『冬の年賀状と、五つの肉球スタンプ』
『冬の年賀状と、五つの肉球スタンプ』
### 1. 司令官、デザインに悩む
「こたぅ、トラにもだすし、ユウくんにもだすんだよ。……でも、なにか足りないなぁ」
ハル君が机の上で、色鉛筆を握りしめたまま考え込んでいます。描かれているのは、庭のひまわりと、僕たちのイラスト。でも、ハル君はもっと「僕たちらしい」印を付けたいようです。
「局長、指揮官は『本物の証』を求めておられます。我々のID、つまり肉球による捺印を提案します。ただし、インクの選定は慎重に!」
チビが、ハル君の用意した水性絵具のパレットをチョイチョイと叩いて、立候補しました。
### 2. ルークの「ダイナミック・スタンプ」
生垣の向こうでは、ルークが雪を待ちわびるように足踏みをしていました。
「コタロウ、聞け! 私のこの立派な肉球は、一枚のハガキを埋め尽くすほどのインパクトがあるぞ! ハル君、私のサイン(足跡)で、新年の路地を圧倒しようではないか!」
アーサー先輩は、ハル君の隣で静かに右前足を差し出しました。
「ハル。形は違えど、僕たちの心は一つだ。この足跡を、お前の言葉の横に添えなさい」
### 3. 事件:チビの「カラフル・パニック」
ハル君がチビの足に赤い絵具をちょんと付けて、ハガキに押そうとしたその時です。
「ギィーッ! 通信妨害!……いや、ただの脱走だ!」
ソラがカーテンレールの上で叫びました。
チビがくすぐったさに驚いて、ハル君の手をすり抜け、リビングの床を駆け抜けてしまったのです。床には点々と続く、小さな赤い猫の足跡。
「あわわ……! チビ、まってぇ!」
ハル君が慌てて追いかけますが、僕はその前にチビの進路を優しく塞ぎました。
(チビ、落ち着け。ハルを困らせちゃダメだ。……ほら、ハル。床の足跡は後で僕が(サチコさんに怒られる前に)隠す……いや、拭くのを手伝うから、今はハガキを完成させよう)
### 4. 世界に一枚の「陽だまり通信」
ハル君は、僕、チビ、ルーク、アーサー先輩の足を順番に借りて、慎重にスタンプを押していきました。
* **アーサー**:どっしりと力強い、リーダーの印。
* **ルーク**:ちょっとはみ出そうなくらい大きな、元気の印。
* **チビ**:小さくて、ちょっぴりズレた、お茶目な印。
* **コタロウ**:ハル君の文字にそっと寄り添う、相棒の印。
最後にハル君が自分の指で「指印」を押し、ソラの羽根を一枚添えたイラストを描いて、完成です。
「……できた。これ、みんな、よろこんでくれるかな?」
### 5. 陽だまりの警備保障、越年準備任務・完了
ポストまで、ハル君と僕で歩いて行きました。カタン、とハガキが吸い込まれる音。それは、僕たちの「楽しい」を遠くの誰かへ届ける合図のようでした。
「こたぅ、……らいねんも、いいこと、いっぱいあるね」
陽だまりの警備保障、通信任務・無事完遂。
帰りの道、ハル君の手は僕の首元の毛の中に深く埋められ、温め合っていました。
七巡目の冬。
空からは、ハル君が待ち望んでいた「白いお便り(初雪)」が、静かに舞い降りてきました。
庭のひまわりの種が土の中で眠るように、僕たちの思い出もまた、雪の下で温かく、次の春を待っているのでした。
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