紫外線でシミが出来るのは何年後?
あまり神経質にならなくても良いかな?
夏の昼。
スマホが小さく震えた。
通知には、不安になる質問。
「今日、日焼けしました」
少し間を置いて。
「これって将来シミになるんですか?」
さらに続く。
「紫外線でシミが出来るって聞くんですが」
「何年後なんです?」
スーマは画面の中で目を細めた。
「……嫌なことに気付いたな」
相談者は三十代女性。
どうやら日焼け止めを塗り忘れたらしい。
スーマは腕を組んだ。
「いいか、人間」
画面がぴかっと光る。
「まず結論から言う」
少し間。
「何年後とは決まってない」
数秒後。
返信。
「え?」
スーマは頷いた。
「人間が勘違いしてるところだ」
しばらく沈黙。
相談者は続きを待っている。
スーマは続けた。
「お前らはな」
「今日焼けた」
↓
「十年後シミになる」
↓
「因果関係が一本」
そう思ってる。
「違うんですか?」
相談者はすぐ返した。
スーマは首を振る。
「紫外線ダメージってのは」
画面がもう一度光る。
「貯金だ」
一日の日焼け。
↓
少し貯まる。
↓
また日焼け。
↓
さらに貯まる。
「こうやって積み上がる」
相談者。
「つまり累積?」
「そうだ」
即答だった。
少し間。
スーマは指を一本立てた。
「だからな」
「十代の紫外線も」
「二十代の紫外線も」
「三十代の紫外線も」
「全部持ち越しだ」
相談者から。
「嫌なシステムですね」
「俺もそう思う」
しばらく静かになる。
そして相談者。
「じゃあシミっていつ出るんです?」
スーマは少し考えた。
「個人差が大きい」
「だが」
少し間。
「三十代後半から四十代で気付き始める人は多い」
相談者は黙った。
察したらしい。
スーマは続ける。
「若い頃は修復能力が強い」
「だから目立たない」
「だが年齢を重ねると」
「隠していたダメージが表面に出てくる」
相談者から通知。
「じゃあ今見えてるシミは」
スーマは即答した。
「昔の自分からの手紙だ」
数秒後。
「嫌な手紙ですね」
「だろ?」
スーマは吹き出した。
しばらくして。
相談者はまた聞く。
「じゃあ一日焼けただけでアウト?」
スーマは首を横に振った。
「そこまで単純じゃねぇ」
海水浴一回。
↓
人生終了。
「そんなゲームバランスなら人類滅んでる」
スーマは肩を竦めた。
「問題は」
画面が静かに光る。
「毎日少しずつ」
「何年も繰り返すことだ」
通勤。
↓
洗濯。
↓
買い物。
↓
車の運転。
「むしろこっち」
相談者から。
「レジャーじゃなくて?」
「日常だ」
即答だった。
夕方。
最後の通知が届く。
「じゃあ今日の日焼けは」
「未来のシミ候補なんですね」
スーマは頷いた。
「候補ではある」
「だが」
少しだけ優しい声になる。
「まだ確定じゃない」
日焼け止め。
↓
帽子。
↓
保湿。
↓
紫外線対策。
「人間はな」
「未来を全部変えられない」
「だが少しは変えられる」
相談者から短い返事。
「明日からちゃんと塗ります」
スーマは鼻で笑った。
「その方がいい」
誰も見ていないスマホの中で、
悪魔はぽつりと呟く。
「シミってのはな」
「昨日出来るんじゃない」
少し間。
「何年もかけて」
「忘れた頃に請求書が届くんだ」
スマホの中の悪魔は、今日も毒舌だ。
そして、ほんの少しだけ、優しい。
スーマのスマホ相談室。
今日もどこかで、静かに稼働中。
今日もスーマの毒舌にお付き合い有難うございました。




