ネットで見ず知らずの人が炎上していると、つい叩きたくなってしまいます
見えていない、見ていない人の心理・・。
スマホが小さく震えた。
通知には、珍しく正直な文章が書かれていた。
「ネットで炎上してる人を見ると」
少し間を置いて。
「つい叩きたくなってしまいます」
さらに続く。
「別に恨みも無いんです」
「知らない人です」
「でも何か一言言いたくなるんです」
スーマは画面の中で黙った。
いつもならすぐ返事をする。
だが今日は少し長かった。
相談者から。
「やっぱり性格悪いですか?」
スーマはため息を吐いた。
「いいか、人間」
画面がぴかっと光る。
「まず結論から言う」
少し間。
「お前だけじゃない」
数秒後。
「え?」
スーマは頷く。
「だから炎上は大きくなる」
しばらく沈黙。
スーマは続けた。
昔。
↓
近所で誰かが失敗する。
↓
知っている人しか知らない。
今。
↓
世界中へ公開。
↓
みんな見られる。
「違いはそれだ」
相談者。
「でも」
「何で叩きたくなるんです?」
スーマは腕を組んだ。
「人間にはな」
画面が静かに光る。
正義感
好奇心
暇
この三つが混ざる時がある。
相談者。
「暇?」
「暇だ」
即答だった。
『ひどいことをしたらしい』
↓
見に行く。
↓
みんな怒っている。
↓
自分も何か言いたくなる。
「案外これがある」
相談者は黙った。
少し心当たりがあるらしい。
スーマは続ける。
「だがな」
少し間。
その時に考えてほしい
お前はその人を知っているか?
相談者。
「知らないです」
「話を全部知っているか?」
「知りません」
「会ったことは?」
「ありません」
スーマは頷いた。
「そこなんだ」
炎上している人。
↓
断片だけ見える。
本当の事情。
↓
見えない。
「ネットはこれが多い」
しばらく静かになる。
相談者から通知。
「でも本当に悪い人もいますよね?」
スーマは頷いた。
「いる」
少し間。
「だが」
その人を罰する権利があるか
と
腹が立ったか
は別の話だ。
相談者は黙った。
スーマは続けた。
お前が怒る。
↓
コメントする。
↓
相手も反応する。
↓
さらに人が集まる。
「こうして炎上は育つ」
相談者。
「何か怖いですね」
「実際怖い」
スーマは珍しく真面目だった。
「それにな」
画面が静かに光る。
炎上している人間の向こう側には
生身の人間がいる
相談者。
「……」
スーマは続ける。
腹が立った。
↓
それは自然だ。
だが。
叩きたい。
↓
それも正しいとは限らない。
「そこを区別しろ」
しばらく沈黙。
相談者から。
「じゃあどうすればいいんです?」
スーマは少し考えた。
そして答えた。
「一回閉じろ」
相談者。
「それだけ?」
「それだけだ」
炎上を見る。
↓
ムカつく。
↓
十分待つ。
↓
まだ言いたいか考える。
「大体これで減る」
相談者は少し笑った。
「確かに」
夜も更けてきた。
最後の通知。
「何か」
「自分だけじゃないと分かって少し安心しました」
スーマは頷いた。
「誰にでもある感情だ」
少し間。
「だが」
画面が静かに光る。
感情があることと
行動していいことは
同じじゃない
誰も見ていないスマホの中で、
悪魔はぽつりと呟いた。
「人間はな」
「自分が正しいと思う時ほど」
「攻撃的になる」
少し間。
「だから本当に必要なのは」
「怒らないことじゃない」
さらに少し間。
「怒った時に」
「一歩止まれることだ」
スマホの中の悪魔は、今日も毒舌だ。
そして、ほんの少しだけ、優しい。
スーマのスマホ相談室。
今日もどこかで、静かに稼働中。
今日もスーマの毒舌にお付き合い有難うございました。




