『白銀のラッセル車と、小さな足跡の行進』
『白銀のラッセル車と、小さな足跡の行進』
### 1. 庭が消えた朝
「こたぅ! おっきして! おそら、まっしろ!!」
ハル君の弾んだ声で目が覚めました。窓の外を見ると、昨日まで見えていた芝生も、ハル君の「秘密基地」の残骸も、すべてが分厚い雪のカーテンに覆われていました。
僕は、キリッとした冷気の中に飛び出したい衝動に駆られました。これこそが、柴犬の本領発揮です。
「局長、本日、庭の警戒難易度は『極大』です。足元の段差が全て消失しています」
チビが、窓辺で丸くなりながらも、外の世界の激変に興味津々です。
### 2. ルークの「スノー・カーニバル」開幕
フェンスの向こうでは、この世の春(冬ですが)を謳歌する白い巨体が躍動していました。
「コタロウ、ついにこの時が来た! 積雪量20センチ、気温マイナス2度。これは私にとっての『公式フィールド』だ!」
ルークは、まるで巨大な雪玉のように庭を駆け回り、ハル君のために道を作ります。
「ハル君、この僕の『白銀の背中』に、君の勇気を乗せてみないか?」
ハル君は、モコモコの防寒着に身を包み、まるで小さな雪だるまのような姿で庭へ踏み出しました。
### 3. 事件:埋もれた「思い出の目印」
ハル君は、ルークが作った道をトコトコと歩き、ある場所で足を止めました。
そこは、あの「松ぼっくり」を埋め、トラちゃんを助け、ひまわりを育てた場所。
「……ここ、……ない。……ひまわり、いない」
雪に覆われ、何も見えなくなった地面を見て、ハル君が少しだけ寂しそうな顔をしました。
「ギィーッ! 座標をロストしたか? 待て、私が上空からランドマークを特定する!」
ソラが冷たい風を切り裂き、雪の上に一箇所だけ、ポツンと突き出た「枯れたひまわりの茎」を見つけ出しました。
### 4. 雪の下の「約束」
僕は、ソラが指し示した場所を、前足で力強く掘り始めました。
(大丈夫だ、ハル。形は見えなくても、ここにあるんだ。お前が頑張った証も、僕たちの約束も)
ザクッ、ザクッ、と雪を掻き分けると、凍った土の中から、茶色いひまわりの種の跡が見えました。
ハル君はそれを見て、ぱあっと顔を輝かせました。
「……あった。……ねんね、してるね」
ハル君は、自分の小さな手袋を脱いで、そっと土を撫でました。
その時、アーサー先輩がゆっくりと歩み寄り、ハル君を雪から守るように横に座りました。
「ハル君、命は冬に眠り、春にまた出会うものなのだ。お前がここで見守っている限り、この庭は何度でも色づく」
### 5. 陽だまりの「雪上パトロール」完了
その後、ハル君と僕は、ルークと一緒に雪の上に「大きな足跡」をたくさん作りました。
サチコさんが「ハルくん、温かいココアが入ったわよ!」と呼ぶまで、僕たちは銀色の世界をパトロールし続けました。
陽だまりの警備保障、雪上特別任務「春の予感捜索」完了。
家に戻ったハル君の頬は、リンゴのように真っ赤で、その瞳にはもう、寒さを怖がる色は微塵もありませんでした。
四度目の冬が終わりを告げようとしています。
雪の下で眠る松ぼっくりのように、ハル君の心には、目に見えないけれど決して消えない「強さ」が、着実に根を張っていました。
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