『冬の通知表と、秘密の「たいへんよくできました」』
『冬の通知表と、秘密の「たいへんよくできました」』
### 1. 司令官の「戦果報告」
「こたぅ、みて……! せんせいが、くれたの!」
ランドセルを放り出すのも忘れて、ハル君が封筒を掲げて走ってきました。一年生、二学期の通知表。そこには、算数や国語の評価と一緒に、先生からの温かい言葉が添えられていました。
「局長、スキャン完了。生活態度の欄に『お友だちに優しく、責任感がある』との記述あり。これは我々の教育方針……いえ、警備マニュアルが正しかった証拠です」
チビが、机の上に広げられた通知表の角を、まるで承認印を押すようにチョイチョイと触れました。
### 3. アーサー先輩の「最終検閲」
ハル君は、通知表を持ってアーサー先輩の前で正座しました。
「あーさー、ぼく、にじゅうまる、いっぱいあったよ。……ピアニカも、がんばったんだよ」
アーサー先輩は、ゆっくりと通知表に鼻を寄せ、それからハル君の手を一度だけ優しく舐めました。
「よくやった、ハル。文字の読み書きも、数字の計算も、全てはこの庭の平和を守るための知恵となる。お前は立派な守護者になったな」
生垣の向こうでは、ルークが雪を待つ空を見上げて鼻を鳴らしました。
「コタロウ、聞け。通知表に書けないハル君の功績……例えば、私のブラッシングを手伝ったことや、チビとのお昼寝任務については、私が天の星々に報告しておいた!」
### 3. 事件:消えた「松ぼっくりの勲章」
お祝いの夕食の準備中、ハル君が突然青い顔をして庭に飛び出しました。
「ない! ……こたぅ、ないんだよ! ぼくの、おまもりが!」
ランドセルの横に付けていた、あの「五つ目の松ぼっくり」が紐から外れて消えていました。一年間、ずっとハル君の背中を守ってきた絆の証です。
「ギィーッ! 紛失物確認! 最終目撃地点は玄関、または通学路のラスト100メートル! 全員、捜索開始!」
ソラの鋭い号令が響きました。
### 4. 継承される「探知犬」の誇り
僕は鼻を地面に押し付け、ハル君が今日歩いた軌跡を辿りました。
(焦るな、ハル。お前が一生懸命歩いてきた道に、落とし物なんてあるはずがない……。あった!)
雪が降り始めた庭の隅、ハル君がさっき「通知表」を見せに走ってきた時に、新しい首輪の金具に引っかかって落ちたようです。
僕はその松ぼっくりを優しくくわえ、震えているハル君の足元に置きました。
「……あ、あった……! こたぅ、ありがとう……!」
ハル君は僕を抱きしめて泣き笑いしました。その涙は、一年前よりもずっと、温かくて力強い味がしました。
### 5. 陽だまりの「越年」パトロール
サチコさんが、ハル君と僕に新しい毛布を出してくれました。
「ハルくん、一年生もあと少しね。コタロウも、ずっと一緒にいてくれてありがとう」
陽だまりの警備保障、二学期任務・完遂。
ハル君が眠りについた後、僕は窓の外で降り始めた初雪を見つめていました。
ひまわりの種が土の中で眠り、ハル君が「お兄ちゃん」へと脱皮していくこの季節。
六度目の冬。
僕の首元の新しい首輪と、ハル君の手に握られた松ぼっくり。
この二つがある限り、どんなに寒い冬が来ても、この庭は世界で一番温かい場所であり続けるのです。
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