『白い警備員の誕生と、凍った路地の連帯』
『白い警備員の誕生と、凍った路地の連帯』
### 1. 司令官、防寒装備完了
「こたぅ、おまたせ! ぼく、じゅんびできたよ!」
玄関から飛び出してきたハル君は、厚手のダウンに毛糸の帽子、そしてお揃いの青い長靴を履いていました。手には、パパから借りた本格的なスコップ。
「局長、指揮官の装備は耐寒仕様レベル5です。これより、庭の『視界確保(雪かき)』および『増員計画』を開始します。足元のスリップに厳重警戒を!」
チビが、雪に足を取られて「ひゃっ」となりながらも、ハル君の先導を志願します。
### 2. ルークの「彫刻家」魂
生垣の向こうでは、ルークが雪を鼻先で転がして、大きな塊を作っていました。
「コタロウ、見ろ! この雪は空からの贈り物だ! ハル君、ここに我々の分身を作るのだ。私のように気高く、そして溶けないほど熱い魂を持った『雪の警備員』を!」
アーサー先輩は、雪の積もっていない軒下でどっしりと座り、その様子を見守っています。
「ハル。形を作るのは心だ。お前が信じる『強さ』を雪に込めてごらん」
### 3. 事件:溶けかけた「新人警備員」
ハル君は一生懸命、僕にそっくりな雪だるまを作りました。耳は落ち葉、鼻は小さな石ころ。でも、少し気温が上がってくると、雪だるまの頭が「とろん」と傾き始めてしまいました。
「あ……。こたぅ、こわれちゃう……! せっかく、いっしょにパトロールするのに」
ハル君が泣きそうな顔で、崩れそうな雪だるまを支えます。
「ギィーッ! 構造体にクラック発生! 補強材を投入せよ!」
ソラが屋根の雪をバサバサと落として、新しい雪を供給します。
僕は、ハル君の隣に並び、わざと雪だるまの反対側に寄り添って、自分の体温で……ではなく、自分の体で「支え」になりました。
(ハル、大丈夫だ。僕が隣にいる。雪だるまが溶けても、僕はお前の隣から消えたりしないぞ)
### 4. 氷の「肉球」の誓い
ハル君は、僕の温もりを感じて安心したのか、雪だるまの首に自分の古いマフラーを巻いてあげました。
「……よし。これで、寒くないね。名前は『ユキタロウ』だよ」
そして、ハル君は雪だるまの手のあたりに、自分の手袋を外してそっと触れました。
「ユキタロウ、ぼくが学校にいっているあいだ、こたぅと一緒にお庭を守ってね」
それは、二年生になったハル君が、自分がいなくても庭が平和であるようにと願う、自立への小さな誓いでもありました。
### 5. 陽だまりの警備保障、雪中特別警戒・完了
サチコさんが呼ぶ声が聞こえます。「ハルくん、温かいおしるこができたわよ!」
ハル君は僕の耳元で「あしたも、あそぼうね」と囁き、家の中へ駆けていきました。
陽だまりの警備保障、新人「ユキタロウ」着任。
夜、月明かりに照らされた庭で、雪の僕と本物の僕は、並んで門の方を見つめていました。
七巡目の冬。
雪の下では、あの「ひまわりの種」たちが、ハル君が三年生になる春を夢見て、静かに息を潜めているのでした。
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