『夏休みの自由研究と、書き込まれた「勇気」』
『夏休みの自由研究と、書き込まれた「勇気」』
### 1. 観察者・ハル主任の鋭い眼光
「こたぅ、うごかないで! ……いま、おはなの『ぬれぬれ』をチェックするよ」
ハル君が大きな虫眼鏡を手に、僕の顔をのぞき込みました。
どうやら年中さんになったハル君は、「なぜコタロウの鼻はいつも冷たいのか?」「なぜ嬉しいと尻尾が右に寄るのか?」といった、警備保障の機密事項(?)を解明することにしたようです。
僕はモデルとして、精一杯の「局長の威厳」を保ち、お座りの姿勢を崩しません。
「先輩、ハル君の筆圧がすごいです。スケッチブックに『茶色のまる』が量産されていますよ」
チビが、ハル君が一生懸命に描く様子を、キャットタワーの上から実況します。
### 2. ルークの「サモエド統計学」提供
生垣の向こうでは、ルークが自分のデータも提供しようと躍起になっていました。
「コタロウ、ハル君に伝えてくれ。サモエドの毛の密度は1平方センチメートルあたり……いや、難しいかな。とにかく、私の毛を一本、研究資料としてフェンスに挟んでおいたよ」
ハル君はその「白いふわふわ」を拾い上げ、自分のスケッチブックに糊で丁寧にペタッと貼りました。
「……ルーク、……しろい。……こたぅ、……ちゃいろ」
ハル君の「コタロウしんぶん」に、初めてのカラーバリエーション(色彩比較)が加わりました。
### 3. 事件:夜のパトロール密着取材
自由研究のハイライトは、夜の「お休み前パトロール」でした。
ハル君はパジャマの上に探検隊のようなベストを着て、僕と一緒に暗くなった庭を懐中電灯で照らしました。
「ギィーッ! 20時方向、物干し竿に未確認飛行物体(蛾)を確認!」
ソラが鳴き、僕がそちらを向くと、ハル君も真剣な顔でライトを向けました。
「……こたぅ。……よるも、まもってる。……すごいね」
ハル君がスケッチブックの隅に、拙いけれど一生懸命な文字で書きました。
**『こたろうは、ねてるときも、おみみがうごいている』**
それは、僕が自分でも気づかなかった、僕がこの家を守ろうとする「本能」の記録でした。
### 4. 提出:サチコさんの涙
夏休みが終わる直前、完成した『コタロウしんぶん』がリビングでお披露目されました。
そこには、僕の毛の色、肉球の形、そして最後の一ページに、大きな絵が描かれていました。
それは、僕とハル君が手を繋いで(前足と手で)、あのひまわりの下で笑っている絵でした。
**『こたろうは、ぼくの、いちばんの、おにいちゃん』**
サチコさんはその一文を読み上げると、少しだけ目を潤ませてハル君を抱きしめました。
「素敵な研究ね、ハルくん。世界に一つだけの、宝物だわ」
### 5. 陽だまりの「夏の勲章」
僕は、ハル君が誇らしげに見せてくれたスケッチブックを、一度だけ優しく鼻先で突っつきました。
(ハル、ありがとう。僕の毎日を、こんなに綺麗に書いてくれて)
陽だまりの警備保障、自由研究プロジェクト・完了。
庭では、二代目のひまわりが立派な種をつけ、秋の風を待っています。
五度目の夏が終わり、ハル君の背中はまた少し、僕の頭の位置に近づきました。
次の季節、ハル君は何を「発見」するのでしょうか。僕は、彼のペンが動く音を聴きながら、今日も幸せなパトロールを続けます。
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