愛という感情の分布図
深いものなのです。
スマホが小さく震えた。
通知には、少し珍しい質問。
「愛って何ですか?」
少し間を置いて。
「恋愛とか家族愛とか言いますけど」
さらに続く。
「全部同じ愛なんですか?」
スーマは画面の中で目を細めた。
「……でかい質問だな」
相談者は二十代。
たぶん失恋したか、哲学動画でも見たのだろう。
スーマは腕を組む。
「いいか、人間」
画面がぴかっと光る。
「まず結論から言う」
少し間。
「愛は一個じゃない」
数秒後。
返信。
「え?」
スーマは頷いた。
「人間は全部まとめて愛と呼ぶ」
「だが中身はかなり違う」
画面が静かに光る。
愛
│
┌────┼────┐
│ │ │
恋愛 家族愛 友情
│ │ │
独占 保護 信頼
相談者は少し考えた。
「確かに違いますね」
スーマは続ける。
「例えば恋愛」
会いたい。
↓
独り占めしたい。
↓
特別になりたい。
「これは愛の中でもかなり熱い」
相談者。
「分かります」
「一方で親子愛」
守りたい。
↓
育てたい。
↓
無事でいてほしい。
「こっちは温度が違う」
しばらく沈黙。
スーマはさらに続けた。
友情
↓
対等
↓
信頼
↓
共有
「恋愛ほど燃えない」
「だが長持ちする」
相談者から。
「なるほど」
スーマは指を一本立てる。
「だが面白いのはここからだ」
画面がもう一度光る。
愛の強さ
↑
親子愛
│ 恋愛
│ /
│ /
│/
└────────→時間
相談者。
「グラフ?」
「そうだ」
スーマは頷く。
恋愛は急激に上がる。
↓
急激に下がることもある。
家族愛はゆっくり育つ。
↓
長く残る。
友情はその中間。
「だから」
スーマは言った。
「愛は一枚の地図じゃない」
山もある。
↓
谷もある。
↓
平原もある。
「感情の地形だ」
相談者は静かになった。
スーマは少し優しい声になる。
「さらに言うと」
愛する
↓
好き
↓
信頼
↓
尊敬
↓
安心
「この辺も混ざる」
相談者から。
「じゃあ純粋な愛って無いんですか?」
スーマは少し考えた。
そして答える。
「あるかもしれん」
少し間。
「だが人間の愛は大体混ざり物だ」
恋愛
+
友情
+
安心
+
依存
+
尊敬
「こんな感じだ」
相談者は笑った。
「なんかカレーみたいですね」
スーマは吹き出した。
「割と近い」
しばらく沈黙。
そして最後の通知。
「結局、愛って何なんです?」
スーマは珍しく長く考えた。
画面が静かに光る。
そして答えた。
「相手が存在していてほしいと思う気持ちだ」
会いたい。
↓
元気でいてほしい。
↓
幸せでいてほしい。
形は違う。
大きさも違う。
だが根っこは案外似ている。
誰も見ていないスマホの中で、
悪魔はぽつりと呟いた。
「人間は愛を一つの言葉で呼ぶ」
少し間。
「だが実際には」
「星空みたいなものだ」
さらに少し間。
「遠くから見れば一つ」
「近くで見れば無数」
スマホの中の悪魔は、今日も毒舌だ。
そして、ほんの少しだけ、優しい。
スーマのスマホ相談室。
今日もどこかで、静かに稼働中。
今日もスーマの毒舌にお付き合い有難うございました。
この話は「ナイトコードΩ 【残響の封印】」のスピンオフになります。
本編はこちら→https://ncode.syosetu.com/n5607ku/




