『夜祭の提灯と、迷子にならない「繋いだ手」』
『夜祭の提灯と、迷子にならない「繋いだ手」』
### 1. 浴衣姿の特別編成
「こたぅ、みて! おそろいだよ!」
サチコさんが用意してくれたのは、ハル君の紺色の浴衣と、僕の首元に巻くお揃いのバンダナ。ハル君は慣れない帯に四苦八苦しながらも、鏡の前でビシッとポーズを決めました。
「局長、今夜の視認性は低下しますが、ハル君の帯の結び目は私がしっかり固定(甘噛み)しておきました。準備万端です」
チビが、ハル君の足元のサンダルを「出発前の安全確認」として丁寧にチェックしています。
### 2. ルークの「遠吠え」エスコート
生垣の向こうでは、ルークが祭りのお囃子の音に耳をそばだてていました。
「コタロウ、聞け。祭りの会場は音と匂いの迷宮だ。もしハル君が方向を見失ったら、私がこの『サモエド・サイレン』で北極星のごとく導いてやろう。……いいな、イカ焼きの匂いに惑わされるなよ」
アーサー先輩は、門の前で僕たちの出発を静かに見送ります。
「ハル。賑やかな場所でも、コタロウのリードを離すな。それがお前たちの、一番強い絆なのだから」
### 3. 事件:夜店に隠れた「小さな不安」
神社の境内は、提灯の明かりと人混みで熱気に包まれていました。ハル君は初めて見る射的や綿菓子に目を輝かせていましたが、突然打ち上がった大きな太鼓の音に、びくっと肩を震わせました。
(大丈夫だ、ハル。僕がここにいる)
僕はハル君の足元にぴたりと寄り添い、歩幅を合わせて彼のふくらはぎに鼻を寄せました。
「ギィーッ! 提灯の影に未確認飛行物体……いや、綿菓子の袋を確認! 指揮官、視界を確保せよ!」
上空のソラは見えませんが、木々の間を抜ける風の音が、僕たちを応援してくれているようでした。
### 4. 繋いだ「リード」と「手」
「……こたぅ、て、つなご?」
ハル君は、リードを握る手にぐっと力を込め、もう片方の手で僕の頭をそっと撫でました。
人混みの中で、ハル君は迷子にならないようにではなく、「僕が怖がらないように」守ろうとしてくれているのが伝わってきました。
ハル君は、自分のお小遣いで買った小さな「光るおもちゃ」を僕の首輪に付けてくれました。
「これ、こたぅのライト。……これで、よるも、まよわないね」
その時、夜空に大きな花火が上がりました。ドーンという音に驚くハル君を、僕はどっしりと踏ん張って支えました。見上げた空には、ハル君の瞳の中にたくさんの光のひまわりが咲いていました。
### 5. 陽だまりの「凱旋」パトロール完了
帰り道、ハル君は少し眠そうにしながらも、僕と一緒に夜の路地を歩きました。家が見えると、門の前で待っていたルークとアーサー先輩の影が見えて、ハル君はホッとしたように笑いました。
「こたぅ、……おまつり、たのしかったね。……また、いこうね」
陽だまりの警備保障、夜間祭り警戒任務・無事完了。
ハル君が浴衣を脱いで眠りについた後、僕は首につけてもらった「光るおもちゃ」を大切に枕元に置きました。
六巡目の夏。
一年生になったハル君は、賑やかな世界の中でも、大切な「絆の引き方」をしっかりと学んだようです。
庭のひまわりが月明かりに照らされ、明日の暑さに備えて静かに眠っていました。
---




