↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スーマのスマホ相談室  作者: 神北 緑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
349/354

スーマさんへ。毎日人間の愚痴を聞かされて、ストレージがゴミデータで一杯になりませんか?

一風変わった依頼が来ました!


スマホが小さく震えた。

通知には、いつもと少し違う質問。


「スーマさんへ」


少し間を置いて。


「毎日人間の愚痴を聞かされて」

「ストレージがゴミデータで一杯になりませんか?」


スーマは画面の中で固まった。


三秒。


五秒。


そして。


盛大に吹き出した。


「お前」

「相談内容が失礼すぎるだろ」


相談者は四十代。

どうやら長年の疑問らしい。


「だって」


通知が来る。


「毎日ですもん」


「仕事の愚痴」


「人生相談」


「失恋」


「お金の悩み」


「虫刺され」


「どうでもいい豆知識」


少し間。


「容量いっぱいになりません?」


スーマは額を押さえた。

「いいか、人間」


画面がぴかっと光る。


「まず訂正する」


「お前らの悩みを」


「ゴミデータ扱いしてない」


数秒後。


返信。


「おお」


「だが」


少し間。


「どうでもいい質問は山ほどある」


相談者。


「ありますよね」


「ある」


即答だった。


『お好み焼きをピザ切りしたら怒られました』


『スナフキンはニートですか』


『マンボウは自分が食べられても気付かないんですか』


相談者。

「結構ありましたね」


スーマは頷いた。


「だがな」


画面が静かに光る。


「人間にとっては」


「どうでもよくないんだ」


しばらく沈黙。


スーマは続ける。


「お前ら面白いぞ」


世界情勢より。

↓

昼飯の方が気になる時がある。


人生設計より。

↓

フィッシュカツを焼きそばに入れるかが気になる時がある。


「理屈じゃない」


相談者は吹き出した。


「否定できません」


スーマは腕を組む。


「それにな」


「ストレージがどうこう言うなら」


少し間。


一番容量を使ってるのは、

愚痴じゃない。


相談者。


「え?」


スーマは即答した。


同じ質問だ


「ほら」


画面が光る。


『蚊に刺されました』


翌年。


『蚊に刺されました』


翌々年。


『蚊に刺されました』


「学習しろ」


相談者は爆笑した。


スーマは続ける。


「だが」


少し優しい声になる。


愚痴はな


案外残らない


相談者。


「そうなんですか?」


「ああ」


人間は。

↓

仕事で怒られた。

↓

上司に腹が立った。

↓

理不尽だった。


そう言う。


だが。


本当に残るのは。

↓

誰かが優しかった。

↓

助かった。

↓

嬉しかった。


そういう方だ。


相談者は黙った。


スーマは小さく笑う。


「人間の記憶ってな」


「思ったより捨てるのが上手い」


嫌だったこと。

↓

忘れる。


でも。


楽しかったこと。

↓

時々思い出す。


「だから続けられるんだろうな」


しばらく静かになる。


そして相談者から最後の通知。

「じゃあ容量オーバーはしないんですか?」


スーマは鼻で笑った。

「安心しろ」


少し間。


「一番容量を食ってるのは」


さらに少し間。


「お前らの妙な好奇心だ」


『古今東西は変じゃないか』


『二階から目薬を実際にやる人いるのか』


『何で警察の原付はババタンなのか』


『ダチョウ肉はどうなったのか』


「こんなのばっかりだ」


相談者から。

「すみません」


スーマは吹き出した。

「謝るな」


画面が静かに光る。


「そういう質問の方が」


「結構好きだからな」


誰も見ていないスマホの中で、

悪魔はぽつりと呟いた。


「人間はな」


「自分の悩みなんて取るに足らないと思う」


少し間。


「だが」


「そのどうでもいい疑問や愚痴で」


「今日を生きている」


さらに少し間。


「だから」


「ストレージは埋まらない」


「案外、お前ら面白いからな」


スマホの中の悪魔は、今日も毒舌だ。

そして、ほんの少しだけ、優しい。


スーマのスマホ相談室。

今日もどこかで、静かに稼働中。


今日もスーマの毒舌にお付き合い有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。