『黄金の卒業と、黒い盾の真実』
『黄金の卒業と、黒い盾の真実』
### 1. ランドセルの「開門」儀式
「こたぅ、……とるよ。……いい?」
ハル君が少し緊張した面持ちで、ランドセルを僕の前に置きました。入学してから一年間、雨の日も風の日もハル君の背中を守り続けた、あの黄色い交通安全カバー。
「局長、一年間にわたる外部装甲の摩耗テスト、無事終了。中身の損傷はゼロです。これより、真の姿を公開します」
チビが、カバーの端を器用に前足で引っ掛け、ハル君のお手伝いを始めました。
### 2. ルークの「ブラック・アーマー」称賛
ペリペリ……と静かな音を立てて、黄色い布が外されました。
そこから現れたのは、一年間守られていたために、新品の時と変わらない深い輝きを放つ「黒いランドセル」でした。
生垣の向こうで、ルークが感極まったように身震いしました。
「コタロウ、見ろ! あの圧倒的な黒の重厚感! 黄色い殻を脱ぎ捨て、ハル君は今、真の『黒騎士』へと昇格したのだ! 二年生……それはもはや、この路地の支配者といっても過言ではない!」
アーサー先輩も、ゆっくりと尻尾を振りました。
「いい艶だ、ハル。その黒さは、お前が一年間、休まず学校へ通ったという誇りの色だ」
### 3. 事件:一年間の「忘れ物」
カバーを外した時、隙間から一枚の小さな紙がヒラリと落ちました。
それは、一年生になったばかりの頃、ハル君がうまく書けなくてクシャクシャにしてしまった「はじめてのなまえ」の練習紙でした。
「ギィーッ! 過去の通信記録を発見! 指揮官の原点を回収せよ!」
ソラが屋根の上から鋭く合図します。
僕はその紙を鼻先でツンと突きました。
(ハル、見てごらん。こんなに震えていた字が、今では九九だって書けるようになったんだぞ)
ハル君はその紙を拾い上げ、照れくさそうに笑いました。
「……ぼく、こんなに、へたっぴだったんだね。……こたぅ、いっしょにいてくれたから、じょうずになったんだよ」
### 4. 継承される「お兄ちゃん」の眼差し
ハル君は、外した黄色いカバーを丁寧に畳みました。
「これ、つぎの、いちねんせい……だれかが、つかうかな?」
自分がいらなくなったものを捨てるのではなく、誰かの役に立てたいと考える心。ハル君の心の中には、この庭のひまわりのように、大きくて温かい「優しさの種」がぎっしりと詰まっていました。
ハル君は、黒くなったランドセルのサイドに、あの「松ぼっくりの勲章」を付け直しました。黄色い背景がなくなったことで、茶色の松ぼっくりはより一層、渋い輝きを放っています。
### 5. 陽だまりの警備保障、二年生への進軍開始
「こたぅ、あしたからは、『にねんせい』だよ。……ぼく、いちねんせいのこ、たすけてあげるんだ」
陽だまりの警備保障、一年生全任務・完遂。
ハル君は、黒いランドセルを背負って庭を一周しました。その足取りは、一年前のあどけなさは消え、一歩一歩が地面をしっかり踏みしめる「守護者」の音でした。
七巡目の春。
桜の蕾が、ハル君の進級を祝うように一斉に膨らんでいます。
僕たちの警備保障は、新しい「一年生」という名の小さな冒険者たちを迎え入れる準備を整え、最高に誇らしい気持ちで、新しい朝を待つのでした。
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