表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二人の世界を変える魔法~魔法少女が死ぬ前に~  作者: 宮塚慶
第1章 こうして、二人の日常は始まった

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/32

第31話 決着

 繋がれたウイカの手から体温が伝わってくる。

 その温かさに混じって、彼女の脈動がそのまま流れ込んでくる感覚。前にネックレスから感じたものと同じ。

 これが、ウイカの魔力に共鳴しているということなんだろうか。

 目の前のリントヴルムを撃ち払う魔法をイメージする。今度こそやらないと。


「ぐぅッ……!」


 呻くような声が聞こえて思考が中断される。見ると、リントヴルムの牙がドロシーさんの腕を貫いている。

 流血するその姿を見て、俺の頭は真っ白になった。それでもドロシーさんは反対の手で魔法を練り上げ、敵の顔に砂礫を掃射。

 リントヴルムが怯んだ隙に、側面からメアリさんの水撃が飛ぶ。敵は即座に反応して攻撃を避けたが、一瞬口を開いた隙を突いてドロシーさんは脱出に成功した。

 満身創痍でふらつく体を、メアリさんが支えて飛び退く。

 俺が此処で仕留められなければ二人も危ない。焦る気持ちを隣でウイカが制した。


「今は皆を信じて、イサトは集中」

「わ、分かった!」


 そうだった。こんな状況だからこそ他人を気にしている場合ではない。俺は俺のできることをしないと。

 ウイカは力強い言葉で続ける。


「目を閉じて、イメージを明確化して。何かあればリントヴルムは私が食い止めるから」


 敵前で視界を塞ぐ恐怖はあったが、俺は素直に従った。

 ウイカから流れ込んでくる魔力で補いながら、自分のイメージを確実な形にすることだけを考える。

 もしも前に発動した時と同じなら、ウイカのピンチを助ける気持ちがトリガーになったはずだ。そこに今はドロシーさんやメアリさんの命も懸かっている。

 大丈夫、俺はウイカを一方的に守るナイトじゃない。隣に立って一緒に戦えばいい。

 俺にはウイカがついている。彼女はこうして、俺の魔法が発動するのを信じてくれている。

 深呼吸。

 ウイカの手のひらがじんわりと汗で滲んできた。今の俺にリントヴルムは見えていないが、迫る敵に緊張が高まっているのが分かる。

 ……行ける。二人なら、できる。


「――撃て!」


 自分を鼓舞するように叫びながら、俺は左手を前面に突き出した。

 その手のひらから真っ白な輝きが光線のように放たれ、リントヴルムを焼く。敵は鼻先まで迫っていて、零距離射撃になった。

 鱗が剥がれ落ち、光の直撃した半身が吹き飛んでいく。肉の焦げるような臭いが辺りに充満した。

 リントヴルムは翼をはためかせ、辺りに砂埃を撒き散らせながら後方へと距離をとった。

 無感情な中に確かな喜びを滲ませて呟くウイカ。


「やった」

「……ああ、できた……」


 俺はというと、成功した喜びよりも呆気にとられる感覚の方が強かった。

 魔法は発動したが、あんな目の前までリントヴルムが迫っているとは。目を開くまで気づきもしなかったし、かなりのピンチだった。

 上手く攻撃できていなかったらどうなっていたのだろう。あまり考えたくない。


「ってか、あいつまだ戦うつもりなのか!?」


 リントヴルムは立ち上がり、再び臨戦態勢をとる。右半身を焼かれて濛々(もうもう)と煙を吐き出しながらも、まだ闘争本能を残しているとは。

 強張る俺を、ウイカは鼓舞してくれた。


「相手のダメージは大きい。大丈夫」


 弱気になっている場合ではない。俺は頷いて、敵を見やった。

 遠くからドロシーさんとメアリさんの声も聞こえてくる。


「そろそろ仕留めますかー!」

「……ドロシー。空元気(からげんき)すぎ」


 腕の怪我は重そうだったが、ドロシーさんもまだ戦う意志を見せている。

 メアリさんが隣で支えるように立っているので、あちらもまだ大丈夫だろう。

 なら、今度こそ決着をつける。


「反撃開始!」


 ドロシーさんが叫んで、そのまま空へと舞い上がる。リントヴルムも巨大な翼で空中戦に向かった。

 魔法によって固められた岩石の銃撃が敵を襲う。

 リントヴルムの機動力は明らかに下がっていた。ドロシーさんの猛攻を避けきれず、次々に被弾して身悶えする。


「――泡沫乱撃(フォーム・インパクト)


 高度を落とす敵をメアリさんの水魔法が襲う。

 傷口に塩を塗るように、焼けた半身を(なぶ)る攻撃。リントヴルムは絶叫しながら墜落してきた。

 俺とウイカは敵の姿を捉えて再び構える。繋いだ手は離さないまま、今も彼女の魔力が俺に注がれているのを感じていた。


「行くよ、イサト」

「おう!」


 もう一度、魔法のイメージを固める。

 先ほどは光線として放ったが、今度はもっと鋭角的に相手を倒す力を生み出したい。

 ウイカがギュッと俺の手を握り返してくれた。今だ!


「貫けぇ!」


 イメージした刃が鎌鼬(かまいたち)として連射され、リントヴルムに直撃した。激しい閃光と共に両の翼を切断し、体を切り刻んでいく。

 視界が白に埋め尽くされた。俺の放った魔法と、敵の体が粒子として散っていく光で満たされる。

 グオォォォォオッ! と断末魔が響きわたった。


「ハァ……ハァ……」


 光が消え、目が慣れてくるまで時間がかかる。

 息も絶え絶えになりながら周囲を確認するが、敵の姿は残っていない。スペルフィールドは静寂に包まれていた。

 やった、のか……?


「ナイスー!」

「手こずらせてくれたわ……」


 ドロシーさんとメアリさんが口々に言う。俺の隣でウイカも静かに頷いた。

 三人はそれぞれ、リントヴルムから放たれた光の粒を体に取り込んでいく。これで魔力の回収も完了したということだろう。

 勝った。いざ終わってみると、なんだか実感が湧かない気もする。


「やるじゃーん、荒城くん!」

「は、はあ……どうも」

「素人にトドメを取られるとか、最悪」


 激励してくれるドロシーさんと、ギロりと睨みを利かせるメアリさん。

 対照的な二人だが、どちらも俺が此処まで来るのに必要な助言をくれた人たちだ。


「二人とも、ありがとうございました」


 感謝を述べ、頭を下げる。


「はあ? 気色悪いからやめて。帰る!」

「ふふーん。メアちゃんは素直じゃないなー」


 愚痴りながらメアリさんはゲートを開き、早々にスペルフィールドから出て行ってしまった。

 それをニヤニヤしながら見ていたドロシーさんも、手を振って答える。


「魔力を回収したとはいえ、あたしも怪我の治療があるから先に帰るね。あとはお若い人だけでごゆっくりー」


 敵に咬まれた腕を指し示しながら、彼女もゲートの向こうへと消えていく。

 色々あったが、これで万事解決だ。俺たちのわだかまりも少しは解消された……はず。

 二人きりになったところで、俺は気になったことを一つ聞く。


「ウイカ、なんで急にイサト呼びになったんだ?」

「……分からない。なんとなく」


 本人としても明確な理由はないらしい。

 別に構わないが、突然だったので呼ばれた瞬間は面食らった。


「でも」

「でも?」

「イサト呼びの方が特別な感じがして、好き」


 彼女は少しだけ表情を緩ませた。

 その素直な笑顔と言葉に動揺して、俺は目を背ける。


「す、好きとかすぐ言うな!」

「? なんで?」

「なんでもだ!」


 俺はウイカを(たしな)めるように言う。彼女は釈然としない顔をしながらも一応頷き、スペルフィールドから脱出するためのゲートを開こうとした。

 そこで彼女は思い出したように言う。


「今から学校、行く?」


 なるほど。大遅刻ではあるが、午後の授業ぐらいは受けられるかもしれない。

 俺は少しだけ考えたが、自分の疲労感を加味しながら答える。


「大仕事を終えたんだし、せっかくなら飯でも行こうぜ」


 その言葉に、ウイカは目を輝かせた。


「うん」

「ウイカ、本当に飯好きだな」

「好き。……あっ。好きじゃ、いけない?」

「いやご飯の話は別にいいよ!」

「? なんで?」

「なんでもだ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ