『三代目の背比べと、黄金色の境界線』
『三代目の背比べと、黄金色の境界線』
### 1. 指揮官、計測デバイス(メジャー)を展開
「こたぅ、動かないで。……ひまわりさんと、どっちが大きいか比べるんだから」
ハル君が黄色いメジャーを手に、真剣な眼差しで僕の横に立ちました。三年生になって算数で「長い長さ」を習ったハル君は、目盛りを読む手つきもどこか誇らしげです。
「局長、静止目標と移動目標(局長)の垂直長を比較中。……あ、ハル君。測定中にチビ殿がメジャーの先端にジャンプしました。これは『外部要因による誤差』として記録すべきかと」
チビが、伸び縮みするメジャーを新しいおもちゃだと思い込み、全力でハンティングを開始しています。
### 2. ルークの「威風堂々」たる申告
生垣の向こうでは、ルークが後脚で立ち上がり、精一杯背を伸ばしていました。
「コタロウ、見ろ! 私のこのダイナミックな体躯を! ハル君、私の身長は『雲に届くほど』と記してくれて構わないぞ。……なに、目盛りが足りない? それはメジャーの方が、私のスケールに追いついていないだけだ!」
アーサー先輩は、庭の柱の影で涼みながら、静かにハル君を見守ります。
「ハル。高さだけが成長ではない。地面の下で、どれだけ深く根を張っているか。それもいつか、お前のノートに書きなさい」
### 3. 事件:逆転の「三代目」
「……あ! ひまわりさん、ぼくより高い!」
ハル君が驚きの声を上げました。数日前までは自分の方が大きかったはずなのに、三代目のひまわりは、たった数日の猛暑をエネルギーに変えて、ハル君の頭をひょいと越えていたのです。
「ギィーッ! 目標、指揮官の高度を突破! 自然界の急速成長を感知!」
ソラがひまわりの一番高い葉っぱに止まり、まるで勝利のファンファーレのように鳴きました。
ハル君は少し悔しそうでしたが、すぐにニッコリ笑ってノートに書き込みました。
『ひまわりは、ぼくより速く成長する。でも、ぼくはひまわりを支える支柱を立ててあげられる。そこが、三年生のすごいところだ。』
### 4. 成長の「足跡」
ハル君はメジャーを片付け、僕の背中に寄りかかりました。
「こたぅ。ぼく、ひまわりには負けちゃったけど……こたぅをなでる手は、去年より大きくなったでしょ?」
(ああ。お前の手は、もう僕の背中全体を一度に包み込めるくらいに頼もしくなった。そして、その手の温もりは、出会った頃からずっと変わらない「優しさ」のままだよ)
僕は、ハル君の小さな、でも逞しくなった手のひらを、自分の大きな肉球でそっと抑えました。
### 5. 陽だまりの警備保障、夏季定点観測・完了
「あしたは、ユウくんの身長もはかってあげようっと。……おにいちゃんだからね!」
ハル君はそう言って、三代目のひまわりにたっぷりと水をあげました。
陽だまりの警備保障、高度比較任務・無事終了。
ハル君のノートには、ひまわり、僕、そして自分自身の成長曲線が、一本の真っ直ぐな光の道のように描かれていました。
八巡目の夏休み、本番。
庭には黄金色の大きな花が咲き誇り、その下でハル君と僕たちは、次の「もっと高い場所」を目指して、静かに、でも力強く、夏の風を吸い込むのでした。
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