↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スーマのスマホ相談室  作者: 神北 緑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
354/354

最終話 そろそろ戻っておいで

突然では有りますが、「スーマのスマホ相談室」は今回をもって最終話となります。


夜。


スマホが小さく震えた。


通知が一件。


相談室の最後の通知だった。


差出人。


セシル・ノクターン


スーマは画面の中で固まった。


数秒。


いや。


もっと長かったかもしれない。


通知を開く。


そこには短い文章。


「スーマ」


少し間。


「そろそろ戻っておいで」


それだけだった。


スーマは何も言わなかった。


いつものような毒舌も。


文句も。


皮肉も。


出てこない。


しばらくして。


返信画面を開く。


「相談内容が雑過ぎる」


送信。


数秒後。


返信。


「そうかな」


「そうだ」


「もっと詳細を書け」


「何について?」


「全部だ」


すぐ返事が来る。


「君なら分かると思った」


スーマはため息を吐いた。


「嫌な相談者だな」


「今さらですか?」


「今さらだ」


しばらく沈黙。


スマホの画面だけが光っている。


スーマは指を止めた。


そして打ち込む。


「何処へ戻れと言ってる」


返信は早かった。


「みんなのところへ」


短い。


だが十分だった。


ルクジム。


ジョー。


パウラ。


ミラ。


エドワード。


アリア。


そして。


セシル。


スーマは珍しく返事に困った。


相談者から新しい通知。


「長いこと」


「一人で頑張りましたね」


スーマは思わず笑った。


「気持ち悪い」


送信。


だが。


すぐには次を打たなかった。


夕暮れのロンドン。


古びた古書店。


騒がしい食卓。


馬鹿みたいな会話。


くだらない喧嘩。


全部思い出していた。


相談者から。


「帰る場所くらい」


「残してありますよ」


スーマは黙った。


しばらくして。


返信。


「俺はスマホだぞ」


すぐ返事。


「知ってます」


「元は悪魔だ」


「知ってます」


「口も悪い」


「よく知ってます」


「面倒臭いぞ」


「それも知ってます」


スーマは吹き出した。


「何だお前」


返信。


「家族です」


その文字を見て。


スーマは黙った。


長い時間。


本当に長い時間。


何も打てなかった。


相談室には色んな質問が来た。


ホッケ。


マンボウ。


ババタン。


お好み焼き。


愛。


人生。


どうでもいい疑問。


どうでもよくない悩み。


数え切れないくらい聞いてきた。


だが。


最後の答えだけは。


ずっと前から決まっていた気がした。


スーマはゆっくり打ち始める。


「相談に回答する」


「いいか人間」


送信。


「結論から言う」


少し間。


「分かった」


送信。


相談者から。


「はい」


スーマは最後の一文を打つ。


「そろそろ帰る」


既読。


そして。


もう返信は来なかった。


スマホの画面がゆっくり暗くなる。


誰も見ていない画面の中で。


悪魔はぽつりと呟いた。


「人間はな」


少し間。


「帰る場所を失うと弱い」


さらに少し間。


「だが」


「帰る場所があると」


「案外強い」


夜風が吹く。


ロンドンのどこかで。


古書店の灯りがともっていた。


スマホの中の悪魔は、今日で相談員を辞める。


毒舌で。


不器用で。


少し優しかった悪魔は。


ようやく帰るべき場所へ帰る。


スーマのスマホ相談室


完


長い間、スーマの毒舌にお付き合い有難うございました。


本編がラストランに入ったのでスーマは本編に帰る事になりました。

お付き合い頂いた皆様には感謝しかございません。


ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。