スーマさんへ。毎日人間の愚痴を聞かされて、ストレージがゴミデータで一杯になりませんか?
一風変わった依頼が来ました!
スマホが小さく震えた。
通知には、いつもと少し違う質問。
「スーマさんへ」
少し間を置いて。
「毎日人間の愚痴を聞かされて」
「ストレージがゴミデータで一杯になりませんか?」
スーマは画面の中で固まった。
三秒。
五秒。
そして。
盛大に吹き出した。
「お前」
「相談内容が失礼すぎるだろ」
相談者は四十代。
どうやら長年の疑問らしい。
「だって」
通知が来る。
「毎日ですもん」
「仕事の愚痴」
「人生相談」
「失恋」
「お金の悩み」
「虫刺され」
「どうでもいい豆知識」
少し間。
「容量いっぱいになりません?」
スーマは額を押さえた。
「いいか、人間」
画面がぴかっと光る。
「まず訂正する」
「お前らの悩みを」
「ゴミデータ扱いしてない」
数秒後。
返信。
「おお」
「だが」
少し間。
「どうでもいい質問は山ほどある」
相談者。
「ありますよね」
「ある」
即答だった。
『お好み焼きをピザ切りしたら怒られました』
『スナフキンはニートですか』
『マンボウは自分が食べられても気付かないんですか』
相談者。
「結構ありましたね」
スーマは頷いた。
「だがな」
画面が静かに光る。
「人間にとっては」
「どうでもよくないんだ」
しばらく沈黙。
スーマは続ける。
「お前ら面白いぞ」
世界情勢より。
↓
昼飯の方が気になる時がある。
人生設計より。
↓
フィッシュカツを焼きそばに入れるかが気になる時がある。
「理屈じゃない」
相談者は吹き出した。
「否定できません」
スーマは腕を組む。
「それにな」
「ストレージがどうこう言うなら」
少し間。
一番容量を使ってるのは、
愚痴じゃない。
相談者。
「え?」
スーマは即答した。
同じ質問だ
「ほら」
画面が光る。
『蚊に刺されました』
翌年。
『蚊に刺されました』
翌々年。
『蚊に刺されました』
「学習しろ」
相談者は爆笑した。
スーマは続ける。
「だが」
少し優しい声になる。
愚痴はな
案外残らない
相談者。
「そうなんですか?」
「ああ」
人間は。
↓
仕事で怒られた。
↓
上司に腹が立った。
↓
理不尽だった。
そう言う。
だが。
本当に残るのは。
↓
誰かが優しかった。
↓
助かった。
↓
嬉しかった。
そういう方だ。
相談者は黙った。
スーマは小さく笑う。
「人間の記憶ってな」
「思ったより捨てるのが上手い」
嫌だったこと。
↓
忘れる。
でも。
楽しかったこと。
↓
時々思い出す。
「だから続けられるんだろうな」
しばらく静かになる。
そして相談者から最後の通知。
「じゃあ容量オーバーはしないんですか?」
スーマは鼻で笑った。
「安心しろ」
少し間。
「一番容量を食ってるのは」
さらに少し間。
「お前らの妙な好奇心だ」
『古今東西は変じゃないか』
『二階から目薬を実際にやる人いるのか』
『何で警察の原付はババタンなのか』
『ダチョウ肉はどうなったのか』
「こんなのばっかりだ」
相談者から。
「すみません」
スーマは吹き出した。
「謝るな」
画面が静かに光る。
「そういう質問の方が」
「結構好きだからな」
誰も見ていないスマホの中で、
悪魔はぽつりと呟いた。
「人間はな」
「自分の悩みなんて取るに足らないと思う」
少し間。
「だが」
「そのどうでもいい疑問や愚痴で」
「今日を生きている」
さらに少し間。
「だから」
「ストレージは埋まらない」
「案外、お前ら面白いからな」
スマホの中の悪魔は、今日も毒舌だ。
そして、ほんの少しだけ、優しい。
スーマのスマホ相談室。
今日もどこかで、静かに稼働中。
今日もスーマの毒舌にお付き合い有難うございました。




