『ひまわりの約束と、ハル主任の「卒業」』
『ひまわりの約束と、ハル主任の「卒業」』
### 1. 鳴り響いた「希望のチャイム」
「……はい、そうです。紫陽花の茂みで。……ええ、とっても元気ですよ」
サチコさんの電話の声が、庭にいた僕たちの耳に届きました。
近所に貼ったポスターを見て、トラちゃんの本当のご家族が見つかったのです。それは、トラちゃんがいなくなってから毎日泣いていたという、小さなお子さんのいるお家でした。
「こたぅ、……トラ、おうち、かえる?」
ハル君は、サチコさんの会話を察したのか、トラちゃんをぎゅっと抱きしめたまま、僕の顔をじっと見つめました。
### 2. ルークの「誇り高き」見送り
生垣の向こうで、ルークが静かに座っていました。
「コタロウ、任務は完遂された。……我々の仕事は、迷い子を救い、本来あるべき場所へ安全に送り届けることだ。ハル主任に、その誇りを伝えてやってくれ」
アーサー先輩も立ち上がり、トラちゃんの頭を優しく一度だけ舐めました。
「行っておいで、小さな騎士。君にはもう、新しい守るべき家族がいるのだから」
### 3. 事件:門の前での「贈り物」
午後の陽だまりの中、トラちゃんのご家族がやってきました。
トラちゃんを見た女の子は「よかった……! 会いたかった!」と泣き出し、トラちゃんも「みゃう!」と嬉しそうに応えました。
ハル君は、門の前で一歩も動きませんでした。
その手には、あの「三つ目の松ぼっくり」が握られていました。
「ハルくん、トラちゃんにお別れ言いましょう?」
サチコさんの言葉に、ハル君は少しだけ唇を噛んだ後、女の子の元へトコトコと歩み寄りました。
「……これ、おまもり。……トラに、あげて」
ハル君は、自分の宝物である松ぼっくりを、女の子の手にそっと手渡しました。
それは、コタロウからハル君へ、そしてハル君から新しい誰かへ繋がれた、この庭の「優しさの連鎖」そのものでした。
### 4. 黄金の夕暮れと、局長の「寄り添い」
車が見えなくなるまで、ハル君は手を振り続けました。
「……バイバイ。……バイバイ」
車がいなくなった後、ハル君は急に静かになり、庭の隅の「あの場所」に座り込みました。
僕は、ハル君の隣にぴったりと体を寄せました。
(ハル、寂しいよな。でも、お前は世界で一番かっこいい警備主任だったぞ)
チビもハル君の膝に乗り、ゴロゴロと喉を鳴らしました。ソラは屋根の上で、少しだけ寂しげな、でも透き通った声で鳴いています。
### 5. 新しい「松ぼっくり」の予感
「あ……」
ハル君が、足元に顔を出していた「ひまわり」の種を見つけました。
「こたぅ、……これ、うめる?」
ハル君は涙を袖で拭うと、松ぼっくりがあった場所に、新しい命の種をそっと埋めました。
失った宝物の代わりに、新しい「未来」を植えたのです。
陽だまりの警備保障、トラちゃん帰還護衛任務・完了。
僕は、ハル君の成長を一番近くで見られたことを、天国のクロさんや松ぼっくりに報告しました。
四度目の夏、夕立が降った後の庭には、大きな虹がかかっていました。
ハル君の手は、また一つ、誰かを幸せにするための温かさを覚えていたのでした。
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