『黒い盾(ランドセル)と、六度目の春の約束』
『黒い盾と、六度目の春の約束』
### 1. 巨大な「箱」の再来
「ハルくん、届いたわよ。おじいちゃんとおばあちゃんからよ」
サチコさんの声が響き、リビングに大きな箱が運び込まれました。
かつての「段ボール基地」の材料とは違う、神聖なまでの重みを感じる箱。ハル君は息を呑み、震える手でその蓋を開けました。
「……わぁ……! こたぅ、みて、みて……!」
そこから現れたのは、ピカピカに光る黒いランドセルでした。それは年長さんになったハル君にとって、来たるべき「小学校」という新しい戦場へ向かうための、最強の「盾」であり「装備」でした。
### 2. ルークの「重力」分析
生垣の向こうで、ルークがフェンスに鼻を押し付けていました。
「コタロウ、解析完了だ。あの黒い皮革製品には、未来の知識(教科書)を詰め込むための特殊な空間拡張機能が備わっている。ハル君がそれを背負った瞬間、彼の『保護対象ランク』は『準・自立型リーダー』へと昇格するだろう」
アーサー先輩も、座ったまま静かに尻尾を振りました。
「いい色だ、ハル。その黒い輝きは、お前がこの庭で学んだ勇気の証だ」
### 3. 事件:背負いきれない「夢の重さ」
ハル君は、まだ少し大きいランドセルを一生懸命に背負いました。
「……う、……うーん!」
身体が後ろに持っていかれそうになるハル君。僕は咄嗟に、彼のふくらはぎの裏に自分の体を潜り込ませました。
(支えるぞ、ハル。お前が一人で歩けるようになるまで、僕の背中を支えにしろ)
ハル君は僕の毛並みに寄りかかり、なんとかバランスを取りました。そして、ランドセルのサイドにある小さなフックに、何かをぶら下げました。
それは、ハル君が自分で紐を通した、あの「一番大きな松ぼっくり」でした。
### 4. 継承される「お守り」の進化
「こたぅ、……これ、いっしょだよ。……がっこうも、いっしょ」
ハル君は、ランドセルを背負ったまま、僕の目を見て言いました。
学校には、僕は一緒に行けない。それはハル君も分かっています。だからこそ、彼はこの庭の「平和の象徴」である松ぼっくりを、自分の盾に刻んだのです。
「ギィーッ! 装備品、パーソナライズ完了! 絆の通信強度、過去最大を記録!」
ソラが屋根の上で翼を広げ、新しい門出を祝うように旋回しました。
### 5. 陽だまりの「授与式」
その日の夕方、ハル君はランドセルを置くと、僕に特別な「お返し」をくれました。
「こたぅ、……これ、ぼくの、おまもり」
ハル君が僕の首輪に結びつけてくれたのは、ランドセルと同じ色の、小さな革のキーホルダーでした。そこにはハル君の手書きで「はる・こたろう」と書かれていました。
陽だまりの警備保障、装備拡張任務・完了。
僕は自分の首元で揺れる新しい「絆」の重みを感じながら、ハル君の少し大きくなった背中を、誇らしく見つめていました。
六度目の春。
ひまわりの芽は、もうハル君の足首を越えるほどに伸びています。
僕たちの警備保障は、もうすぐ「卒業」と「入学」という、一番大きくて、一番温かな変化を迎えようとしていました。
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