『ひまわりの収穫祭と、小さな「命の貯金箱」』
『ひまわりの収穫祭と、小さな「命の貯金箱」』
### 1. 巨大な「顔」との対面
「こたぅ、みて。……おもたいよ、これ」
ハル君が、自分よりも背が高くなったひまわりの茎を一生懸命に支えています。夏の間、太陽を追いかけ続けた花は、いまや何百もの「希望(種)」をその顔に蓄えていました。
「局長、目標物の重量が想定を上回っています。ハル君の握力だけでは保持が困難と判断。直ちに後方支援に入ります」
チビが、ハル君がよろけないように足首のあたりで体を寄せて「突っ張り棒」の役割を果たしています。
### 2. ルークの「脱穀」実演
生垣の向こうでは、ルークがワクワクした顔で尻尾を振っていました。
「コタロウ、聞け。種の収穫は、いわば宝探しだ。ハル君、その真ん中の黒いのを指で押してみたまえ。……ほうら、ポロリと取れた! それが未来の太陽の欠片だ!」
アーサー先輩は、サチコさんが広げた新聞紙の横で、落ち着いた様子で座っています。
「ハル。一つ一つの種に、今年一年の『楽しい』が詰まっている。大切に扱うのだぞ」
### 3. 事件:こぼれ落ちた「一粒」
ハル君が指先で種をポロポロと外していると、元気な一粒が「ピョン!」と跳ねて、庭の茂みの中に消えてしまいました。
「あ……! まって、にげちゃだめ!」
ハル君が慌てて追いかけようとしましたが、暗い茂みの中は見えません。
「ギィーッ! 目標、椿の根元に沈下! 捜索隊、直ちに展開せよ!」
ソラが上空から正確な位置を鳴き声で示します。
僕は鼻先をクンクンと動かし、土と枯れ葉の匂いの中から、その一粒を特定しました。そっと前足で土を払い、鼻先でハル君の方へ押し出しました。
(ハル、見つけたぞ。来年、ここで勝手に咲いちゃうかもしれないけど、今は回収だな)
### 4. 継承される「封筒の秘密」
収穫した種は、ハル君が学校で教わった通り、手作りの封筒に入れられました。
封筒の表には、ハル君の拙いけれど一生懸命な字でこう書かれていました。
**『らいねんの おにいちゃんへ。 こたろうと いっしょに さかせてね』**
ハル君は、その封筒を僕の鼻先に近づけました。
「こたぅ、これ、おまもり。……らいねんも、ずっと、いっしょだよ」
ハル君は、自分が「来年の自分」に宛てて手紙を書くほど、未来を見据える強さを持ったのです。それは、一年前の彼にはできなかったことでした。
### 5. 陽だまりの「越冬」準備完了
サチコさんが、収穫を終えたハル君と僕に温かいココア(と、僕には特別なおやつ)を持ってきてくれました。
ひまわりの茎がなくなった庭は少し寂しくなったけれど、ハル君の机の引き出しの中には、ぎっしりと詰まった「未来」が眠っています。
陽だまりの警備保障、種子保存任務・名誉完遂。
僕は、ハル君の足元で丸くなりながら、冷たくなり始めた秋の風を聴いていました。
六巡目の秋が更けていきます。
ひまわりが眠りについた庭で、僕たちの物語は、また新しい春を夢見ながら、静かに温かく続いていくのでした。
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