『黄金の果実と、小さな継承者』
『黄金の果実と、小さな継承者』
### 1. ターゲット、禁忌に触れる
「こたぅ、……ここ、なーに?」
ハル君が指差したのは、庭の隅、少しだけ土が盛り上がった「あの場所」でした。
僕は一瞬、警備局長として身構えました。そこは、僕がこの家に来て最初に作った「心の貯金箱」。サチコさんの笑顔を守ると誓った証が眠る場所。
「あ、ハルくん、そこはコタロウの大事な場所よ。あんまり掘り返しちゃダメよ」
サチコさんがキッチンから声をかけますが、好奇心の塊となったハル君の手は、もう止まりません。
### 2. ルークの「考古学的」見守り
「コタロウ、静観したまえ。これは情報の開示だ」
生垣の隙間からルークが、まるで歴史の立会人のような顔で言いました。
「ハル君がその『核』に触れることは、彼が名実ともにこの庭の『真の主』として認められるための儀式なんだよ」
アーサー先輩も、ゆっくりと歩み寄ってハル君の隣に座りました。
「いいじゃないか、コタロウ。お前が守り続けてきた『想い』を、今度はこの小さな手に託す時が来たのだ」
### 3. 発掘:三年の時を超えて
ハル君が小さなシャベルで、一生懸命に土を退けます。
「ん、ん……。……あ!」
土の中から現れたのは、三年前より少し色が濃くなり、土の香りを深く纏った、あの「松ぼっくり」でした。
長い間、土の中でこの庭のすべての出来事——雨の日も、雪の日も、ハル君が生まれた日も——を聴き続けてきた、陽だまりの警備保障の「心臓」です。
ハル君はその松ぼっくりを両手で包み込み、不思議そうに眺めました。
「……き、き……」
(綺麗、と言いたかったのかもしれません)
### 4. 局長の「譲渡」式
僕は、ハル君の前に一歩踏み出し、その松ぼっくりに鼻先をそっと寄せました。
(よし、ハル。それは今日から、君のものだ。この家を、サチコさんを、今度は君も一緒に守るんだぞ)
ハル君は、僕の意図を汲み取ったかのように、松ぼっくりを僕の鼻先に「こん」と当てて笑いました。
「ギィーッ! 継承完了! 陽だまりのバトンが渡されたぞ!」
ソラが上空で旋回し、祝福のファンファーレを鳴らします。
チビもキャットタワーの最上階から、満足げに尻尾を振っていました。
### 5. 陽だまりの「新しい地図」
夕暮れ時、サチコさんが庭に出てきて、ハル君の手にある松ぼっくりを見て驚きました。
「あら……それ、コタロウがずっと大事にしてたものじゃない。……ハルくんに、プレゼントしてくれたのね」
サチコさんは僕を強く抱きしめ、それからハル君を抱き上げました。
ハル君は松ぼっくりを握りしめたまま、サチコさんの肩でスヤスヤと眠りにつきました。
僕は、空っぽになった「貯金箱」の穴を、自分の前足で静かに埋め戻しました。
悲しくはありません。なぜなら、その中身は今、ハル君の小さな手のひらの中で、もっと温かな「未来」に変わったからです。
陽だまりの警備保障、ハル君成長記録・第五章「継承の夏」完了。
僕は新しい松ぼっくりを、明日また、ハル君と一緒に探しに行こうと思います。
庭の隅では、掘り起こされた土の匂いが、夏の夜風に乗ってどこまでも優しく広がっていました。
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