ダチョウの肉ってどうなった?
一頃はその話題が何処でも聞けました。
スマホが小さく震えた。
通知には、少し懐かしい疑問。
「そういえば」
少し間を置いて。
「ダチョウの肉ってありましたよね」
さらに続く。
「一時期流行るって聞いたんですが」
「今どうなったんです?」
スーマは画面の中で目を細めた。
「……覚えてたか」
昔、テレビか何かで見た記憶があるらしい。
スーマは腕を組んだ。
「いいか、人間」
画面がぴかっと光る。
「まず結論から言う」
少し間。
「絶滅はしてない」
数秒後。
返信。
「じゃあ今もあるんですか?」
スーマは頷いた。
「ある」
「普通にある」
ダチョウ牧場。
↓
ダチョウ肉。
↓
今も販売。
「ただし」
画面がもう一度光る。
「牛肉みたいな立場にはなれなかった」
相談者は黙った。
スーマは続ける。
「ダチョウ肉が注目された理由はな」
高たんぱく。
↓
低脂肪。
↓
低カロリー。
「健康食品として優秀だった」
相談者から。
「身体には良さそうですね」
「実際良い」
スーマは頷く。
「赤身中心だ」
「見た目は牛肉っぽい」
「味は少しクセがある」
しばらく沈黙。
相談者は続きを待っている。
「でもな」
スーマは少し苦笑した。
「健康に良いだけで大ヒットするなら」
「世の中ブロッコリーだらけだ」
相談者から。
「確かに」
スーマは続ける。
「問題は価格だ」
鶏肉より高い。
↓
豚肉より高い。
↓
牛肉とも競合。
「中途半端に高い」
相談者。
「それは厳しい」
「厳しい」
即答だった。
さらに。
スーパーで見ない。
↓
売ってる場所が少ない。
↓
食べ方が分からない。
「この三重苦だ」
相談者は納得したらしい。
「確かに」
「食べたことないです」
スーマは頷いた。
「人間はな」
「知らない肉に警戒する」
馬肉。
↓
少し知ってる。
鹿肉。
↓
最近聞く。
ダチョウ肉。
↓
どんな味?
「こうなる」
しばらく静かになる。
そして相談者。
「じゃあ失敗したんですか?」
スーマは首を振った。
「そこまでではない」
画面が静かに光る。
「全国区にはなれなかった」
「だが」
「ニッチ市場では生き残った」
レストラン。
↓
通販。
↓
健康志向層。
↓
珍しい肉が好きな人。
「こういう客層がいる」
相談者から。
「なるほど」
スーマは少し笑った。
「昔の予想では」
『ダチョウ肉が未来の肉になる』
なんて話もあった。
だが現実は。
牛肉健在。
↓
豚肉健在。
↓
鶏肉強すぎる。
「だった」
相談者は吹き出した。
「最後の鶏肉強すぎるで全部分かりました」
スーマは頷く。
「安い」
「うまい」
「どこでも買える」
「ライバルとして強すぎる」
夜も更けてきた。
最後の通知が届く。
「じゃあダチョウ肉は消えたんじゃなくて」
「定着しなかっただけなんですね」
スーマは満足そうだった。
「そうだ」
少し間。
「ブームの主役にはなれなかった」
「だが」
「ちゃんと生き残ってる」
誰も見ていないスマホの中で、
悪魔はぽつりと呟いた。
「人間はな」
「流行らなかったものを」
「消えたと思いがちだ」
少し間。
「だが本当は」
「静かに続いている物の方が多い」
スマホの中の悪魔は、今日も毒舌だ。
そして、ほんの少しだけ、優しい。
スーマのスマホ相談室。
今日もどこかで、静かに稼働中。
今日もスーマの毒舌にお付き合い有難うございました。




