スナフキンはニートじゃないの?
そう取られてもおかしくは無いかも・・・。
スマホが小さく震えた。
通知には、なんとも身も蓋もない質問。
「スナフキンってニートじゃないんですか?」
少し間を置いて。
「働いてる描写ないですよね」
さらに続く。
「釣りして」
「旅して」
「たまに名言言って帰る」
「これ理想のニートでは?」
スーマは画面の中で吹き出した。
「……お前、ムーミンファンに刺されるぞ」
相談者は三十代。
どうやらムーミンを見返していて気付いてしまったらしい。
スーマは腕を組む。
「いいか、人間」
画面がぴかっと光る。
「まず結論から言う」
少し間。
「スナフキンはニートじゃねぇ」
数秒後。
返信。
「え?」
スーマは頷いた。
「お前はニートを誤解してる」
しばらく沈黙。
相談者は続きを待っている。
スーマは続けた。
「ニートってな」
「就学してない」
「働いてない」
「職業訓練もしてない」
という状態を指す言葉だ。
相談者から。
「じゃあ同じじゃ?」
スーマは首を振る。
「違う」
即答だった。
画面がもう一度光る。
「スナフキンは社会から逃げてるわけじゃない」
旅をする。
↓
釣りをする。
↓
演奏する。
↓
野営する。
↓
移動しながら暮らす。
「むしろ生存能力が高い」
相談者は黙った。
言われてみればそうだ。
スーマは続けた。
「お前らが勘違いしてるのはな」
「働いてないように見えることと」
「何もしてないことを同じだと思ってる」
相談者から。
「確かに」
少し間。
スーマは笑った。
「それにな」
「スナフキンは普通に魚を獲る」
「道具を扱う」
「テントを張る」
「演奏もする」
「コミュニケーション能力も高い」
相談者。
「なんか急にスペック高いですね」
「高いぞ」
スーマは鼻で笑った。
「お前」
「一人で森の中で生活しろって言われて」
「何日持つ?」
相談者。
「半日です」
「だろうな」
しばらく静かになる。
そして相談者。
「じゃあ何に近いんです?」
スーマは少し考える。
そして答えた。
「現代なら」
旅人
自由業
放浪者
ノマド
「この辺だな」
相談者から。
「ノマドスナフキン」
「なんか嫌ですね」
スーマは吹き出した。
「俺も嫌だ」
少し間。
そして真面目な声になる。
「そもそもな」
画面が静かに光る。
「スナフキンの価値観は」
物を持たない。
↓
縛られない。
↓
必要以上を求めない。
「ここにある」
相談者は黙った。
スーマは続ける。
「人間はよく言う」
『スナフキンみたいに生きたい』
だが。
朝起きる。
↓
Wi-Fiなし。
↓
エアコンなし。
↓
コンビニなし。
↓
病院も遠い。
「たぶん三日で泣く」
相談者から。
「否定できません」
夜も更けてきた。
最後の通知が届いた。
「つまりスナフキンは」
「ニートじゃなくて自立した放浪者?」
スーマは頷いた。
「そうだ」
「むしろ」
少し間。
「ニートの対極かもしれん」
誰も見ていないスマホの中で、
悪魔はぽつりと呟いた。
「人間はな」
「自由な人間を見ると」
「何もしてないように見える」
少し間。
「だが本当に自由に生きるには」
「案外、実力がいる」
スマホの中の悪魔は、今日も毒舌だ。
そして、ほんの少しだけ、優しい。
スーマのスマホ相談室。
今日もどこかで、静かに稼働中。
今日もスーマの毒舌にお付き合い有難うございました。
この話は「ナイトコードΩ 【残響の封印】」のスピンオフになります。
本編はこちら→https://ncode.syosetu.com/n5607ku/




