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スーマのスマホ相談室  作者: 神北 緑


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320/354

年配の人が髪を紫に染めるのは何故?

聞くに聞けない微妙な疑問。


昼下がり。

美容院の前を通りかかった時。

スマホが小さく震えた。

通知には、こんな疑問。

「昔から気になってるんですが」

少し間を置いて。

「おばあちゃん世代って、なんで髪を紫に染めるんですか?」

さらに続く。

「みんな示し合わせたみたいに紫ですよね」


スーマは画面の中で吹き出した。

「……お前、それ本人に聞く勇気ないだろ」

相談者は四十代女性。

子供の頃から抱えていた疑問らしい。


スーマは肩を竦めた。

「いいか、人間」

画面がぴかっと光る。

「最初に言っとく」

「本人たちは“紫にしよう”と思ってるわけじゃない」

数秒後。


返信。

「え?」


スーマは頷いた。

「だいたいここが誤解の始まりだ」

しばらく間を置く。

「年を取ると髪は白くなる」

「これは知ってるな?」

「はい」

「で、白髪を染める」

「ここまでは普通だ」

相談者も頷いている気配がする。

だがスーマは指を一本立てた。

「問題はその先だ」


『白髪染めの黄色味』


「白髪ってな」

「真っ白に見えても、染めると黄ばんで見えることがある」

「特に昔はそうだった」


相談者から返事。

「黄色っぽいのを消すためですか?」


スーマは満足そうに笑った。

「察しがいいな」

画面がもう一度光る。

「紫は黄色の反対側にある色だ」

「だから」

「黄色味を打ち消して」

「上品な銀髪や白髪に見せやすい」

相談者はしばらく黙った。

そして。


「つまり結果的に紫になる?」

「そういうことだ」

スーマは即答した。

「本人の理想は」

「紫髪」

ではなく。

「きれいな白髪」

だったりする。

少し間。


相談者は新しい疑問を送った。

「でも昔の人の方が紫率高かった気がします」


スーマは鼻で笑う。

「それも理由がある」


『昔のカラー剤』


「今と違って」

「昔はカラーバリエーションが少なかった」

「白髪をきれいに見せる方法も限られてた」

だから結果的に。

紫。

青紫。

薄いラベンダー。

こういう色が残りやすかった。


相談者から。

「なるほど」

「わざと目立たせてたわけじゃないんですね」


「人によるけどな」

スーマは笑った。

「中には気に入ってる人もいる」

「だが大半は」

少し言葉を選ぶ。

「若い人が思ってるほど、紫を目指してるわけじゃねぇ」

夕方。


最後の通知が届いた。

「長年の謎が解けました」

「紫じゃなくて白髪をきれいに見せるためなんですね」


スーマは頷いた。

「そうだ」

そして小さく付け加える。

「お前だってその年齢になったら分かる」

「髪の悩みは増えるぞ」


相談者から。

「嫌なこと言いますね」


スーマは吹き出した。

「悪魔だからな」

誰も見ていないスマホの中で、

悪魔はぽつりと呟く。

「若い頃は髪を増やしたがる」

「年を取ると色で悩む」

「人間は忙しい生き物だな」


スマホの中の悪魔は、今日も毒舌だ。

そして、ほんの少しだけ、優しい。

スーマのスマホ相談室。

今日もどこかで、静かに稼働中。


今日もスーマの毒舌にお付き合い有難うございました。


この話は「ナイトコードΩ 【残響の封印】」のスピンオフになります。

本編はこちら→https://ncode.syosetu.com/n5607ku/


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