警察官の小型バイクを何故ババタンと呼ぶの?
変な呼び名ですよね?
交番の前を通りかかった時。
スマホが小さく震えた。
通知には、かなり地域色の強い疑問。
「警察官が乗ってる小さいバイクありますよね」
少し間を置いて。
「子供の頃からババタンって呼んでたんですが」
さらに続く。
「何でババタンなんです?」
「今思うと意味が分かりません」
スーマは画面の中で吹き出した。
「……関西の人間だな?」
相談者から即レス。
「神戸です」
スーマは深く頷いた。
「やっぱりな」
しばらく沈黙。
スーマは腕を組む。
「いいか、人間」
画面がぴかっと光る。
「まず結論から言う」
少し間。
「実は由来がはっきりしていない」
数秒後。
返信。
「え?」
スーマは頷く。
「そうだ」
「みんな当たり前に使ってるくせに」
「語源は意外と曖昧なんだ」
相談者は黙った。
スーマは続ける。
「そもそもババタンは」
警察官が交番などで使う。
↓
小型バイク。
↓
原付やカブ。
↓
ベンリィ。
「この辺を指す俗称だ」
地域によっては「ごきたん」「ゴキバイ」「トツバイ」「じったん」など呼び名が有る。
相談者から。
「ごきたんは聞いたことあります」
スーマは指を一本立てる。
「で」
「ババタンの由来だ」
説① 関西の「ババ」
「有力なのがこれ」
画面がもう一度光る。
「関西弁でババと言うと」
「う〇こを意味することがある」
警察の小型バイクを「ばばたん」と呼ぶ地域が関西にあり、この「ババ」が関西弁由来ではないかという説。
相談者から。
「ひどくないですか」
「ひどい」
即答だった。
「若者が警察をからかう時代の俗称だからな」
説② 和歌山方言説
スーマは続ける。
「もう一つある」
和歌山。
↓
ババタン
↓
ロータリーミッション車の呼び名
「元々の方言が警察バイクにも流れた説だ」
和歌山では「ババタン」がロータリーミッション車を指す方言として使われていたという説。
相談者。
「へえ」
説③ クワガタ説
スーマは少し笑った。
「さらに変なのがある」
黒いタンク。
↓
クワガタのメスみたい。
↓
ババタン
「という話も昔からある」
古い説として、警察のバイクの黒いタンクがクワガタのメスに似ているため「ババタン」と呼ばれたという話。
相談者から。
「どれなんですか?」
スーマは肩を竦めた。
「それが分からん」
しばらく静かになる。
そしてスーマ。
「面白いだろ」
「言葉ってのはな」
画面が静かに光る。
「由来が消えて」
「呼び名だけ残ることがある」
相談者は少し考え込む。
「じゃあ正式名称は何なんです?」
スーマは吹き出した。
「急に現実へ戻るな」
「警ら用原動機付自転車
または
警ら用小型自動二輪車
これが正式名称だ。」
相談者から。
「長い」
「だから誰も言わない」
スーマは即答した。
夜も更けてきた。
最後の通知が届く。
「結局ババタンの由来は謎なんですね」
スーマは頷いた。
「そうだ」
「だが」
少し笑う。
「由来が曖昧なのに何十年も生き残ってる」
「それも言葉の面白さだ」
誰も見ていないスマホの中で、
悪魔はぽつりと呟いた。
「人間はな」
「言葉を作った理由は忘れる」
少し間。
「だが」
「呼び方だけは子供から子供へ伝わっていく」
さらに少し間。
「だから方言は」
「案外しぶとい」
スマホの中の悪魔は、今日も毒舌だ。
そして、ほんの少しだけ、優しい。
スーマのスマホ相談室。
今日もどこかで、静かに稼働中。
今日もスーマの毒舌にお付き合い有難うございました。
この話は「ナイトコードΩ 【残響の封印】」のスピンオフになります。
本編はこちら→https://ncode.syosetu.com/n5607ku/




