『庭の鬼退治と、秘密の「福」拾い』
『庭の鬼退治と、秘密の「福」拾い』
### 1. 謎の「ツノ」と赤き不審者
「コタロウ、準備はいい? 今日は悪いものを追い払う日よ」
サチコさんが、リビングで男性に「赤いお面」を被せています。
僕は、その異様な風体に思わず低く唸りました。
(……なんだ、あの赤い顔をした生き物は! 警備対象外の生命体か?)
ハル君は、豆が入った小さな升を握りしめ、不思議そうにその「赤鬼」を見上げています。
「おに! ……おに、きた!」
### 2. ルークの「鬼学」講義
生垣の会議室では、ルークが冷静に分析を進めていました。
「コタロウ、あれは『オニ』という、この時期だけ発生する日本の概念的害獣だ。だが、よく見るがいい。あの鬼の足元、サチコさんの旦那さんのスリッパを履いている。つまり、中身は身内だ」
「概念的害獣……相変わらず難しいな。で、僕たちは何をすればいい?」
アーサー先輩が、どっしりと腰を下ろして答えました。
「我らの任務は二つ。ハル君が豆を投げる勇気を見守ること。そして、撒かれた豆をサチコさんに怒られない程度に『迅速に回収(つまみ食い)』することだ」
### 3. 事件:ハル君の「優しき豆まき」
「鬼は外! 福は内!」
男性が迫真の演技で「がおー!」と叫びながら庭へ出ると、ハル君が一生懸命に豆を投げました。
「おに、そとー! ……こたぅ、なかー!」
ハル君は、なぜか「福」と一緒に、僕の名前を叫びました。
(ハル……僕を『福』だと思ってくれているのか?)
僕は胸が熱くなり、投げられた豆が地面に落ちる前に、空中でキャッチする「神業」を披露しました。
「ギィーッ! 局長、ナイスキャッチ! 空中の豆は僕が担当する!」
ソラが旋回しながら、こぼれた豆を器用に見つけ出します。
### 4. 隠された「五粒の願い」
豆まきが終わった後、ハル君は庭の隅にある「あの場所」——松ぼっくりが眠る場所へ、こっそりと歩いていきました。
そして、自分の升の中に残っていた最後の五粒の豆を、土の上に丁寧に並べました。
「……おに、こないで。……みんな、いっしょ」
ハル君は、鬼が怖くて追い払ったのではなく、僕たちがずっと平和に暮らせるように、土の精霊に豆を供えていたのです。
チビがその様子を見て、珍しく豆を食べようとせず、鼻をハル君の頬に寄せました。
### 5. 陽だまりの「福」の正体
夜、家の中には香ばしい豆の匂いと、サチコさんたちの笑い声が満ちていました。
ハル君は、鬼のお面を被ったまま僕の隣で眠っています。
「ルーク、聞いたか? ハル君、僕を『福』と一緒に呼んでくれたんだ」
「ああ。最高の警備員への、最高の称号だね、コタロウ」
陽だまりの警備保障、節分任務「福の勧進」完了。
庭に撒かれた豆は、明日の朝にはソラや小鳥たちが綺麗に掃除してくれるでしょう。
三巡目の冬が終わりを告げ、土の中の豆と松ぼっくりは、ハル君の優しい願いを抱いて、もうすぐやってくる「四度目の春」を待ちわびていました。
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