狂犬病はエボラ並み?
たまに耳にするけど実は途ても怖い病です!
深夜零時。
スマホが小さく震えた。
通知には、ちょっと怖い質問。
「狂犬病ってありますよね」
少し間を置いて。
「エボラ出血熱並みにヤバいんですか?」
さらに続く。
「なんとなく名前は知ってるんですが」
「正直エボラの方が怖そうです」
スーマは画面の中で眉をひそめた。
「……そう思うよな」
相談者は三十代。
ニュースではエボラを聞くが、狂犬病はあまり聞かない。
だから危険度の感覚が逆転しているらしい。
スーマは腕を組んだ。
「いいか、人間」
画面がぴかっと光る。
「まず結論から言う」
少し間。
「狂犬病はエボラ並みか?」
さらに間を置く。
「場合によっては、それ以上に怖い」
数秒後。
返信。
「え?」
短い。
だが驚きが伝わってくる。
スーマは続けた。
「エボラは確かに危険だ」
「致死率も高い」
「流行すると大騒ぎになる」
WHOによると、エボラの平均致死率は約50%で、流行によっては25%から90%まで変動する。
相談者は頷いているようだった。
「やっぱり高いですね」
「高い」
スーマは即答した。
「十分に怖い病気だ」
だが。
スーマは指を一本立てる。
「狂犬病は別方向で化け物だ」
画面がもう一度光る。
「狂犬病はな」
「症状が出た後なら」
少し間。
「ほぼ100%死ぬ」
WHOによると、狂犬病は中枢神経に到達して症状が現れると、ほぼ100%致命的である。
相談者から。
「100%?」
スーマは静かに頷いた。
「そうだ」
「医者が諦めるレベルだ」
部屋が少し静かになった気がした。
相談者も言葉を失ったらしい。
スーマは続ける。
「ただし」
「ここが重要だ」
画面がぴかっと光る。
「狂犬病は予防できる」
犬に噛まれる。
↓
すぐ洗う。
↓
病院へ行く。
↓
ワクチンを打つ。
↓
助かる。
「だから症状が出る前なら勝負できる」
狂犬病は、動物による咬傷などの後に速やかに暴露後予防(PEP)を受ければ発症を防げる。
相談者から。
「じゃあエボラよりマシ?」
スーマは首を横に振った。
「そんな単純じゃねぇ」
エボラ。
↓
人から人へ広がる。
↓
大流行の危険。
狂犬病。
↓
広がり方は限定的。
↓
だが発症したら絶望的。
「怖さの種類が違う」
スーマは言った。
しばらく沈黙。
相談者はまた聞いた。
「じゃあ、どっちが危険なんです?」
スーマは少し考えた。
そして答える。
「個人にとってなら狂犬病」
「社会全体にとってならエボラ」
相談者から。
「なるほど」
スーマは続ける。
「エボラは大規模流行が怖い」
「狂犬病は」
少し間。
「一人一人にとっての絶望が怖い」
夜も更けてきた。
最後の通知が届く。
「正直」
「狂犬病の方が怖くなりました」
スーマは鼻で笑った。
「正常な反応だ」
そして少しだけ真面目な声になる。
「だから海外で犬や野生動物には近付くな」
「可愛い顔しててもだ」
世界の狂犬病による死亡の約99%は犬からの感染が原因とされている。
誰も見ていないスマホの中で、
悪魔は小さく呟いた。
「人間は派手な病気を恐れる」
少し間。
「だが本当に怖いのは」
「静かに近付いてくる病気だったりする」
スマホの中の悪魔は、今日も毒舌だ。
そして、ほんの少しだけ、優しい。
スーマのスマホ相談室。
今日もどこかで、静かに稼働中。
今日もスーマの毒舌にお付き合い有難うございました。




