『放課後の秘密会議と、初めての「宿題」』
『放課後の秘密会議と、初めての「宿題」』
### 1. 玄関での「身分照会」
「ただいまー! こたぅ、みて! ぼく、これ、もらったの!」
ハル君がランドセルから取り出したのは、真新しい「連絡帳」と、算数セット。
僕はハル君の足元に鼻を寄せ、新しい場所の匂いをスキャンしました。チョークの粉、校庭の砂、そして……新しい友達の家の犬の匂い。
「局長、指揮官の装備品に異変なし。ただし、精神的疲労が3%ほど蓄積しているようです。直ちにリラックス・フェーズに移行しましょう」
チビが、ハル君が脱ぎ捨てた靴下(これも重要な証拠品です)を念入りにチェックしながら報告します。
### 2. ルークの「放課後」サポート
生垣の向こうでは、ルークがハル君の帰還を祝して、尻尾をプロペラのように回していました。
「コタロウ、聞いたか! ハル君が『算数』という名の暗号解読任務を授かったらしい。私にできることがあれば言ってくれ。例えば、消しゴムのカスを迅速に吸引する役目とかはどうだ?」
アーサー先輩は、リビングの陽だまりでハル君に隣を譲りました。
「ハルよ。勉強とは、この世界の『不思議』を解き明かす鍵だ。疲れたら、いつでもこの毛並みに埋もれて知恵を休めるがいい」
### 3. 事件:初めての「しゅくだい」
夕暮れ時、ハル君はダイニングテーブルにノートを広げました。
「……『あ』。……『い』。……むずかしいなぁ」
初めての宿題。鉛筆を握るハル君の指先に力が入ります。年中さんの頃のダンスのように、上手くいかなくて少しだけ唇が震え始めました。
「ギィーッ! 指揮官、集中力が低下! 糖分、またはモフモフの補給が必要!」
ソラがカーテンレールの上から警告を発します。
僕は迷わず、ハル君の足元に潜り込みました。そして、彼が踏ん張れるように、自分の背中をハル君の足の乗せ台にしました。
(ハル、足元を固めろ。僕が支えているから、お前はゆっくり文字を書きなよ)
### 4. 鉛筆の音と、僕の吐息
カリカリ、カリカリ。
静かなリビングに、鉛筆の音だけが響きます。
ハル君は時々、僕の頭を左手でそっと撫でながら、一文字ずつ丁寧に書いていきました。
「……できた。……こたぅ、みて。『あ』、かけたよ!」
ハル君が書いた「あ」の文字は、少し曲がっていたけれど、力強くて温かい、この庭に咲く花のようでした。
僕はそのノートを一度だけクンクンと嗅ぎ、合格の太鼓判を押すように尻尾を床に「トントン」と打ち付けました。
### 5. 陽だまりの警備保障、学習支援任務・完了
「あ、ひまわりが……!」
ハル君が窓の外を指差しました。
かつて彼が「おにいちゃんになる約束」をして植えたひまわりが、今年も力強く芽を伸ばし、一年生になったハル君の成長を追い越そうとしています。
陽だまりの警備保障、一年生学習支援任務・名誉継続。
ハル君が眠りについた後、僕は彼のランドセルの横で丸くなりました。
明日も、明後日も。ハル君が新しい世界で戦って、少しだけ疲れて帰ってきた時、一番に「おかえり」を言うのが僕の、そして僕たちの最高の任務です。
六巡目の夏が、もうすぐそこまで来ています。
ハル君のノートに書かれる文字が、いつか世界を優しく変える力になるのを、僕は信じてパトロールを続けます。
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