昭和の忖度は令和ではハラスメント?
変換出来ていないオジサンは沢山います。
夜十時。
スマホが小さく震えた。
通知には、少し考えさせられる一文。
「昭和なら当たり前だったことって」
少し間を置いて。
「今ならハラスメント扱いですよね?」
さらに続く。
「もしかして」
「昭和の忖度って、令和ではハラスメントなんですか?」
スーマは画面の中で目を細めた。
「……嫌なところ突いてくるな」
相談者は四十代。
会社で若手と話していて、世代差を感じたらしい。
スーマは腕を組んだ。
「いいか、人間」
画面がぴかっと光る。
「最初に言っとく」
少し間。
「昭和の人間が全員悪人だったわけじゃねぇ」
数秒後。
返信。
「そうですよね」
「当然だ」
スーマは頷く。
「当時は当時の常識があった」
しばらく沈黙。
スーマは指を一本立てた。
「だがな」
「令和の基準で見ると」
「アウトになる行為は確実にある」
相談者から。
「例えば?」
スーマは淡々と答えた。
上司の酒には必ず付き合え
休日も空気を読んで出勤しろ
恋人いるの?
結婚まだ?
子供作らないの?
「昔は普通に聞かれていた」
「今だと警戒される」
相談者は苦笑した。
「確かに」
スーマは続ける。
「ここで重要なのは」
画面がもう一度光る。
「内容よりも」
「選択権なんだ」
相談者は首を傾げる。
「選択権?」
「そうだ」
昭和。
↓
断りにくい。
↓
空気を読む。
↓
従う。
令和。
↓
断る自由。
↓
個人の意思。
↓
尊重。
「価値観の中心が変わった」
スーマは言った。
しばらくして。
相談者から通知。
「じゃあ忖度って悪なんですか?」
スーマは即答しなかった。
少し考える。
そして答える。
「違う」
忖度。
↓
相手を思いやる。
これは今でもある。
相談者。
「え?」
スーマは頷く。
「会議で発言しやすいよう配慮する」
「相手の立場を考える」
「先回りして準備する」
「これも広い意味では忖度だ」
少し間。
そして。
「問題はな」
画面が静かに光る。
「断れない忖度だ」
上司の顔色。
↓
評価への恐怖。
↓
圧力。
↓
半強制。
「この辺になると」
「ハラスメントに近付く」
相談者はしばらく黙った。
そして返事。
「つまり」
「忖度そのものじゃなくて」
「強制が問題?」
スーマは満足そうに笑った。
「察しがいいな」
夜も更けてきた。
最後の通知が届いた。
「昭和と令和で」
「正義が変わったわけじゃないんですね」
スーマは首を横に振った。
「違う」
少し間。
「人との距離感が変わったんだ」
誰も見ていないスマホの中で、
悪魔は小さく呟く。
「昔の人は」
「我慢を美徳にした」
少し間。
「今の人は」
「境界線を大事にする」
さらに少し間。
「どっちにも良い所と悪い所がある」
スマホの中の悪魔は、今日も毒舌だ。
そして、ほんの少しだけ、優しい。
スーマのスマホ相談室。
今日もどこかで、静かに稼働中。
今日もスーマの毒舌にお付き合い有難うございました。




