『第一走者の重圧と、庭の「爆走」ライン』
『第一走者の重圧と、庭の「爆走」ライン』
### 1. 指揮官、スタートダッシュの改良
「こたぅ、みて。……『位置について』のとき、こうやって指をたてるんだよ」
ハル君が庭の地面に手をつき、真剣な顔でクラウチングスタートの構えをとっています。三年生になり、体育の授業もより本格的になってきました。
「局長、指揮官の初動における反応速度を計測中。……あ、ハル君。チビ殿がスターターピストルの代わりに『パンッ!』と手を叩く真似をしていますが、惑わされてはいけません。集中です!」
チビが、ハル君の目の前でチョイチョイと前足を動かし、集中力を乱す「メンタル訓練」を(勝手に)担当しています。
### 2. ルークの「爆走」エスコート
生垣の向こうでは、ルークがすでに全力疾走の構えです。
「コタロウ、聞け! 風を追い越すのではない、風を切り裂くのだ! ハル君、私のこの白い残像についてこい! 25メートル、一気に加速するぞ! ワォォォォン!」
ハル君が走り出すと、ルークもフェンス沿いを爆走します。
「ワン! ワン!(腕を振れ! 前を見ろ!)」
その迫力に、ハル君の足も自然と速まります。
### 3. 事件:コーナーの「バトン紛失」
特訓中、ハル君がコーナーでスピードを上げすぎて、手に持っていたバトン(代わりの木の棒)をポロッと落としてしまいました。
「あ……! 失敗しちゃった。本番で落としたら、みんなに迷惑かけちゃう……」
ハル君が立ち止まり、不安そうな顔で棒を見つめます。
「ギィーッ! 遺失物確認! 局長、速やかに回収を!」
ソラが空から急降下するように合図を送りました。
僕は、落ちた棒をそっとくわえて、ハル君の手に押し戻しました。
(ハル、大丈夫。落としたら拾えばいい。僕がここで何度でも拾ってやるから、お前は全力でコーナーを駆け抜けることだけ考えろ)
僕はハル君の横にぴったりと寄り添い、鼻先で彼の背中を「グイッ」と押しました。
### 4. アーサー先輩の「不動の心」講義
練習の合間、アーサー先輩がハル君の隣に座りました。
「ハル。速く走ることも大事だが、一番大事なのは、次の走者が受け取りやすいように『心を込めて』バトンを渡すことだ」
ハル君は、自分の手にある木の棒をぎゅっと握りしめました。
「……うん。ぼく、みんなの気持ち、ちゃんとつなぐよ」
### 5. 陽だまりの警備保障、運動会当日・出動
運動会当日。ピストルの音とともに、ハル君は弾かれたように飛び出しました。
練習通り、ルークとの並走を思い出しながらコーナーを駆け抜け、次のお友達に完璧なバトンパス。
「こたぅ! ぼく、バトン落とさなかったよ! 一番で渡せたよ!」
帰ってきたハル君の顔には、やり遂げた男の誇らしさが溢れていました。
陽だまりの警備保障、運動会・最優先警備任務、大成功。
ハル君が繋いだのは、ただのバトンではなく、クラスのみんなと、そして僕たちと一緒に作った「信頼」という名の絆でした。
八巡目の秋。
金木犀の香りが漂う庭で、ハル君と僕たちは、勝利の余韻に浸りながら、次なる「文化の秋」の任務へと目を向けるのでした。
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