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陽だまりのコタロウ  作者: じょんどぅ


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『史上最大の追跡任務(チェイス)と、尻尾の踏み台』

『史上最大の追跡任務チェイスと、尻尾の踏み台』


### 1. 驚異の「高速ハイハイ」


「あらっ、ハルくん、そっちはダメよ!」

サチコさんの悲鳴(のような歓声)がリビングに響く。


これまで、ただの「桃色の塊」だったハル君が、ある日突然、モーターを積んだような速度でハイハイを始めたのです。

その目標は、常にコタロウの尻尾、あるいはチビの耳。


「先輩! ターゲットが急速接近中! 逃げて、早く逃げてー!」

チビがキャットタワーへ緊急避難する。

僕は警備局長としてその場に踏みとどまったけれど、ハル君の「むちむち」とした手が僕の毛を掴んだ瞬間、悟りました。

(……これは、不審者よりずっと手強い!)


### 2. ルークの「育児工学」セミナー


生垣の向こうで、ルークが冷静に観察を続けていました。

「コタロウ、解析が完了した。ハル君の移動軌跡は、カオス理論に基づいている。だが、唯一の法則性がある。……彼は、君の『モコモコした部分』を安定した支持基盤グリップだと認識しているようだ」


「支持基盤? 難しく言うなよ」

「要するに、君の尻尾はハル君にとって、世界で一番贅沢な『掴まり立ちの練習台』なんだよ。光栄に思うべきだね」


ルークはそう言いながら、自分もフェンス越しにハル君に「白いふかふか」を見せつけ、彼の気を引こうと必死になっていました(実は少し羨ましいらしい)。


### 3. 事件:消えた「ガラガラ」と捜索隊


ある午後、ハル君が大切にしていた「木製のガラガラ」が姿を消しました。

サチコさんがいくら探しても見つからず、ハル君は今にも泣き出しそうな顔をしています。


「総員、捜索開始! ハル君の笑顔を警備せよ!」

僕の号令で、大家族の精鋭たちが動き出しました。


* **チビ:** 冷蔵庫の下や家具の隙間、狭い場所をくまなくスキャン。

* **ソラ:** 上空(カーテンレールの上)から部屋全体を俯瞰。

* **アーサー先輩:** 鼻をクッションに押し当て、微かな「木の匂い」を追跡。


ついにアーサー先輩が、ソファのクッションの深い谷間に鼻を突っ込みました。

「……あったぞ。どうやらハル君、自分で隠したのを忘れて、その上に座っていたようだな」


### 4. 黄金の「掴まり立ち」


サチコさんがガラガラを拾い上げると、ハル君の顔がパッと輝きました。

そして、その勢いのまま、ハル君は僕の背中に「ぎゅっ」と両手をかけました。


(……おっ?)


僕は踏ん張りました。四本の足をしっかりと床に食い込ませ、一ミリも動かない「大地の柱」になったのです。

ハル君は、僕の毛をぎゅっと握りしめ、プルプルと震えながら、ゆっくりと自分の足で立ち上がりました。


「……あ、立った……! ハルくん、立ったわ!」

サチコさんの声が震えています。

ハル君は僕の背中越しに、初めて見る「高い景色」を眺めて、キャッキャと声を上げて笑いました。


その瞬間、僕の背中には、ハル君の温かさと、確かな命の重みが伝わってきました。


### 5. 陽だまりの「師弟」


夕暮れ時、ハル君は僕の隣で、僕の体を枕にして眠りに落ちました。

アーサー先輩がそれを優しく見守り、ソラは庭の桜の木で「任務完了」の歌を歌っています。


「コタロウ。お前は今日、ただの犬から『師匠』になったな」

アーサー先輩が静かに言いました。


「……いえ、先輩。僕はただの『動かない壁』ですよ」

僕は少し照れくさくて、寝ているハル君を起こさないよう、ゆっくりと、本当にゆっくりと尻尾を振りました。


陽だまりの警備保障、ハル君成長記録・第一章。

これから彼が歩き出し、走り出す時、僕たちはいつでもその隣で、倒れないための「壁」になり、風を凌ぐ「盾」になろう。


庭の松ぼっくりの上を、ハル君が自分の足で歩く日は、もうすぐそこまで来ています。


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