『夜の庭の天体観測と、思い出のスクラップ』
『夜の庭の天体観測と、思い出のスクラップ』
### 1. 観察員ハル主任の「夜なべ」
「こたぅ、しずかに……。いま、おほしさま、かぞえてるの」
ハル君は庭にレジャーシートを広げ、僕をクッション代わりにして寝そべりました。手元には、もう半分以上埋まった夏休みのしおり。
「局長、指揮官の視線は北極星にロックオンされています。ただ、時折飛んでくる蚊の攻撃により、観測精度が乱れる恐れがあります」
チビが、ハル君の耳元を狙う蚊を「ニャッ!」と一撃で撃退しながら護衛に当たります。
### 2. ルークの「宇宙通信」
生垣の向こうでは、ルークが銀色の毛並みを月光に輝かせて座っていました。
「コタロウ、聞け。サモエド族の間では、あの星々は太古の犬たちが打ち上げた『光る骨』だという伝説がある。ハル君が描く図譜に、私のこの神々しいプロファイル(横顔)も加えておくよう進言してくれ」
アーサー先輩は、縁側からハル君の様子を静かに眺めていました。
「ハル。星は遠くにあるけれど、お前のノートに描かれた瞬間、それはお前だけの宝物になるんだよ」
### 3. 事件:流星と「秘密の願い事」
「あ……! いま、ピカッてした!」
ハル君が指差した先を、僕も鼻先で追いました。夜空を切り裂く一筋の流れ星。
「ギィーッ! ターゲット捕捉! 速度マッハ20オーバー! 願い事の入力、急げ!」
屋根の上のソラが、羽を広げて興奮気味に鳴きました。
ハル君は慌てて手を合わせ、ぎゅっと目を閉じました。何を願ったのかは教えてくれませんでしたが、その後、彼は僕の首元を抱きしめながら、ポツリと言いました。
「……こたぅが、ずっと、おうちに、いられますように」
(ハル、僕はどこにも行かないよ。お前が大人になって、星よりも遠い場所に行く日が来ても、僕はこの庭でお前の帰りを待っているからな)
### 4. 自由研究の「金メダル」
夏休み最終日。ハル君の観察日記には、星だけでなく、庭で見つけた「セミの抜け殻」や、「コタロウの肉球の形」、そして「ルークからもらった白い毛」が綺麗に並んでいました。
「……できた。これ、せんせいに、みせるんだ」
サチコさんがその日記を見て、「あら、コタロウがいっぱいね」と笑いました。ハル君にとっての夏休みは、そのまま「僕たちと一緒に過ごした時間」の記録だったのです。
### 5. 陽だまりの「二学期」進出任務
翌朝、ハル君は少しだけ重くなったランドセルを背負い、門の前に立ちました。
「こたぅ、いってきます! ……また、よるに、おはなししようね」
陽だまりの警備保障、夏季全任務・名誉完遂。
ハル君が角を曲がるまで、僕は新しい首輪をシャンと鳴らし、一番かっこいい姿勢で見送りました。
六巡目の秋が、風に乗ってやってきます。
ひまわりの種が黒く熟す頃、ハル君はまた一つ、学校で新しい「勇気」を鞄に詰めて帰ってくることでしょう。
---




