確かにここに魔王がいるはずです。」

「……じゃあこの『歓迎!勇者様御一行』ってのはなんだ?」

「これは(のぼり)と言いまして−−」

「いや、そういうことを聞いてるんじゃなくってな? なんで俺らが歓迎されてるんだ?」

「だって勇者様と愉快な仲間達ですよ? 歓迎しないはずがないじゃないですか」

「……お前らが愉快な仲間達かどうかは置いとくとしてだ。魔王ってのは、勇者とは敵同士なんだよな?」

「もちろんですよ。でなければ魔王討伐なんてことさせられるわけないでしょう?」

「だよな? じゃあなんで歓迎されるんだ?」

「ですから、勇者様だからですよ。さっきも言いましたよね」

「だからそこがわかんねえんだよ!」

「……はぁ」


なんだその可哀想なものを見るような目は。他の(名前忘れた)奴らもがっかりしたような目でみてんじゃねえよ。

魔王と勇者は敵同士なのに、魔王は勇者を歓迎するってどう考えてもおかしいだろ。


「おいゴリラ、これが罠ってことはないのか?」

「……」

「おいゴリラ」

「……」

「おい!」

「あ、私に話しかけてたんですか?」

「ゴリラっつったらお前しかいねぇだろ」

「……鏡を見てからおっしゃってくださいませんか?」

「そっくりそのままお前に返すわ!」


シルヴィアが手鏡を取り出して自分の顔をじっと見つめ、頬に手を当てながら「なんて美しいんでしょう」などとほざきやがった。

そしてそのまま俺に鏡を差し出してきた。


「俺にも自分の顔を見ろってのか?」

「そうですよ。どれほど醜い…失礼、整っていない顔立をなさっているのかご確認ください」

「姐さん、兄貴の顔は醜くなんかないっすよ! 目も当てられないだけっす!」

「旦那、男は顔だけじゃないですよ」

「お前ら全員、俺に喧嘩を売ってるのはわかった。おいゴリラ、鏡をさっさとよこせ」


むしり取るようにして手鏡を受け取り、自分の顔を確認する。

…うん、別に悪くないだろ。平均より上、むしろ上位ランカーって言ってもいいくらいじゃないか?

このハンサムな俺の顔が醜いとか、こいつら全員目が腐ってんだな。

数分ほど自分の顔に見蕩れてから勝ち誇った顔を浮かべて鏡を返す。


「とりあえず、お前らの目が腐ってるのは分かった」

「……そうですか。残念です」


なんでまた可哀想なものを見るような目で俺の方を見るんだ? ……ていうか鏡に消毒液かけて拭くのやめろ。俺の触ったところを重点的に拭いてんのが余計に腹たつ。


「…はぁ、もういいです。で、この"歓迎"というのは嘘で実は罠ではないかということですが、それはありません」

「どうして言い切れんだ?」

「勇者様と愉快な−−」

「それで納得しなきゃだめなのか?」

「それでもなにも、これが全てですよ」

「……」

「ここでいつまでも時間を潰してないでさっさと行きますよ」

「もう勝手にしてくれ……」


愉快な仲間たちと勇者という順番で魔王城に入った。



城に入ると敵に囲まれていて…なんてこともなく『こちらへ』という矢印付きの看板が所々にあり、その誘導に従って進んだ。

内装もテライア王国の城とあまり変わらなかった。強いて言うなら扉の意匠なんかが違うくらいか。

なにか魔王っぽいものがないかと探しながら愉快な仲間達についていくこと数分、ついに目的地に着いたらしい。


「お、ここが魔王のいるとこか」

「おそらくは。……もしかすると」

「ん?」

「いえ、なんでもありません」

「緊張するっすね…」

「魔王…いったいどんな方なんでしょうね…」

「お前らなら大丈夫なんじゃね?」

「そうですね、"私達なら"大丈夫ですね」

「兄貴、姐さん…」


シルヴィアが"私達なら"といった時に何故か一瞬だけ俺を見たんだが…なんなんだ? 俺はその"私達"に含まれてないって言いたいのか?


「さぁ、いきましょう!」


俺が聞こうとするのを遮るかのようなタイミングでシルヴィアが扉を開け……ようとして押したが開かなかった。


「……」

「……プッ」

「…あ、姐さん?」

「シルヴィアさん、その扉はおそらく−−」

「フン!」


引いて開けるのでは、と言おうとしたんだろうな。俺もそう思ったし。

まぁシルヴィアは無理やり押して開けやがったんだけどさ。

……いくら歓迎してくれてるっつってもこれはマズいんじゃね? ま、そんときはシルヴィアになんとかさせればいっか。


扉を破壊したシルヴィアの後に続いて中に入ると10メートルほど先にいる人物に向かう道を作る家のように並んだ使用人(?)達に迎えられた。

道の先の奴は引きつった笑顔を浮かべていたが、使用人達は何事もなかったかのような顔をしていた。すげえな。


「ゆ、勇者殿よくぞ参られた」


引きつった笑顔を浮かべたそいつが話しかけてきた。大丈夫か、声震えてんぞ?

犯人のシルヴィアは私は悪くありませんとでもいうかのような顔をしている。

勇者殿って言ったってことは俺が相手しなきゃいけないんだよな…。


「あー、歓迎どもです。俺が勇者に選ばれたディオです」

「…お、おぉ貴方が勇者殿でしたか」


シルヴィアの方をチラチラ見ながらそう言われたんだが……悪いな、俺が勇者(観光客)だ。


「ディオ殿、私は魔王ゲスタニア・ディ・フェルトールと申します」

「へぇ……」

「このたびはお越しいただき誠にありがとうございます」


はっはっはー、魔王が本当に勇者を歓迎しやがった……。

この後もなにか言ってたみたいだが頭にはいってこなかった。

気づいたら椅子に座らされていて、右手にナイフ左手にフォークを持っていた。そして目の前にはステーキ。

周りを見るとシルヴィア以下俺以外の勇者一行と魔王が平然とステーキを食べていた。


「ディオ殿、どうかされましたか? もしやお口に合いませんでしたかな?」

「い、いや、そういうわけじゃないんだが…」

「ふむ?」

「俺が勇者であんたが魔王なんだよな?」

「そうですな」

「勇者と魔王は敵同士なんだよな?」

「そのとおりです」

「…じゃあなんで俺は魔王に歓待されてるんだ?」

「それはディオ殿が勇者であるからです」

「……またか、またそうなるのか」


俺がおかしいのか? いやそんなはずはない……よな? ダメだ、なんか不安になってきた。

不安になってきたから俺を『また言ってるよこの馬鹿は』みたいな目で見ないでくれ、シルヴィア。


「あー…俺は魔王を倒せって言われてここに来たんだけど」

「当然でしょうな」

「あんたはそれでいいのか?」

「なにか問題が?」

「………いや、なんでもない」

「そうですか」


あぁもうどうでもいっか。真面目に考えるのが馬鹿らしく思えてきた。そもそもこんなの俺の柄じゃないしな。

うん、もう諦めよう。あとはシルヴィア達がなんとかするっしょ。


考えるのを放棄した俺は魔王ゲスタニア(俺命名:ゲスさん)のもてなしを堪能することに専念した。

冷めかけてたけどステーキは美味かったし、食事のあとに案内された風呂はめっちゃ広くてくつろげたし、ベッドはうちの貧相なものとは比べ物にならないくらい寝心地がよかった。もう一生ここに住みたいくらい。




 〜〜〜翌日〜〜〜


今日は魔王城でまったり寛いでやろうと手始めに二度寝を決め込もうといしたところにシルヴィアがやってきて叩き起こされた。


「……お前、俺が裸で寝るタイプだったらどうすんだよ?」

「勇者様の貧相な体には興味ありませんので大丈夫です」

「…あっそ、とりあえず俺は寝るから邪魔すんな」

「いえ、もうここを出て王都に戻らなければなりませんので起きていただきます」

「はあ? まだゲスさん倒してないだろ。それに俺はここから帰る気はない」

「何を言ってるんですか。魔王は倒しましたし、勇者様には報告の義務がありますので一緒に来ていただきます」

「倒した…だと?」

「ええ、昨夜勇者様が先に寝てしまわれた後に」

「……まじか」

「分かったらさっさと起きてください」

「はぁ…」


俺の理想郷の主人たるゲスさんがいなくなったということは誰も維持してくれない、つまり理想郷は滅んでしまったということか。…え、俺がすればいいじゃないかって? そんなめんどくさそうなことするわけねーじゃん。

理想郷跡地に未練はない、しょうがない帰るか。



シルヴィアを追い出して帰り支度を済ませ、元魔王城の玄関へと向かう。道中誰にも会わなかったんだが…理想郷が滅んだのは事実だったのか。

せめて朝食くらい食べたかったとか考えながら歩いていると玄関が見えてきた。先について俺を待っていたのはシルヴィアだけだった。


「他の奴らはどうした?」

「帰りましたよ?」

「…はあ?」

「目的は達しましたので、昨晩のうちにお帰りいただきました」

「俺には挨拶もなしか…失礼な奴らだな」

「ぐっすり寝ていらしたので私が止めさせたのですが、叩き起こした方が良かったですか?」

「あー…じゃあしかたねえな」

「ご理解いただけたようで何よりです。では行きましょうか」


シルヴィアの後に続いて魔王城を出る。

城壁を抜けたところで理想郷跡地をしっかりと目に焼き付けておこうと振り返ると魔王城の人たちが総出で見送ってくれていた。

……総出で。


「…おいシルヴィア」

「なんですか?」

「俺の目に狂いがなければ、あれはゲスさんだよな?」

「そうですね」

「倒したんじゃなかったのか?」

「ちゃんと倒しましたよ? 証明書だって、ほら」


そう言って見せられた紙には『私、魔王ゲスタニア・ディ・フェルトールは勇者ディオ・マークス殿御一行により討伐されたことをここに証明する』との文字、そしてゲスさんの署名と拇印が押されていた。


「……もうお前らがそれでOKならいいわ」

「ご理解いただけたようで。では行きますよ」


こうして俺の魔王城攻略は終わった。

ここで俺は一つ問いたい。万全の状態でとか言って3日かけた移動はなんだったのかと。

…まともな答えが返ってきそうにないから聞かなかったけどな。


あ、魔王の手先(自称)はただの盗賊が勝手に名乗ってただけらしい。ゲスさんの手下って雰囲気じゃなかったしな。



 〜〜〜4日後〜〜〜


俺たちは無事に王城に帰還した。久しぶりにギュミルちゃんに会えるのか。

と思っていたら応接室に通され、後からやってきたキュレイがシルヴィアから報告を受け、解散となった。

「ではそういうことですので」と言って城から放り出された時は何が起こったのかわからなかったな…。

「これが勇者に対する扱いか!? ふざけんな!」と言って城門を蹴飛ばしてやった(痛かった)時には門番達が睨んできた。

……はぁ、帰るか。




以上が俺、勇者ディオ・マークスの物語なのだが……俺の役目って結局ってなんだったの?

これにて完結です

最終話だけ投稿が遅くなってすみませぬ

いくつか「これいいかも!」って案が思い浮かんできたんですけど、その中からどれを選んでどう終わらせるかなかなか決められなくて…



<いくつかのボツになった案の設定と大体の流れ>


・魔王の力によってシルヴィアは醜い姿に変えられていた!?

→本人は「呪いのようなもので醜い姿に変えられていた」と言い、光に包まれる

 光が収まるとそこにはゴリラの妖精(シルヴィア)が!


・魔王は幼女で、ギュミルちゃんとの喧嘩的なことに主人公は巻き込まれただけ

→魔王の間(謁見の間)に通される、そのさきに待ち構えていたマッチョメン

 主人公たちは魔王だと判断し警戒をするが、丁寧な対応をし奥へ進むように促される

 そのさきの王座に座るは魔王サマ(幼女)!

 (自称手先は単なるロリコンのおっさん)


・魔王はゴリラでシルヴィアと恋に落ちる

→魔王の間で玉座に座る魔王(仮面をしている)を見る勇者一行

 「よく来たな勇者よ」と言いつつ立ち上がる魔王に警戒を強める

 そして仮面が外された時……シルヴィアが「魔王…サマ」とつぶやきながら前に出る

 勇者からシルヴィアに目を向けた魔王は目を見開き「おお…おお!」と言いながらシルヴィアの方へ

 

・魔王もホモォ

→勇者と対峙する魔王

 全身を舐め回すような視線に悪寒を感じる勇者

 魔王、勇者の供の漢♂達は同類の匂いを感じ取り、熱い視線(汚)を交わす


・魔王(美少年)とギュミルちゃんが恋に

(特に内容は考えてませんでした。だって出会いがないんだもの←)



最後までお読みいただきありがとうございました


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