『秘密基地の合言葉と、段ボールの騎士団』
『秘密基地の合言葉と、段ボールの騎士団』
### 1. 巨大な「資材」の到着
「パパ、これ……ハルにちょうだい!」
サチコさんのご主人が買ってきた、新しい家電の大きな段ボール箱。ハル君はそれを見つけるなり、目をキラキラさせて庭へと運び出しました。
「こたぅ、……ここ、おうち! ……こたぅの、おうち!」
ハル君はクレヨンを握りしめ、段ボールの壁に一生懸命「窓」や「ドア」を描き始めました。そして、僕の名前を(まだ少し不思議な形の文字で)大きく書きました。
陽だまりの警備保障、移動式本営「ハル・コタ・タワー」の建設開始です。
### 2. チビの「内装工事」とルークの「外壁警備」
「先輩、この新築物件、なかなか居心地が良さそうですね」
チビがちゃっかりと箱の中に潜り込み、持ってきた毛布をふみふみして寝床を整えています。
生垣の向こうでは、ルークが羨ましそうに首を長くしていました。
「コタロウ、その『秘密基地』には、隣の家の大型警備員は入場可能だろうか? 私は、外側から『強風対策の重石』として寄り添う準備ができているが」
ソラも屋根の上から監視を続けます。「ギィーッ! 敵影なし。基地の屋根部分の強度は……ハル君のクレヨンの塗り込みにより、防水性能が3%向上したと推測される!」
### 3. 事件:嵐の「秘密の合言葉」
夕方、急に空が暗くなり、冷たい秋の風が吹き始めました。
サチコさんが「ハルくん、もうお家に入りましょう」と呼びに来ましたが、ハル君は段ボールの中に僕と一緒に籠城を決め込みました。
「……だめ。……ここ、こたぅと、まもるの」
ハル君は小さな手で僕の首筋を撫でながら、耳元でそっと囁きました。
「……まつぼっくり、……あいことば」
それは、かつて僕がハル君に託し、ハル君がトラちゃんに繋いだ、あの「松ぼっくり」という言葉。今、それが僕たちの間だけで通じる、世界で一番強い「秘密の合言葉」になったのです。
### 4. 段ボール越しの温もり
風が段ボールの壁をガタガタと揺らします。
ハル君は少しだけ体をすくめましたが、僕が彼の体にぴったりと寄り添うと、すぐに安心したように笑いました。
「こたぅ、……あったかいね」
狭い箱の中は、ハル君の体温と、僕の毛の匂い、そしてクレヨンの香りで満たされていました。
サチコさんも、僕が一緒にいるのを見て安心したのか、少しだけ「秘密の時間」を許してくれました。窓から漏れるリビングの明かりが、僕たちの基地の入り口を優しく照らしています。
### 5. 陽だまりの警備保障、秋の夜の誓い
結局、ハル君はそのまま基地の中でウトウトとし始めました。
ご主人に抱き上げられて家に入る時、ハル君は寝ぼけながら僕の尻尾をギュッと握っていました。
「コタロウ、お前がいてくれて本当に助かるよ」
ご主人が僕の頭を優しく撫で、僕は誇らしげに一度だけ尻尾を振りました。
陽だまりの警備保障、秘密基地任務・完了。
段ボールの家はいつか壊れてしまうかもしれないけれど、あの中で交わした「秘密の合言葉」と温もりは、僕たちの心の中に、もっと頑丈な城を作ったようです。
四度目の秋が深まり、庭のひまわりは種を蓄えて頭を垂れています。
ハル君が明日、また新しい「秘密」を見つけるのを、僕は一番近くで待っています。
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