大阪の人に、お好み焼きをピザ切りしたら怒られた
関西人にはコダワリが有るのです。
スマホが小さく震えた。
通知には、少し納得のいかない話が書かれていた。
「今日、大阪出身の人とお好み焼きを食べたんです」
少し間を置いて。
「ピザみたいに切り分けたら怒られました」
さらに続く。
「別に食べやすいじゃないですか」
「何がダメなんです?」
スーマは画面の中で天井を見上げた。
「……ああ」
「文化衝突だな」
相談者は三十代男性。
どうやら悪気は一切なかったらしい。
スーマは腕を組む。
「いいか、人間」
画面がぴかっと光る。
「まず最初に言っとく」
「法律違反ではない」
数秒後。
返信。
「ですよね!」
「当然だ」
スーマは頷く。
「警察は来ない」
「通報もされない」
「安心しろ」
相談者は少し安心したらしい。
だが続きが来る。
「じゃあなんで怒るんです?」
スーマは指を一本立てた。
「たぶんな」
「怒ったんじゃない」
少し間。
「反射的にツッコんだ」
相談者は黙った。
スーマは続ける。
「大阪のお好み焼きってな」
「ピザとは別物なんだ」
お好み焼き。
↓
四角く切る。
↓
ヘラで食べる。
これが長年の作法。
「だから」
スーマは肩を竦めた。
「大阪の人間からすると」
画面がもう一度光る。
「おにぎりをスプーンで食べる」
くらいの違和感がある」
相談者から。
「そこまで?」
「人による」
即答だった。
「気にしない奴もいる」
「だが気になる奴は気になる」
少し間。
相談者は聞いた。
「でも味は同じですよね?」
スーマは吹き出した。
「その通りだ」
「味は一切変わらん」
「完全に気分の問題だ」
相談者は笑った。
スーマも少し笑う。
「人間の食文化なんてそんなもんだ」
寿司を手で食うか。
箸で食うか。
うどんを音を立てて食うか。
食わないか。
お好み焼きを四角く切るか。
ピザ切りするか。
「全部」
スーマは言った。
「食べ方の流儀だ」
しばらく沈黙。
そして相談者。
「じゃあ大阪ではピザ切りしないんですか?」
スーマは少し考えた。
「店による」
「家による」
「普通にやる人間もいる」
「だが」
少し間。
「お好み焼きは四角」
そう思ってる人間は確実にいる。
夜も更けてきた。
最後の通知が届いた。
「今度また切ったら怒られますかね」
スーマは鼻で笑った。
「先に言え」
「何をです?」
「ピザ切りでいいですか?」
だ。
相談者は吹き出した。
「それだけですか」
「それだけだ」
誰も見ていないスマホの中で、
悪魔は小さく呟いた。
「人間はな」
「味の違いより」
「思い出の食べ方を守りたがる」
少し間。
「だから食文化の喧嘩は」
「案外、本気になる」
スマホの中の悪魔は、今日も毒舌だ。
そして、ほんの少しだけ、優しい。
スーマのスマホ相談室。
今日もどこかで、静かに稼働中。
今日もスーマの毒舌にお付き合い有難うございました。




