『庭のダンスホールと、秋色のステップ』
『庭のダンスホールと、秋色のステップ』
### 1. 芸術監督・ハル主任の「文化祭」練習
「こたぅ、あーさー! ぼく、ダンスするよ! ……みんな、まねして!」
幼稚園の文化祭でダンスを披露することになったハル君。今日は庭が練習場です。
ハル君が「タ・タ・タ・ン!」とリズムを刻むと、僕もそれに合わせて前足をトントンと動かしました。
「先輩、局長のステップ、どっちかというと『穴掘り』に近いですよ」
チビが門柱の上から厳しいダンス批評を飛ばします。
### 2. ルークの「バックダンサー」志願
生垣の向こうでは、ルークが音楽(ハル君の鼻歌)に合わせて、巨体をゆっさゆっさと揺らしていました。
「コタロウ、私はサモエド族に伝わる『雪山の舞』をマスターしている。ハル君の背景で、白い紙吹雪のように舞う準備はできているよ」
アーサー先輩も、ゆっくりと立ち上がり、ハル君の周りを悠然と回る「円舞」を披露。
ソラは屋根の上で、翼を広げて指揮者のように拍子をとります。「ギィーッ! テンポが上がったぞ! 全員、ハル主任に続け!」
### 3. 事件:落葉に隠れた「小さな挫折」
練習の途中で、ハル君が難しいターンをしようとして、降り積もったクヌギの葉に足を取られて尻もちをついてしまいました。
「……いたい。……できない、もん」
ハル君の瞳に、ポロリと大粒の涙が浮かびました。年中さんになり、責任感が強くなった分、できないことが悔しくてたまらないようです。
僕は、ダンスをやめてハル君の隣に座りました。そして、自分の鼻をハル君の手の中にぐいぐいと押し込みました。
(ハル、転んでもいいんだ。僕たち警備保障は、倒れた時が一番『地面の匂い(新しい発見)』に詳しくなれるって知ってるだろ?)
### 4. 勇気のリズム
ハル君は僕の鼻の冷たさに、少しだけ笑いました。
そして、足元に落ちていた「四つ目の松ぼっくり」を拾い上げました。
「……まつぼっくり、……ころころ。……いっしょ?」
ハル君はその松ぼっくりを僕の目の前で転がしました。僕がそれを追いかけて、ひょいと跳ねて見せると、ハル君は立ち上がり、もう一度ステップを踏み始めました。今度は完璧な、、世界で一番力強い足音でした。
### 5. 陽だまりの「本番前夜」
文化祭の前夜、ハル君は僕の首輪に、今日拾ったばかりの松ぼっくりを紐で結びつけてくれました。
「こたぅ、……おまもり。……あした、みててね」
(ああ、見てるよ。どこにいたって、僕の耳はハルの足音を探し出すからな)
陽だまりの警備保障、文化祭特別合宿・完了。
夜の庭では、月明かりに照らされた松ぼっくりが、静かに「合格」のサインを送っているようでした。
五度目の秋。
ハル君が踏み出すステップは、枯れ葉を蹴り上げ、未来の音を鳴らしていました。
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