『一駅の冒険と、ポケットの中の「最強通信機」』
『一駅の冒険と、ポケットの中の「最強通信機」』
### 1. 司令官、出発前の最終点検
「こたぅ、……ぼく、ひとりで行けるよ。……もう二年生だもん」
玄関で、ハル君が小さなリュックを背負い、何度も中身を確認しています。切符入れ、ハンカチ、そして……僕の抜け毛を一房入れた小さなお守り袋。
「局長、指揮官の表情に微かな緊張を確認。しかし、視線は真っ直ぐ出口(門)を向いています。これより、駅までの隠密護衛ルートを開始します」
チビが、ハル君の靴の紐が解けていないか、念入りに鼻先で点検しました。
### 2. ルークの「プラットフォーム」激励
生垣の向こうでは、ルークが駅の方角を向いて、まるで電車の警笛のような声を上げました。
「コタロウ、聞け! 電車とは、鉄のクジラだ。ハル君、そのクジラの腹に飲み込まれても、魂まで食われるなよ! 私のこの白い毛並みが、線路の向こうまで光の道標となるだろう!」
アーサー先輩は、門の外までハル君を見送りました。
「ハル。迷ったら、自分の心の中の『庭』を思い出すんだ。そこには、いつでも僕たちがいる」
### 3. 事件:自動改札という「関門」
駅の改札口。ハル君は切符を握りしめ、大きな機械の前に立ちました。サチコさんは「ここで見送るわね」と手を振ります。
一瞬、ハル君の足が止まりました。吸い込まれる切符、開くゲート。その向こう側は、僕たちの知らない「本当の一人きり」の世界です。
「ギィーッ! 目標、改札前にて停滞! 局長、遠隔支援を!」
ソラが駅舎の屋根から、ハル君だけに聞こえるような短い鳴き声でエールを送りました。
僕は門のところで立ち上がり、ハル君がいるはずの駅の方角へ向かって、精一杯の「ワン!」を届けました。
(ハル! 行け! お前の後ろには、この庭の全部がついているんだぞ!)
### 4. 窓越しの「小さな敬礼」
ガタン、ゴトン。
遠くで電車の走る音が聞こえてきました。
しばらくして、サチコさんのスマホに「着いたよ」という電話が入りました。おばあちゃんに迎えられたハル君は、電話の向こうで少し誇らしげに、でも少し安心したような声で言いました。
「……こたぅ、きこえる? ぼく、クジラのなか、だいじょうぶだったよ!」
ハル君は、電車の窓から見える景色の中に、僕たちの「陽だまり」を探していたそうです。
### 5. 陽だまりの警備保障、単独行軍任務・名誉完遂
夕方、おばあちゃんに送られて帰ってきたハル君。その顔は、朝よりもずっと大人びて見えました。
ハル君はリュックから、お土産の「犬用クッキー」を取り出して、僕にくれました。
「こたぅ、これ、がんばったご褒美。……半分こ、しようね」
陽だまりの警備保障、遠距離護衛任務・完了。
二年生の夏休みは、こうして「自立」という名の大きな一歩から始まりました。
七巡目の夏が、本格的に始まろうとしています。
二代目のひまわりが、ハル君の帰還を祝うように、夕日に向かって大きく胸を張っていました。
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