『プールの試練と、庭の「潜水艦」訓練』
『プールの試練と、庭の「潜水艦」訓練』
### 1. 司令官の憂鬱
「こたぅ、……あした、ぷーるなんだよ。……おみず、ぱしゃ、こわいなぁ」
ハル君が、買ってもらったばかりの青い水着を手に、庭のベンチでため息をついています。
「局長、これは緊急事態です。指揮官の士気が著しく低下しています。ただちに『水遊び=楽しい』という記憶の上書きが必要です!」
チビが、空のバケツをチョイチョイと叩いて訓練の開始を促します。
### 2. ルークの「ダイビング」お手本
生垣の向こうでは、ルークが大きなタライに頭を突っ込んで、ブクブクと泡を立てていました。
「コタロウ、見ろ! 私のこのダイナミックな潜水を! 水とは敵ではない、友達なのだ。ハル君、私の飛沫を浴びて、水の聖母に祝福されるがいい!」
ルークが体をブルブルと震わせると、フェンス越しに「聖なる水飛沫」がハル君に降り注ぎました。
アーサー先輩は、涼しい顔でその様子を見守っています。
「ハル。水は形を変えるが、お前を飲み込むことはない。お前の勇気の方が、水よりもずっと広いのだよ」
### 3. 事件:特訓中の「虹」
サチコさんが庭にビニールプールを出してくれました。ハル君は恐る恐る足先を入れますが、まだ顔をつける勇気が出ません。
僕は、ハル君を励ますために、プールの中に放り込まれたおもちゃのボールを「バシャッ!」とダイブしてくわえて見せました。
(ハル、見てろ。僕だって最初は雨の日が嫌いだったけど、今はこんなに平気だぞ!)
すると、ホースで水撒きをしていたサチコさんの水が太陽の光に当たり、ハル君の目の前に小さな「虹」が架かりました。
「ギィーッ! 光学的支援(虹)を確認! 今がチャンスだ、突撃せよ!」
ソラが屋根の上で翼を広げ、ハル君の背中を押すように鳴きました。
### 4. 潜水成功と「小さな勝利」
「あ……! 虹、つかまえる!」
ハル君は虹を追いかけるようにして、思い切って顔を水に近づけました。
「ぶふぁっ! ……こたぅ、できた! ぼく、おめめ、あけられたよ!」
一瞬だけれど、ハル君は水の中に顔をつけました。顔から滴る水滴を、僕は優しくペロリと舐めました。水はもう、ハル君にとって「怖いもの」ではなく、僕と一緒に遊んだ「キラキラした思い出」の一部になったのです。
### 5. 陽だまりの「防水」パトロール
翌日。ハル君はプールバッグを誇らしげに振り回して、学校へ向かいました。
「こたぅ、いってくるね! ぼく、ぷーるで、おさかなになるよ!」
陽だまりの警備保障、水難克服任務・完了。
夕方、帰ってきたハル君の髪からは、ほんのりとプールの消毒液の匂いと、それ以上に「やり遂げた男」の自信が漂っていました。
六巡目の夏。
ひまわりはもうハル君の背丈を追い越しました。
水をもらってぐんぐん伸びるひまわりのように、ハル君もまた、苦手なものを一つずつ「大好き」に変えながら、高く、高く伸びていくのでした。
---




