『夜空のダイヤと、アーサー先輩の銀河講義』
:『夜空のダイヤと、アーサー先輩の銀河講義』
### 1. 司令官、観測拠点を設営
「こたぅ、みて。あれが『なつのだいさんかく』なんだって。秋になっても、まだみえるんだよ」
ハル君は、方位磁石と星座早見盤を手に、庭に広げたレジャーシートの上に寝転びました。三年生になり、方位の概念を完璧にマスターしたハル君の言葉には、確かな知性が宿っています。
「局長、天候条件:快晴。視界、無限大。これより星間座標の特定を開始します。チビ殿、ハル君の星座早見盤を『猫パンチ』で回転させるのはお控えください。座標が数光年ズレてしまいます!」
チビが、カチカチと回る早見盤を面白い獲物だと思い、暗闇の中で瞳を大きく見開いて狙っています。
### 2. アーサー先輩の「銀河の番人」
ハル君の隣には、アーサー先輩が静かに、そして威厳を持って横たわっていました。
「ハル。星を見るということは、遠い過去の光を浴びることだ。お前が見ているあの輝きは、何年も、何十年も旅をしてここに届いているのだよ」
アーサー先輩が夜空を見上げる横顔は、まるで古代の天文学者のようです。
生垣の向こうでは、ルークも同じ空を仰いでいました。
「コタロウ、聞け! あの星々の向こうにも、きっと我らのような警備隊がいるに違いない! ハル君、もっと遠くを見ろ! お前の冒険は、この大地だけでは収まらないのだから!」
### 3. 事件:流れた「一瞬の奇跡」
「……あ! こたぅ、いま、光った!」
ハル君が指差した先を、一筋の光が音もなく横切りました。流れ星です。
「ギィーッ! 未確認飛行物体通過! 指揮官、ただちに願い事の入力を! 間に合いますか!?」
ソラが柿の木の枝から、羽をバタつかせてエールを送りました。
ハル君は慌てて目を閉じ、僕の首元の毛をぎゅっと握りしめました。
(ハル、何を願ったんだ? おやつがいっぱい欲しいとかか? ……いや、お前のことだ。きっともっと「優しい願い」なんだろうな)
### 4. 三年生の「発見」
ハル君はノートに、三角形の星の並びと、今日一番輝いていた星の名前を書き込みました。
『きょうは、あーさーと一緒に星をみた。星は遠いけど、となりにみんながいるから、夜の庭は全然さみしくない。』
ハル君は僕の頭をなでながら、ポツリと言いました。
「ねぇ、こたぅ。ぼくたちが大人になっても、あの星はあそこにいてくれるかな?」
(ああ。星も、僕も、ずっとお前を見守っているよ。お前がどんなに大きくなっても、この場所を忘れないように、光り続けているからな)
### 5. 陽だまりの警備保障、天体観測任務・完了
「ハル君、そろそろお家に入りましょう。ココアが沸いたわよ」
サチコさんの呼ぶ声がして、僕たちの秘密の観測会は幕を閉じました。
陽だまりの警備保障、星空防衛任務・名誉終了。
ハル君の瞳には、さっきまで見ていた星の輝きがそのまま映っているようで、部屋に戻った後もずっとキラキラとしていました。
八巡目の秋、深まる夜。
僕たちの首元に忍ばせた「三代目のひまわりの種」は、冷たい夜風の中でも、ハル君と僕の体温に包まれて、温かく春を待ち続けているのでした。
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