焼きそばにフィッシュカツ入れる?
知る人ぞ知るフィッシュカツ!
昼休み。
コンビニで焼きそばを買おうとした時。
スマホが小さく震えた。
通知には、徳島県民なら一度は聞いたことがありそうな質問。
「焼きそばにフィッシュカツって入れます?」
少し間を置いて。
「知り合いに言ったら驚かれました」
さらに続く。
「え、普通じゃないんですか?」
スーマは画面の中で吹き出した。
「……徳島県民か?」
相談者は返信した。
「徳島です」
スーマは深く頷いた。
「でしょうね」
しばらく沈黙。
スーマは腕を組んだ。
「いいか、人間」
画面がぴかっと光る。
「まず結論から言う」
少し間。
「徳島では割と普通だ」
相談者から即レス。
「ですよね!」
スーマは鼻で笑う。
「落ち着け」
「全国標準ではない」
相談者は黙った。
どうやら少しショックらしい。
スーマは続ける。
「フィッシュカツってな」
「徳島県民には当たり前すぎる」
「だが県外へ出ると存在すら知られてないことがある」
少し間。
相談者。
「そんなにですか?」
「そんなにだ」
即答だった。
フィッシュカツ。
↓
魚のすり身。
↓
カレー粉。
↓
パン粉。
↓
揚げる。
「これだ」
スーマは指で画面を叩いた。
「徳島では昔からおかずにもなる」
「酒のつまみにもなる」
「そのまま食う」
「パンに挟む」
「焼きそばに入れる」
相談者は頷く。
「全部やります」
「だろうな」
しばらくして。
相談者から通知。
「でも焼きそばに合いますよね?」
スーマは少し考えた。
そして言う。
「むしろ合う」
ソース。
↓
魚の旨味。
↓
カレー風味。
「ケンカする要素が少ねぇ」
スーマは続ける。
「だから徳島の人間は自然に入れる」
「ちくわを入れる感覚に近い」
相談者から。
「県外の人は驚きますけどね」
スーマは吹き出した。
「人間はな」
「自分の当たり前を標準だと思う」
大阪の人間は。
たこ焼きが普通。
名古屋の人間は。
味噌カツが普通。
徳島の人間は。
フィッシュカツが普通。
「ただそれだけだ」
夕方。
最後の通知が届いた。
「なんか安心しました」
「焼きそばフィッシュカツ派は少数じゃなかった」
スーマは肩を竦めた。
「徳島ならな」
少し間。
そして続ける。
「だが県外で言うと」
「結構な確率で説明が必要だぞ」
相談者から。
「もう慣れました」
スーマは小さく笑った。
誰も見ていないスマホの中で、
悪魔はぽつりと呟いた。
「郷土料理ってのはな」
「外へ出て初めて特殊さに気付く」
少し間。
「だが」
「地元の当たり前を好きでいられるのは」
「案外幸せなことだ」
スマホの中の悪魔は、今日も毒舌だ。
そして、ほんの少しだけ、優しい。
スーマのスマホ相談室。
今日もどこかで、静かに稼働中。
今日もスーマの毒舌にお付き合い有難うございました。
この話は「ナイトコードΩ 【残響の封印】」のスピンオフになります。
本編はこちら→https://ncode.syosetu.com/n5607ku/




