38.スキルアップ
後日、Project StormとRe:ACTORの双方から、【不思議の国のアリス】と【ROSELIA】のコラボが発表された。
それに伴いNEO内外では派手に騒がれることに。
どちらの方が強い、可愛いと、話題は尽きない。
【不思議の国のアリス】はシズクを、【ROSELIA】はメルティアをそれぞれ代表に立て、運営を交えた打ち合わせ及びバトルの細やかなルールを決定する運びとなった。
「バトルのルールはリスポーン有りの総当たりチームデスマッチ。プレイヤー一人を一点に数え、互いに撃破し、先に十点を先取した方の勝ちということになりました」
「十点だと、一人二、三回やられたら負けちゃうんだね」
「やられねーし負けねーよ」
「心愛さんの言うとおりですが、まだルールはあります。まず、各ギルドのリーダーがやられた時点で、それまでの点数差に関わらずバトルは決着し、そのギルドは敗北となります。そしてもう一つ……私たちと【ROSELIA】とではレベルの差がありすぎるということで、レベルの調整が入ります」
「はぁ?!」
雫の言葉に声を荒げたのは心愛だ。
「参加するプレイヤーは、バトルの間だけレベルを50とし、ステータスも本人の育成値を元に設定されるそうです」
「意味わからん! 何そのガン萎えクソルール! ウチらべつにそんなことしなくてもいいんだけど!」
「私たちはそうでも、見ている方にとってはそうはいかないんです。レベル差があるだけで、やっぱりあのレベル差じゃ……レベルが違いすぎて……と、否定的な意見が飛び交うんです」
「それウチらが万が一にも、いや万が一もないけど負けたらの話じゃん! ウチらが勝ったら世間の声とかぶっ飛ばせるって! 【セイレーンの瞳】とか【十天】とやったときも完封出来てたし!」
「運営の指示です。覆りません」
心愛は不機嫌そうにソファーに寝転んだ。
「雫ちゃん、フィールドは?」
「当日ルーレットで決めるそうです。なので皆さんに作戦を伝えるのはギリギリになるかと」
「作戦って、もしかして雫さん、全てのフィールドを把握しているんですか?」
「当然です」
言い切る雫に、唯華は唖然とした。
一口にバトル専用フィールドと言ってもその数は百を優に超えるのだから。
「決まったものは仕方ありません。私たちはその上で勝ちに行くまでです。ギリギリまで策を練り、力を蓄えましょう」
アリスたちは、おー!と拳を突き上げた。
――――――――
バトルを一週間後に控え、アリスたちのやることは、スキル構築と武器の取得、そしてプレイヤースキルを主とした個人技の底上げに絞られることになった。
皆が各々バトルに向けての意気込みを高める中。
「うーん」
アリスはうーん……と唸っていた。
「どうやったらホロウさんに勝てるかな」
レベル差が無くなるということは、スキルと武器の性能の差が如実に現れるということだ。
プレイヤースキルで自分が劣っているとは思わずとも、アリスにはホロウに勝てるという明確なビジョンが思い浮かべずにいた。
「超広範囲を凍らせる魔法……あれは速さじゃどうにもならないよね……」
アリスはホロウのバトル映像を何度も見て反芻した。
最大範囲は半径五百メートル。
魔法発動から自身を中心に徐々に凍結が広がるのでなく、範囲内を一瞬で凍らせている。
これは速さではどうしようもない。
ましてやアリスの本分は接近戦だ。
至近距離で魔法を発動されればひとたまりもない。
「【黒雷姫】でも無理かな……」
一応と、外に出て試してみる。
「モード、【黒雷姫】!!」
黒雷を迸らせ爆発したかのように地面を蹴る。
速いことはもちろん速い。
目の前で相対すれば瞬間移動に見間違うだろう。
しかし、実際はあくまで自身のAGIを50%増加させる高速移動。
ホロウの魔法から逃れられるほどではない。
「レベルが一律50になるから、本番だともっと速いんだろうけど……それでも不安だなぁ。他に何か……」
ふと空を見上げたアリスは、目をパチクリさせた。
「……豚、さん?」
豚が空を飛んでいる。
それも金色に輝いた。
「モンスター、だよね……?」
じっと見つめていると、金色の豚はアリスを見やるなり、急降下して体当たりを仕掛けてきた。
「ブモオオオオ!!」
「わあああああ?!」
小高い山のような豚のモンスター……金色豚ダイナミックホグは、その巨体で地面を揺らした。




