『卒園式と、誇り高き「黄色い帽子」の返還』
『卒園式と、誇り高き「黄色い帽子」の返還』
### 1. 正装の警備保障
「こたぅ、みて……。ぼく、これ、きるんだよ」
ハル君が持ってきたのは、いつもより少し硬い生地の紺色のブレザーでした。白いシャツの襟がピシッとしていて、なんだか急に「小さな紳士」が現れたようです。
僕は僕で、サチコさんに特別にブラッシングしてもらい、ハル君が編んでくれた赤いセーターの上に、新しい革の首輪を締めました。
「局長、本日のハル君の威風……もはや『主任』を超えて『理事』の風格です」
チビが、ハル君のピカピカの革靴の匂いを嗅ぎながら、厳粛に報告しました。
### 2. ルークの「儀仗兵」セレモニー
生垣の向こうでは、ルークがかつてないほど真っ白に体を磨き上げ、彫像のように直立していました。
「コタロウ、聞け。卒業とは、一つの防衛線の完遂であり、次なる戦場(小学校)への戦略的進出である。私はこのフェンスから、ハル君が門を出るその瞬間まで、最高敬礼を送り続ける」
アーサー先輩も、玄関先でどっしりと座り、ハル君が靴を履くのを静かに待っていました。
「ハル、泣いてもいい。だが、前を見るのを忘れるな。お前が歩んできた道は、この庭のみんなが保証する」
### 3. 事件:返された「黄色い帽子」
卒園式から帰ってきたハル君の手には、三年間毎日被り続けた「黄色い帽子」がありました。
少し色が褪せ、角が擦り切れたその帽子。ハル君はそれを庭の真ん中のベンチにそっと置きました。
「……黄色いさん、……ありがとう」
ハル君はその帽子を撫でながら、ふと僕の顔を見ました。
「こたぅ、……ぼく、もう『黄色』じゃないんだって。……おにいちゃんに、なるんだって」
ハル君の瞳に、大粒の涙が溜まりました。年中さんの時の悔し涙でもなく、転んだ時の痛い涙でもない。それは、一つの場所を愛し抜いた者だけが流せる「卒業の涙」でした。
### 4. 継承される「守護者の魂」
僕は、ハル君の涙を優しく舐め取りました。
(ハル、帽子が変わっても、お前がお前であることに変わりはない。お前はこの庭で、誰よりも立派な『守る力』を手に入れたんだ)
ハル君は、帽子のポケットに隠していた「最後の一つの松ぼっくり」を取り出しました。
これまでのように誰かにあげるためではなく、自分と僕、二人の思い出を封じ込めるように、それをひまわりの根元に深く、深く埋めました。
「ギィーッ! タイムカプセル、封印確認! 未来への通信、送信完了!」
ソラが夕焼け空を高く舞い、ハル君の門出を告げるファンファーレのように鳴き渡りました。
### 5. 陽だまりの警備保障、第一章・完
夕暮れ時、サチコさんが僕とハル君の姿をカメラに収めました。
「ハルくん、卒園おめでとう。コタロウ、ハルくんを守ってくれてありがとうね」
ハル君は僕をぎゅっと抱きしめました。
「こたぅ、……あしたからも、……いっしょ?」
僕は、短く「ワン!」と答えました。
(当たり前だろ。お前が中学生になっても、大人になっても、僕はこの庭で、お前の帰りを待っているんだから)
陽だまりの警備保障、幼稚園護衛任務・名誉完遂。
庭のひまわりの芽は、もうすぐ訪れる「四月のランドセル」を待つように、静かに、でも力強く、春の風に揺れていました。
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